刊行によせて
当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、日本財団から競艇交付金による助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
本書は、社団法人日本舶用工業会及び日本貿易振興会が共同で運営しているJETRO・上海・センター舶用機械部のご協力を得て実施した「中国主要海運企業の概要と事業展開に関する調査」をとりまとめたものです。
関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
2003年11月
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団
はじめに
近年、急速に発展している中国造船業は、受注シェアで世界の1割を占めるようになっており、日本の舶用工業メーカーにとっても無視できない市場になりつつあります。
しかし、中国市場では、搭載する舶用製品間の調整等全体システムについて、中国の造船所がまだ必ずしも充分な技術力を有しないこと、価格が安い中国製品を採用したい造船所に対し、船主サイドは中国の舶用工業製品の品質・性能に疑問を持っているということが言われています。
そのため、中国では、日本と異なり舶用メーカーの選定に船主がメーカー指定を行う等大きな力を有しており、今後、中国関係の荷動きの増大に伴い中国船隊が大幅に増えていくと予想される中で、中国の主要海運会社についての情報が、日本の舶用メーカーにとって重要となっていくと考えられます。
当部では、これまで中国に関する情報は、造船所・舶用メーカーを中心に収集・分析しており、海運会社については、断片的な情報に留まっていましたが、上海に舶用機械部が設置されて約3年になることから、今回、造船・舶用メーカー以外にも対象を広げ、中国の主要な海運会社に関する情報の収集・調査を行い、本報告書にまとめた次第です。
本報告書が、皆様の中国理解の一助となることを期待しております。
なお、本報告書では、中国の国際海運企業、国内海運企業上位10位(船腹量)の企業(国際海運企業は2001年、国内海運企業は2000年の上位10企業)について各企業毎の概要を掲載しておりますが、その内容は、上海市政府付属上海科学技術情報研究所のヒヤリング調査に基づいており、一部交通部発表の数字等と異なる点があることを予めご了解ください。
JETRO・上海・センター
舶用機械部 秋田・劉
2001年末現在で中国船隊は、21.1万隻(対前年比1.9万隻の減少)、5,449.5万DWT(対前年比321.4万DWTの増加)、旅客定員数107.7万人(対前年比4.5万人の増加)、コンテナスロット数50.6万TEU(対前年比15.4万TEUの増加)となっている。
1,000総トン以上の外航船をみると、2001年現在で国際貿易に従事する中国の船隊は3,700万DWTに達し、世界第4位となっている。中国商船隊の2001年の輸送力をみてみると、中国籍船はほぼ2000年並み、便宜置籍船は前年比4〜5%の増加である。
2001年には、54の海運企業が設立され、10隻、38万DWTの中古船が輸入される一方、77.8万DWT、1,000隻の貨物船、旅客定員3.6万人分、480隻の旅客船が撤退した。
中国政府は、今後の国内海運企業の管理について、船舶の数から質のコントロールに、認可制から登録制に移行したいとしている。
表1.1 2001年7月世界船隊運送力ベスト10(シェア)
国家/地区 |
総計
(%) |
タンカー
(%) |
ばら積み
(%) |
コンテナ
(%) |
雑貨船
(%) |
客船
(%) |
ギリシャ |
19.9 |
20.7 |
25.5 |
6.2 |
9.9 |
11.8 |
日本 |
13.4 |
11.5 |
17.8 |
8.1 |
10.5 |
11.2 |
ノルウェー |
8.6 |
13.4 |
4.3 |
1.0 |
10.3 |
6.4 |
中国 |
5.4 |
2.0 |
8.5 |
5.5 |
8.8 |
4.1 |
アメリカ |
5.4 |
9.2 |
2.2 |
3.9 |
2.2 |
10.2 |
香港 |
5.2 |
5.3 |
6.9 |
2.2 |
2.1 |
0.2 |
ドイツ |
4.7 |
1.6 |
2.0 |
25.8 |
8.2 |
2.6 |
韓国 |
3.5 |
2.3 |
5.3 |
4.0 |
2.1 |
1.1 |
台湾 |
2.7 |
0.9 |
3.4 |
10.2 |
1.3 |
0.1 |
イギリス |
2.6 |
2.8 |
1.8 |
5.3 |
2.0 |
7.9 |
世界船隊総計
(百万DWT) |
740.9 |
317.3 |
269.6 |
67.2 |
82.0 |
4.7 |
|
出所:ISL(中国航運発展報告2001)
2001年末現在で遠洋商船は、2385.7万DWT(対前年比162.5万DWTの増加)、総旅客定員数1.4万人(対前年比0.7万人の減少)となっている。
船腹量は、中遠集団(COSCO)、中海集団(CHINA SHIPPING)、長航集団、中外運集団(SINOTRANS)の上位4社が大手と言える。
表2.1 2001年中国海運企業船腹量ベスト
単位:万トン
NO |
会社名 |
船腹量(全船/中国籍船) |
2001年 |
2000年 |
1(1) |
中国遠洋運輸(集団)総公司(COSCO) |
1,756/682 |
1,706/670 |
2(2) |
中国海運(集団)総公司(CHINA SHIPPING) |
793/630 |
781 |
3(3) |
中国長江航運(集団)総公司 |
350/350 |
304 |
4(4) |
中国対外貿易運輸(集団)総公司(SINOTRANS) |
198/1 |
189 |
5(5) |
河北遠洋運輸股有限公司 |
57/0 |
57.1 |
6(6) |
浙江省海運集団総公司 |
48.6/48.6 |
38.7 |
7(8) |
寧波海運(集団)総公司 |
34/33.3 |
33 |
8(10) |
浙江遠洋運輸有限公司 |
32.2/0 |
25.2 |
9(9) |
福建省輪船総公司 |
30/27 |
32.3/29.8 |
10(7) |
山東航運集団有限公司 |
30/10 |
35.4/21.5 |
|
注)( )は2000年の順位、全船には、便宜置籍船を含む
|
出所:ISL(中国航運発展報告2001)
|
2001年末現在、遠洋コンテナ船は47.9万TEU(対前年比15.54万TEU、47.9%の増加)である。
世界的にみても企業別で中遠集団、中海集団がコンテナ船の部門でそれぞれ世界第7位と14位になっている(2003年年初現在)。
表2.2 運航船隊ランキング(2003年1月1日現在)
順位 |
船社 |
隻数 |
TEU |
1 |
マースクーシーランド |
331 |
826,254 |
2 |
MSC |
199 |
464,236 |
3 |
P&O ネドロイド |
155 |
403,746 |
4 |
エバーグリーン・グループ |
136 |
394,468 |
5 |
韓進海運/セネターラインズ |
87 |
306,925 |
6 |
APL |
75 |
244,341 |
7 |
COSCO |
119 |
239,844 |
8 |
CMA-CGMグループ |
118 |
235,484 |
9 |
日本郵船/東京船舶 |
83 |
206,748 |
10 |
CPシップス |
90 |
189,060 |
11 |
川崎汽船 |
61 |
186,114 |
12 |
商船三井 |
60 |
167,883 |
13 |
ジム・イスラエル |
76 |
162,689 |
14 |
中海集団 |
83 |
152,923 |
15 |
OOCL |
47 |
152,265 |
16 |
ハパックロイド |
39 |
142,467 |
17 |
現代商船 |
34 |
124,047 |
18 |
陽明海運 |
44 |
122,805 |
19 |
CSAVグループ |
49 |
113,534 |
20 |
PILグループ |
87 |
103,213 |
|
2001年末現在で沿岸商船は、918.1万DWT(対前年比65.1万DWTの増加)、総旅客定員数12.7万人(対前年比1.1万人の減少)となっている。
中国国内の海運企業の上位10社では中海集団の船腹量が300万DWTを超え第1位、第2位の長航集団の52.4万DWT、第3位の浙江省海運集団の48.6万DWTとは大きな差がある。
2001年末現在で、沿海用コンテナ船のスロット数は1.8万TEU(対前年比0.23万TEU、11.3%の減少)である。
表3.1 2001年中国沿海海運企業船腹量ベスト10
NO |
会社名 |
船腹量(万トン) |
2001年 |
2000年 |
1(1) |
中海集団(CHINA SHIPPING) |
307 |
599 |
2(2) |
長航集団 |
52.4 |
45 |
3(3) |
浙江省海運集団総公司 |
48.6 |
37.4 |
4(5) |
寧波海運(集団)総公司 |
27.5 |
23 |
5(4) |
福建省輪船総公司 |
27 |
37.4 |
6(8) |
広州海電船務有限公司 |
20.7 |
16.1 |
7(6) |
広東海運股有限公司 |
20.5 |
20.5 |
8(-) |
福建省官頭海運総公司 |
20.3 |
- |
9(7) |
福建省厦門輪船総公司 |
16.5 |
16.5 |
10(9) |
広東順峰船務有限公司 |
16 |
16 |
-(10) |
広州船務企業有限公司 |
- |
10.8 |
|
注)( )は2000年の順位
|
出所:ISL(中国航運発展報告2001)
|
2001年末現在で内航河川用貨物船は、2,145.7万DWT(対前年比93.8万DWTの増加)、総旅客定員数93.6万人(対前年比6.3万人の増加)である。
内航河川用船舶の企業上位10社をみると、長航集団が278.5万DWTと突出しており、第2位の江蘇省港航集団運河公司の11.3万DWT、第3位の重慶市輪船総公司の10.4万DWTと大きな差がある。
2001年末現在で内航河川用コンテナ輸送船のスロット数は0.9万TEU(対前年比0.07万TEU、9.2%の増加)である。
表4.1 2001年中国内航河川企業船腹量ベスト10
NO |
会社名 |
船腹量(万トン) |
2001年 |
2000年 |
1(1) |
長航集団 |
278.5 |
226 |
2(2) |
江蘇省港航集団運河公司 |
11.3 |
13.3 |
3(3) |
重慶市輪船総公司 |
10.4 |
10.4 |
4(6) |
阜南県航運公司 |
10 |
8 |
5(4) |
華中航運(集団)有限公司 |
7.6 |
10.3 |
6(-) |
太和県航運公司 |
7.5 |
- |
7(8) |
民生輪船有限公司 |
6.8 |
6.8 |
8(-) |
建湖県第二航運公司 |
6 |
- |
9(-) |
安徽省鴻運輪船公司 |
6 |
- |
10(9) |
中山市黄圃船務公司 |
5.8 |
5.8 |
-(5) |
淮陰市輪船運輸公司 |
- |
8.9 |
-(7) |
南京振海交通実業公司 |
- |
7.5 |
-(10) |
宣州市輪船運輸総公司 |
- |
5 |
-(10) |
当塗県城関航運公司 |
- |
5 |
|
注)( )は2000年の順位
|
出所:ISL(中国航運発展報告2001)
|
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