刊行によせて
当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、日本財団から競艇交付金による助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
本書は、社団法人日本舶用工業会及び日本貿易振興機構が共同で運営しているジェトロ・上海・センター舶用機械部のご協力を得て実施した「中国主要造船企業の概要と事業展開に関する調査」をとりまとめたものです。
関係各位に有効にご活用いただければ幸いです
2004年2月
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団
はじめに
近年、急速に発展している中国造船業は、受注シェアで世界の1割を占めるようになっており、日本の舶用工業メーカーにとっても無視できない市場になりつつあります。
このような状況の中で、中国の主要造船企業を知ることは、今後、我が国舶用メーカーが経営戦略を立てて行く上で非常に重要です。
そこで、今回、日本貿易振興会上海センターに舶用機械部が設立され3年目を迎えたのを機会に、中国の主要造船企業について概要をまとめました。
対象とした造船企業は、過去2年に受注、竣工、手持工事量、生産高、輸出額で中国の上位10位に入ったことのある企業を中心に江蘇省の主要造船企業、韓国関係企業とし、合計で33社を調べております。
本報告書が皆様の中国理解の一助となることを期待しております。
なお、本報告書の内容は、上海市政府付属上海科学技術情報研究所のヒヤリング等調査及び閲覧されている公的資料に基づいており、特に説明のない場合、統計数字等は2001年12月31日現在のものです。
ジェトロ・上海・センター
舶用機械部 秋田・劉
1. 滬東中華造船(集団)有限公司
(Hudong-Zhonghua Shipbuilding(Group)Co.,Ltd.)
所在地:上海市浦東大道2851号
Address: No.2851 pudong dadao Shanghai China
郵便番号:200120
Tel: 021-5871-3222
Fax: 021-5871-2603
E-mail: bmd@hz-shipgroup.com
資本形態:大型有限責任公司(国有単独資本)
創立:2001年
業務内容:新造船、低速ディーゼルエンジン、大型鉄鋼構造物等。
会社概要:上海黄浦江東岸の浦東新区にある中国船舶工業総公司傘下の綜合造船企業集団。
法人代表:顧宝龍
董事長:顧宝龍
総経理:馬国棟
従業員数:14,000人
敷地面積:135万m2、海岸線2000m
施設概要
スリップウエイ数:4
スリップウエイサイズ(最大船型、クレーン能力):
250m×40m(10万DWT)
223m×30m(7万DWT) *共用150t×2、100t×1
180m×30m(3万DWT)
145m×22m(1万DWT) *共用120t×2、80t×2
ドック数:2
ドックサイズ(最大船型、クレーン能力):
360m×92m×12m(15万DWT、600t×2、40t×4)
艤装岸壁 (クレーン能力):300m(50t×1、20T×1)、150m(40t×1、20T×1)
実績(船舶部門)
|
2000年 |
2001年 |
2002年 |
受注(万DWT/隻) |
95/23 |
67/-(2位) |
66.5/-(5位) |
竣工(万DWT/隻) |
71/18 |
100/-(1位) |
32.2/-(5位) |
手持(万DWT/隻) |
154/31 |
113/-(2位) |
148.3/-(4位) |
生産額(億元) |
33.53 |
41.24(1位) |
32.5(1位) |
輸出額(億元) |
25.8 |
27.4(1位) |
23.7(1位) |
|
注)2000年は滬東造船廠と中華造船廠の合計。
財務(2001年)
登録資本金:5億元(約77億円)
売上高:40.7億元(約624億円)
当期純利益:5,788万元(約8.9億円)
固定資産:17.6億元(約270億円)
売上総利益:3.5億元(約54億円)
備考
●滬東造船集団と中華造船廠が合併してできた企業。
1.1 企業概況
1.1.1 沿革
1926年 中華造船廠の前身である私営造船所「大中華機器造船廠」が創立。
1928年 「滬東造船廠」創立。
1952年 「滬東造船廠」を国有企業として接収。
1953年 「大中華機器造船廠」を国有企業として接収、社名を「中華造船廠」に変更。
2001年3月 「滬東造船集団」と「中華造船廠」が合併、「滬東中華造船集団」創立。資本金は50,781万元、法人代表は「顧宝龍」。
2001年12月 中海集団総公司から4,100TEUのコンテナ船4+1隻を受注。
2001年12月 経営期限を無期限とし資本形態を国有企業から有限責任公司(国有独立資本)に変更。
2001年11月 「滬東重機股 有限公司」と《資産置換協議》と《設備リース協議》を締結。
2002年まで CCS、DNV、ABS及びLRからISO9001認証を取得。
2002年1月 国家工商総局の「契約を重視し信用を守る企業」に選ばれる。
2002年2月 600トンの門型クレーン竣工。
2002年6月 中国初の「環境保全タンカー」を開発。
2002年8月 中国国内初のLNG船を落札。
2002年10月 中国最大の5,668TEUコンテナ船“新浦東号”が進水。
1.1.2 経営者及びその経歴
表1-1: 董事長の経歴
名前 |
顧宝龍 |
役職 |
董事長 |
性別 |
男性 |
生年月日 |
1946年 |
学歴 |
大卒 |
職歴 |
期間 |
勤務先 |
役職 |
|
1968年〜2001年 |
滬東造船集団 |
管理職/党委書記 |
|
2001年〜現在 |
滬東中華造船(集団)有限公司 |
董事長 |
|
表1-2: その他主要責任者の名前及び職務
名前 |
役職 |
馬国棟 |
総経理 |
王衡元 |
副総経理 |
李 平 |
党委副書記 |
周振柏 |
上海公司総経理 |
陳建良 |
総経理助理、総経理事務所主任、人事部部長 |
|
出所:上海科学技術情報研究所市場調査研究部
1.1.3 従業員構成
図1-1: 従業員構成図(2001年12月31日現在)
従業員総人数は14,000人で、そのうち大学以上の学歴をもつ従業員は2,000人。
技術者数は2,000人で、従業員総人数の14%。
管理職の従業員は2,000人で、従業員総人数の14%。
1.1.4 会社組織
図1-2: 会社組織図
滬東中華造船グループの造船基地は上海市の浦東、浦南、複興島の三地域にあり、第一、第二、第三造船事業部及び愛徳華造船有限公司(Edward造船、外資合弁企業)からなる。船舶の修繕地域は崇明島(崇明県大同鎮)、ディーゼル・エンジンの生産地域は浦東造船基地の西側に、鉄鋼構造物の建造基地は複興島及び浦東孫橋鎮にある。
1.1.5 関連企業
表1-3: 主要関連企業の名称及び会社概要
関係 |
関連企業 |
会社概要 |
親会社 |
中国船舶工業集団公司(CSSC) |
国務院の承認により設立された大型国有造船企業集団 国家重点企業として中央政府が管理。(「南方集団」とも呼ばれる) |
子会社 |
滬東重機股有限公司 |
上海滬東中華造船(集団)と上海船廠の共同出資企業株式上場企業。中国最大の中・低速舶用ディーゼルエンジンの生産基地。上海滬東中華造船(集団)の出資率は58.35%。1998年に上海市新高度技術企業に認定。 |
子会社 |
上海東鼎鉄鋼構造物有限公司 |
大型鉄鋼構造物の設計・据付工事を行っている。 |
上海滬東造船バルブ有限公司 |
舶用バルブと舶用ディーゼルエンジンバルブを専門に生産。40年以上の歴史。 |
上海愛徳華造船有限公司 |
ドイツHanSa船舶工程有限公司と共同出資で設立した造船所。滬東中華造船(集団)の出資率は55%。 |
上海滬東船舶労務工程公司 |
人材・労働力の海外派遣・管理等。 |
中国船舶工業総公司上海設備保守センター |
全額出資の保守センターであり、船舶の修繕業務を行っている。 |
上海滬東造船ポンプ廠 |
浦東新区楊園鎮広園工業公司と共同出資で設立した企業で、主に各種大型船舶主機のインジェクタ、ジェトポンプ等の生産・修理を行っている。 |
上海東辰船舶工程有限公司 |
船舶及び大型プロジェクトの建設工事を請負。 |
上海川沙滬東石油加工廠 |
ディーゼルオイルの生産。 |
上海市滬東鍛造廠 |
鍛造物の製造、大型鋼材の切断、溶接。 |
上海滬東一三造船舶設計公司 |
船舶設計業務。三井造船との合弁。 |
上海華潤大東船務工程有限公司 |
1995年11月に華潤物流、上海滬東造船廠と共同出資で開設。主に国内外の船舶修繕業務を取扱。 |
中華造船廠修船分廠 |
全額出資の船舶の修繕会社。 |
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出所:上海科学技術情報研究所市場調査研究部
1.1.6 政府との関係
上海市政府との関係は緊密である。上海市政府は以前から造船業の発展を重視しているので、滬東中華造船(集団)有限公司を上海市の重要な造船所として、国の補助金等の優遇政策を与えている。
国家主席江沢民氏は滬東中華造船(集団)有限公司に記念の題辞を書き記して、国家政府の重視を表している。
設備調達では独立して業務を行っており、親会社である中国船舶工業集団公司の指導はあるが、国及び地元政府の影響はない。
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