附属書I 輸出補助金の例示表
(a)政府が、企業または産業に対し、輸出が行われることに基づいて直接補助金を交付すること。
(b)外貨資金特別割当制度その他これに類する輸出について報奨を与える措置
(c)政府によって定められまたは義務付けられる輸出貨物の国内運送に係る料金であって、輸出貨物を国内貨物よりも有利に扱うもの
(d)政府または政府機関が、直接または政府が義務付ける制度を通じて間接に、輸出される産品の生産に用いるため輸入されたまたは国産の物品または役務を提供する場合において、国内消費に向けられる産品の生産に用いるため当該輸入されたまたは国産の物品または役務と同種のまたは直接に競合する物品または役務を提供する場合におけるよりも有利な条件で提供すること。ただし、物品については、その条件が輸出者にとり世界市場において商業的に得られる(注1)条件よりも有利な場合に限る。
(e)商工業を営む企業が支払うまたは支払うべき直接税(注2)または社会保障負担金につき、輸出に関連させてその額の全部または一部の免除、軽減または操延べを認めること(注3)。
(f)直接税の課税標準の計算において、国内消費向けの生産について認められる控除に加え、輸出または輸出実績に直接に関連させて特別の控除を認めること。
(g)輸出される産品の生産及び流通に関し、同種の産品が国内消費向けに販売される場合にその生産及び流通に関して課される間接税(注2)の額を超える額の間接税の免除または軽減を認めること。
(h)輸出される産品の生産に用いられる物品または役務に対して課される前段階の累積的な間接税(注2)につき、同種の産品が国内消費向けに販売される場合において当該同種の産品の生産に用いられる物品または役務に対して課される前段階の累積的な間接税と同種の問接税について認められる免除、軽減または操延べに係る額を超えて免除、軽減または繰延べを認めること。もっとも、前段階の累積的な間接税が輸出される産品の生産において消費される投入物(利用できなかったものに対して通常の考慮を払う。)に対して課される場合には、国内消費向けに販売される同種の産品について当該間接税の免除、軽減または繰延べが認められていないときでも、当該輸出される産品については、当該間接税の免除、軽減または繰延べを認めることができる(注4)。この点については、附属書IIに規定する生産工程における投入物の消費に関する指針に従って解釈する。
(i)輸出される産品の生産において消費される輸入された投入物(利用できなかったものに対して通常の考慮を払う。)に対して課される輸入課徴金(注2)の額を超えて輸入課徴金の軽減または払戻しを認めること。もっとも、特別の場合には、企業は、投入物の輸入及びこれに対応する産品の輸出の双方が合理的な期間内(二年を超えないものとする。)に行われることを条件として、前段の規定による利益を得るため、輸入される投入物と量並びに品質及び特性を同一にする国産物品を当該輸入される投入物に代えて用いることができる。この点については、附属書IIに規定する生産工程における投入物の消費に関する指針及び附属書IIIに規定する輸出補助金としての代替物に係る払戻制度の決定に関する指針に従って解釈する。
(j)政府(または政府の監督の下にある特別の機関)が、輸出信用保証制度、輸出信用保険制度、輸出される産品に係る費用の上昇に対処する保険制度若しくは保証制度または外国為替の変動の危険に対処する制度について長期的な運用に係る経費及び損失を補てんするためには不十分な料率によってこれらの制度を運用すること。
(k)政府(または政府の監督の下にある若しくは政府の権限の下で活動する特別の機関)が、輸出信用に用いる資金を自ら獲得するために実際に支払わなければならない利率(または輸出信用に用いる資金と償還期間、他の信用条件及び通貨を同一にする資金を獲得するために国際資本市場において借入れを行ったとしたならば支払わなければならなかったであろう利率)よりも低い利率で輸出信用を供与することまたは輸出者若しくは金融機関が輸出信用の供与を受けるために負担する費用の全部または一部を支払うこと。ただし、政府が輸出信用を供与すること及び費用を支払うことが輸出信用の条件について相当な利益を与えるために行われる場合に限る。
もっとも、加盟国が千九百七十九年一月一日において少なくとも十二の原加盟国が参加している公的輸出信用に関する国際的な約束(または当該約束を継承する約束であってこれらの原加盟国によって採択されるもの)の参加国である場合または事実上当該約束における利率に関する規定を適用している場合には、これらの規定に合致する輸出信用の供与は、この協定により禁止される輸出補助金とはみなされない。
(1)その他公的勘定による負担であって千九百九十四年のガット第十六条に規定する輸出補助金に該当するもの
注1 「商業的に得られる」とは、国産物品または輸入された物品のいずれかの選択が、制限されておらず、かつ、商業的考慮に基づいてのみ行われることをいう。
注2 この協定の適用上、「直接税」とは、賃金、利潤、利子、賃貸料、ロイヤルティその他の所得に対して課される税及び不動産の所存に対して課される税をいう。
「輸入課徴金」とは、関税その他この注2に規定していない課徴金であって輸入に対して課されるものをいう。
「間接税」とは、売上税、個別消費税、取引高税、付加価値税、フランチャイズ税、印紙税、流通税、事業資産税、国境税その他の税であって直接税及び輸入課徴金以外のものをいう。
「前段階の」間接税とは、産品の生産に直接または間接に用いる物品または役務に対して課される間接税をいう。
「累積的な」間接税とは、生産の一の段階において課税された物品または役務が当該生産のその後の段階において用いられる場合に当該生産のその後の段階において税額控除を行う仕組みを有しない多段階にわたる間接税をいう。
税の「軽減」には、税の払戻しを含む。
輸入課徴金の「軽減または払戻し」には、輸入課徴金の全部または一部の免除または操延べを含む。
注3 加盟国は、例えば、適当な額の利子が徴収される場合には操延べが輸出補助金に該当しないことを認める。加盟国は、課税上、輸出企業とその支配下にある外国の買手との間、または輸出企業と当該輸出企業と同一の支配下にある外国の買手との間の取引における産品の価格については全く独立の立場で行動する独立の企業の間において支払われるであろう価格を用いるべきであるとの原則を再確認する。加盟国は、この原則に反するおそれがあり、かつ、輸出取引について直接税の租当な減額をもたらす行政上の措置及び他の措置につき、他の加盟国の注意を喚起することができる。この場合において、加盟国は、千九百九十四年のガットに基づく加盟国の権利及び義務(当該注意の喚起により行われることとなる協議に関する権利を含む。)を害することなく、通常、既存の二国間の租税条約その他特定の国際的な制度を利用して意見の相違を解消するよう努める。
(e)の規定は、加盟国が自国または他の加盟国の企業の外国源泉所得に対する二重課税を防止するための措置をとることを制限するものではない。
注4 (h)の規定は、付加価値税制度及びこれに代わるような国境における税の調整については、適用しない。付加価値税の過度の軽減の問題については、専ら(g)の規定により取り扱う。
附属書V 著しい害に関する情報を収集するための手続
1 すべての加盟国は、7.4から7.6までの規定に定める手続に従って小委員会が検討する証拠の収集に協力する。紛争当事国である加盟国及び関係する第三国である加盟国は、7.4の規定が適用されたときは、この1の規定の実施について責任を有する自己の領域内の機関及び情報提供の要請に応ずるための手続を速やかに紛争解決機関に通報する。
2 7.4の規定に基づき問題が紛争解決機関に付託された場合には、同機関は、要請に基づき、補助金の存在、補助金の額及び補助金を受けた企業の販売総額を確定するために必要な情報並びに補助金の交付を受けた産品が与える悪影響を分析するために必要な情報を補助金を交付している加盟国の政府から入手するための手続を開始する(注1)。この過程には、適当な場合には、情報を収集し及び第七部に定める通報手続を通じて紛争当事国が入手することができる情報を明確なものとし、かつ、詳細なものとするために、補助金を交付している加盟国及び申立加盟国の政府に対して質問書を提示することを含む(注2)。
注1 著しい害の存在が立証されなければならない場合に適用する。
注2 紛争解決機関が情報を収集する過程においては、その性質上秘密である情報またはこの過程に関与する加盟国が秘密のものとして提供した情報を保護する必要を考慮する。
3 第三国の市場における影響については、紛争当事国は、悪影響を分析するために必要な情報であって申立加盟国または補助金を交付している加盟国から合理的に入手することができないものを、第三国である加盟国の政府に対する質問を含む手段を通じ収集することができる。この場合、この要請は、第三国である加盟国に対して不合理な負担を課さないような方法で行われるべきである。第三国である加盟国は、特に、そのために市場または価格の分析を特別に行うことを期待されない。提供される情報は、当該第三国が既に入手したものまたは容易に入手することができるもの(例えば、関係する統計機関が既に収集した最新の統計であって公表されていないもの、関係産品の輸入及び申告価額に関する通関資料等)とする。ただし、紛争当事国が自国の負担で詳細な市場の分析を行う場合には、第三国である加盟国の当局は、当該分析を行う者または企業の作業に対して便宜を与える。また、これらの者または企業は、政府が通常秘密としている情報以外のすべての情報を入手する機会を与えられる。
4 紛争解決機関は、情報を収集するための過程を促進するための職務を遂行する代表者を指名する。当該代表者の目的は、紛争の多角的な検討を迅速に行うことを容易にするために必要な情報を適時に収集することを確保することに限られる。当該代表者は、特に、必要な情報を最も効果的に収集する方法を提案すること及び当事国の協力を奨励することができる。
5 2から4までに定める情報を収集するための過程は、7.4の規定に基づいて問題が紛争解決機関に付託された日から六十日以内に完結させる。この過程で入手された情報は、第十部の規定により同機関が設置する小委員会に提出される。当該情報は、特に、補助金の額(及び、適当な場合には、補助金を受けた企業の販売総額)、補助金の交付を受けた産品の価格、補助金の交付を受けていない産品の価格、市場に供給する他の供給者の産品の価格、補助金の交付を受けた産品の市場への供給の変動及び市場占拠率の変動に関する資料を含むべきである。当該情報は、また、反証のための証拠及び小委員会が結論を得る過程において適当とみなす補足的な情報も含むべきである。
6 情報を収集するための過程において補助金を交付している加盟国または第三国である加盟国が協力しない場合には、申立加盟国は、入手可能な証拠に基づき、当該補助金を交付している加盟国または第三国である加盟国が協力を行わないという事実及び状況を示すとともに著しい害に関する自国の立場を表明する。補助金を交付している加盟国または第三国である加盟国の協力がないために情報が入手できない場合には、小委員会は、必要に応じ、その他の方法により入手可能な最善の情報によって記録を完成することができる。
7 小委員会は、決定を行うに当たり、情報を収集するための過程に関与する当事国の協力がないという事実に基づいて当該当事国に不利益な推定を行うべきである。
8 小委員会は、入手可能な最善の情報または不利益な推定のいずれか一方を用いることを決定するに当たり、情報提供の要請の合理性及び当事国が当該要請に応ずるために協力的かつ適時に払った努力に関して、4の規定に従って指名される紛争解決機関の代表者の助言を考慮する。
9 情報を収集するためのいかなる過程も、紛争の適切な解決のために重要と認められる追加の情報であって当該手続を通じて十分に収集されなかったものを小委員会が求めることを制限するものではない。もっとも、小委員会は、特定の当事国の立場を支持する情報であって、情報を収集するための過程において当該当事国が合理的な理由なしに協力しなかった結果として記録に記載されていないものについては、通常、記録を完成するための追加の情報として提供を要請すべきではない。
紛争解決に係わる規則及び手続きに関する了解
第二十三条 多角的体制の強化
1 加盟国は、対象協定に基づく義務についての違反その他の利益の無効化若しくは侵害または対象協定の目的の達成に対する障害について是正を求める場合には、この了解に定める規則及び手続によるものとし、かつ、これらを遵守する。
2 1の場合において、加盟国は、
(a)この了解に定める規則及び手続に従って紛争解決を図る場合を除くほか、違反が生じ、利益が無効にされ若しくは侵害されまたは対象協定の目的の達成が妨げられている旨の決定を行ってはならず、また、紛争解決機関が採択する小委員会または上級委員会の報告に含まれている認定またはこの了解に従って行われた仲裁判断に適合する決定を行う。
(b)関係加盟国が勧告及び裁定を実施するための妥当な期間の決定に当たっては、第二十一条に定める手続に従う。
(c)譲許その他の義務の停止の程度の決定に当たっては、前条に定める手続に従うものとし、関係加盟国が妥当な期間内に勧告及び裁定を実施しないことに対応して対象協定に基づく譲許その他の義務を停止する前に、同条に定める手続に従って紛争解決機関の承認を得る。
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