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附録16
WTO文書 韓国によるEUへの協議要請
(WT/DS301/1) 仮訳
WTO韓国提出訴状(2003年9月11日)
欧州共同体(欧州連合)−商業用船舶の取引に影響を及ぼしている慣行
韓国提出の協議要請
 以下の2003年9月3日付文書は、駐ジュネーブ韓国代表部から、駐ジュネーブ欧州連合(EC欧州共同体)代表部及びWTO紛争解決機関(DSB)議長に対し、紛争解決合意協定(DSU)第4.4条に基づき回章される。
 
 
 DSU第4条、GATT第23条1(a)項及び1(b)項、SCM協定第5(b)条及び第4条、第7条、第30条に基づき、詳細を以下に詳述する商業用船舶の取引に影響を及ぼしている慣行に関し、韓国政府は欧州連合(EC欧州共同体)及び以下に述べる欧州連合加盟国に対し、ここに協議を要請するものである。
 
第I部 懸念される慣行
 韓国政府は、以下に述べる欧州連合(EC欧州共同体)及び以下に述べる欧州連合加盟国による慣行が、SCM協定に違反する補助金に該当すると考える。これら慣行のうち主なものとして以下が挙げられる。
i. EC規制1177/2002(暫定保護措置TDM規制)及びEC規制1540/98による助成の供与及びそれに基づくEC加盟国の政府助成供与。上記慣行は、営業助成、リストラ助成、清算助成及び造船所閉鎖助成、さらに地方助成、その他投資、研究開発助成、環境保護助成を含むもので、直接あるいは間接的に造船所に対し商業用船舶に関する優遇政策として供与されるものである。
ii. 欧州連合(EC欧州共同体)及び以下に述べる欧州連合加盟国は、連邦政府、地方政府、地方自治体当局及び政府所有あるいは政府管轄下の金融機関を通し、EC域内で建造される商業用船舶に関する建造支援のための直接あるいは間接的助成を供与している。特に(a)補助金交付、輸出信用、保証あるいは優遇税制等の形態で、新造受注契約ベースに営業助成として、(b)リストラ助成として、(c)地方或いはその他投資助成として、(d)研究開発助成として、(e)環境保護助成として、(f)清算及び造船所閉鎖助成として供与される。
 参考例としてのみ、特例を以下に挙げる。
− デンマーク、フィンランド、独、伊、蘭、葡、西、英の当局及び金融機関による特定船種及び船舶関連ベースにおける自国内造船所優遇補助金の交付
− フィンランド輸出保証機関Finnervaによる引渡し前・後輸出信用の形で供与される予定となっている輸出信用
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らず独KFW輸出融資プログラムの下に供与される輸出補助金及びKFWのような特別信用機関に対して供与された独政府助成の結果として供与される補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らず英政府による輸出信用保証局(ECGD)の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずデンマーク輸出信用基金(EKF)の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らず仏COFACE制度の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずスウェーデン輸出信用保証庁(EKN)の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずスペイン輸出信用保証公社(CESCE)の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずイタリアSACEの下で供与される輸出補助金
一OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずオランダGerling NCM(現Atradius)の下で供与される輸出補助金
− OECD公的支援輸出信用協定に適合するとの主張に拘らずポルトガルCOSECの下で供与される輸出補助金
− イタリア造船所における工事に限定して船舶建造及び改修工事向け融資の回収を目的とし金融機関からイタリアおよび外国船主に対して供与される融資に関するイタリア造船保証基金による信用保証
− オランダ造船所において建造される船舶の船主に対する固定低金利・長期融資の形で供与されるオランダ船舶融資延長
− スペイン国有持株公杜SEPI及びSEPI傘下のAESAを通し、国有造船所Juliana、Cadiz、Astano、Puerta Real、Sestao、Sevillaが艦船建造グループBazan(後これがIZAR造船グループ創立に至る)に売却された際に、市場価格より低い売却価格の設定を通して供与されたリストラ助成及びSEPIにより上記国有造船所及びIZARグループに対して供与された融資および資本投入を通して交付された補助金
− スペイン政府によりスペイン造船所に対して供与された研究開発助成の交付
− スペイン政府によりSEPIを通してIZARグループに対して供与された融資保証の交付
− スペイン造船所を間接的に助成するため「商船隊リプレース優遇税制」の形で「タックス・リース制度」を通してスペイン政府より交付された補助金
− 28億ユーロは下らない救援計画の一部としてフランス政府よりフランス造船・重工業グループAlstomに対して交付された補助金
− タックス・リース制度を通してフランス政府より(TDMとして造船助成を受けているようにも見える)シャンティエール・ド・ラトランティク造船所に対して供与された補助金
− フランス政府によりロワール地方造船所に対して供与された優遇地方補助金の交付
− 英国政府によりクヴァーナー・ゴウヴァン社に対してスコットランド拠点の子会社造船所の開発における優遇地方補助金及び営業補助金
− ドイツ政府によりドイツ造船業に対して交付される優遇研究開発投資補助金
− 欧州連合欧州委員会により欧州連合域内造船業に対して競争力の増強を目的とし交付される研究開発補助金
第II部 慣行がカバーする船種
 問題とされる補助金は、国際貿易に従事する商業用船舶の建造に関して直接あるいは間接的に供与されている。船種としては、バルクキャリア船、コンテナ船、石油タンカー、プロダクト・ケミカル船、バルク・車両・混合キャリア船、一般貨物船、リーファー船、LNG・LPG船、客船、RORO船、クルーズ船、漁船、その他非貨物船舶(オフショア施設を含む)などが含まれる。
第III部 利益を受けるEC造船会社
 上記補助金により恩恵を直接あるいは間接的に受けたEC造船会社の例としては、オデンセ鉄鋼造船所、マイヤー・ヴェルフト造船所、クヴァーナー・マサ造船所、イタリアン・カンティエリ・T・マリオッティ造船所、IZAR(イサール)造船グループ、JJ Sietas造船所、クヴァーナー・ヴァルノヴ・ヴェルフト造船所、アーカーMTW造船所、ホヴァルツヴェルケ・ヴェルフト造船所、Lindenau造船所、シャンティエール・ド・ラトランティク造船所、フォルハーディンク造船所などが含まれる。
第IV部 義務の不履行
 韓国政府は、EU及びEU加盟国の問題とされる慣行に関して、これがSCM協定、GATT協定、DSU合意に規定される義務の不履行であると考える。特に、その顕著な例を以下に挙げる。
− SCM協定第1条、2条、3.1条。例えばフィンランド輸出保証機関Finnervaにより引渡し後・前輸出保証の形で交付される予定となっている輸出信用保証は、SCM協定の第1条及び2条に規定される特定性を有し、法律上は条件付輸出である。また、この他の慣行は、事実上条件付輸出である。
− SCM協定第1、2、5(a)、5(c)、6.3(a)、6.3(b)、6.3(c)、6.4、6.5条。上記第I部(i)及び(ii)に詳述した補助金の例は特に、SCM協定第1条及び2条に規定される特定性を有する補助金であり、韓国国内産業に損害を与えるものであり、また韓国の利益に著しい害を及ぼすもの、あるいは及ぼす恐れのあるものである。
− GATT協定第I: 1条及びIII: 4条。TDM規制及びEU加盟国の施行する慣行にはデンマーク船舶金融基金により助成を受けた利率の延長が船主に適用されるデンマーク造船所での新造長期融資、イタリア造船保証基金による信用保証、またなかんずくドイツ、フィンランド、オランダ、スペイン政府により自国造船所に対して特定船種及び製品関連ベースで交付される補助金等、韓国製商業用船舶及び第三国製の同様船舶との間で、あるいは韓国製商業用船舶及びEU製の同様船舶との間で、公正な競争条件を悪化するものである。
− DSU合意協定第23(1)及び(2)条そしてSCM協定第4、7、32(1)条。TDM規制及びEU加盟国の施行する慣行は、EUあるいはEU加盟国造船所が韓国造船所の不公正な競争により害を受けたと主張する船種において、EU造船所を支援することを目的としており、一国の一方的な慣行ではなく、DSU合意に則って協議解決されるべきところの韓国によるSCM協定に規定される義務が不履行「と見られている」問題を解決することを目的として、一国(即ちEU)の一方的な措置として設定され施行されているものである。更に、TDM規制及びEU加盟国の施行する慣行は、SCM協定で解釈されているようにGATT協定に沿わない「と見られる」EU加盟国の補助金に対して、特定の措置によって成る慣行である。
 
 また韓国は、上記に詳述した慣行がGATT協定第XXIII: 1(a)条、XXIII:1(b)条及びSCM協定第5(b)条の規定に鑑みて、WTO協定の下、韓国が受けるべき利益を無効とする、あるいは害するものであると考える。韓国政府は、WTO協定に即して欧韓二国間協議を継続する間、EU加盟国のうち数力国はEU規制1177/2002に沿って補助金制度を国内法に整合化中であったり、あるいは施行中であったりする例を特に考慮し、WTO協定に基づいて、これ以外の慣行及び申し立てを提出する権利を保持するものとする。
 
 付属文書Iには、現時点で入手可能であった情報の一覧を掲載する。韓国政府は、この付属文書Iに含まれる情報も、WTO協議要請に抱合される情報として審査されるよう要請するものである。
 
韓国政府は、当協議要請に関する返答をECより期待するものであり、協議開始のために互いに都合の良い日時及び場所の設定を望むものである。
 
入手可能な証拠の陳述
 
I. 営業助成
(i)1998年6月29日付EU閣僚理事会規制(EC)No 1540/98。造船助成に関する新規則を設立。
(1998年7月18日付EU官報no L202号1ページに掲載)
(ii)EU加盟国政府によるEU閣僚理事会規制(EC)No 1540/98の国内法整合化。
− デンマーク
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.3「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
 
− フィンランド
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add. 4「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− ドイツ
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.6「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− イタリア
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/M/71/EEC/Add.9「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− オランダ
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.11「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− ポルトガル
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.12「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− スペイン
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.13「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
− 英国
 GATT第XVI: 1条及び2001年12月18日付文書番号G/SCM/N/71/EEC/Add.15「助成及び対抗措置に関する合意協定第25条、欧州共同体、添付書類」に基づく新規正式通告。
(iii)EU閣僚理事会規制(EC)No 1540/98の下に規定される商業用船舶引渡し期日3年を延長すること、及びこれを受けて政府助成の支払い期限を延長すること。
− ドイツMeyer造船所に関する助成No N843/01を巡る2002年6月5日付欧州委員会決議。「欧州委員会、Meyer造船所において建造中のクルーズ船に関する引渡し制限延長を認可―これを受けて政府助成は支払われる可能性あり」2002年6月5日付欧州委員会プレスリリースIP/02/815。
− オデンセ造船所に関する2002年6月19日付欧州委員会決議文書番号C(2002)2139fin。
− クヴァ―ナー・マサ造船所に関する2002年11月13日付欧州委員会決議文書番号C(2002)3768fin。
− イタリアのカンティエリ・T・マリオッティSpA造船所に関する助成N 751/02を巡る2003年3月19日付欧州委員会決議(2003年5月7日付EU官報No C108ページ9掲載)。
− LNG船数隻分に関してスペインIZARによって申請された延長に関し、関係者からのコメントを求める欧州委員会通知(2002年10月3日付EU官報No C238ページ2掲載)
(iv)EUによる政府助成及び「政府助成掲示板(スコアボード)」
− 1999年3月30日付EUにおける製造業及びその他業種を巡る政府助成に関する第7回調査報告書11ページ以降の記述、20ページ、67ページ以降の記述。
− 2000年4月11日付EUにおける製造業及びその他業種を巡る政府助成に関する第8回調査報告書17ページ、22ページ以降の記述、94ページの記述。
− 2001年7月18日付EUにおける製造業及びその他業種を巡る政府助成に関する第9回調査報告書37ページ以降の記述、94ページ。
− 2001年7月18日付「政府助成掲示板」COM(2001412: final文書27ページ、28ページ、51ページ。
− 2001年7月18日付「政府助成掲示板」COM(2001412 final文書27ページ、28ページ、51ページ。
− 2002年11月15日付で世界造船業の状況に関する欧州委員会よりEU閣僚理事会へ提出された第3次報告書COM(2000)730 final文書21ページ以降の記述。
(v)暫定保護措置としての造船助成に関する2002年6月27日付欧州閣僚理事会規則(EC)No 1172/2002(2002年7月2日付EU官報No L172の1ページに掲載)







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