関連協定(抜粋)
本報告書本文においてWTO協定を多数引用しているため、参考のために、関係条文と関係付属書を以下に添付する。
1994年GATT
第一条 一般的最恵国待遇
1 いずれかの種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、または輸入若しくは輸出のための支払手段の国際的移転について課せられるものに関し、それらの関税及び課徴金の徴収の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、並びに第三条2及び4に掲げるすべての事項に関しては、いずれかの締約国が他国の原産の産品または他国に仕向けられる産品に対して許与する利益、特典、特権または免除は、他のすべての締約国の領域の原産の同種の産品またはそれらの領域に仕向けられる同種の産品に対して、即時かつ無条件に許与しなければならない。
2 前項の規定は、輸入税または輸入に関する課徴金についての特恵で、4に定める限度をこえずかつ次に掲げるところに該当するものの廃止を要求するものではない。
(a)附属書Aに掲げる地域のうちの二以上の地域の間にのみ有効な特恵。ただし、同附属書に定める条件に従わなければならない。
(b)千九百三十九年七月一日に共通の主権または保護関係若しくは宗主権関係によって結合されていた一以上の地域で、附属書B、C及びDに掲げるものの間にのみ有効な特恵。ただし、それらの附属書に定める条件に従わなければならない。
(c)アメリカ合衆国とキューバ共和国との間にのみ有効な特恵
(d)附属書E及びFに掲げる隣接国の間にのみ有効な特恵
3 1の規定は、以前オットマン帝国の一部であり、かつ、千九百二十三年七月二十四日に同帝国から分離した諸国間の特恵には適用しない。ただし、その特恵は、この点について第二十九条1の規定に照らして適用される第二十五条5(a)の規定に基づいて承認されなければならない。
4 2の規定に基いて特恵を許与される産品に対する特恵の限度は、この協定に附属する該当の譲許表に特恵の最高限度が明示的に定められていない場合には、次のものをこえてはならない。
(a)前記の譲許表に掲げる産品に対する輸入税または課徴金については、その譲許表に定める最恵国税率と特恵税率との間の差。特恵税率が定められていない場合には、特恵税率は、この4の規定の適用上、千九百四十七年四月十日に有効であったものとし、また、最恵国税率が定められていない場合には、その限度は、千九百四十七年四月十日における最恵国税率と特恵税率との間の差をこえてはならない。
(b)該当の譲許表に掲げられていない産品に対する輸入税または課徴金については、千九百四十七年四月十日における最恵国税率と特恵税率との間の差。
附属書Gに掲げる締約国の場合には、(a)及び(b)の千九百四十七年四月十日という日付は、同附属書に定めるそれぞれの日付と置き替える。
第二部
第三条 内国の課税及び規則に関する内国民待遇
1 締約国は、内国税その他の内国課徴金と、産品の国内における販売、販売のための提供、購入、輸送、分配または使用に関する法令及び要件並びに特定の数量または割合による産品の混合、加工または使用を要求する内国の数量規則は、国内生産に保護を与えるように輸入産品または国内産品に適用してはならないことを認める。
2 いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、同種の国内産品に直接または間接に課せられるいかなる種類の内国税その他の内国課徴金をこえる内国税その他の内国課徴金も、直接であると間接であるとを問わず、課せられることはない。さらに、締約国は、前項に定める原則に反するその他の方法で内国税その他の内国課徴金を輸入産品または国内産品に課してはならない。
3 現行の内国税で、前項の規定に反するが、千九百四十七年四月十日に有効であり、かつ、当該課税産品に対する輸入税を引き上げないように固定している貿易協定に基いて特に認められているものに関しては、それを課している締約国は、その貿易協定の義務を免除されてその内国税の保護的要素を撤廃する代償として必要な限度までその輸入税を引き上げることができるようになるまでは、その内国税に対する前項の規定の適用を延期することができる。
4 いずれかの締約国の領域の産品で他の締約国の領域に輸入されるものは、その国内における販売、販売のための提供、購入、輸送、分配または使用に関するすべての法令及び要件に関し、国内原産の同種の産品に許与される待遇より不利でない待遇を許与される。この項の規定は、輸送手段の経済的運用にのみ基き産品の国籍には基いていない差別的国内輸送料金の適用を妨げるものではない。
5 締約国は、特定の数量または割合による産品の混合、加工または使用に関する内国の数量規則で、産品の特定の数量または割合を国内の提供源から供給すべきことを直接または間接に要求するものを設定し、または維持してはならない。さらに、締約国は、1に定める原則に反するその他の方法で内国の数量規則を適用してはならない。
6 前項の規定は、締約国の選択により、千九百三十九年七月一日、千九百四十七年四月十日または千九百四十八年三月二十四日にいずれかの締約国の領域において有効である内国の数量規則には適用されない。ただし、これらの規則で前項の規定に反するものは、輸入に対する障害となるように修正してはならず、また、交渉上は関税とみなして取り扱うものとする。
7 特定の数量または割合による産品の混合、加工または使用に関する内国の数量規則は、その数量または割合を国外の供給源別に割り当てるような方法で適用してはならない。
8(a)この条の規定は、商業的再販売のためまたは商業的販売のための貨物の生産に使用するためではなく政府用として購入する産品の政府機関による調達を規制する法令または要件には適用しない。
(b)この条の規定は、国内生産者のみに対する補助金(この条の規定に合致して課せられる内国税または内国課徴金の収入から国内生産者に交付される補助金及び政府の国内産品購入の方法による補助金を含む。)の交付を妨げるものではない。
9 締約国は、内国の最高価格統制措置が、この条の他の規定に合致していてもなお、輸入産品を供給する締約国の利益に不利な影響を及ぼすことがあることを認める。よって、その措置を執っている締約国は、その不利な影響をできる限り避けるため、輸出締約国の利益を考慮しなければならない。
10 この条の規定は、締約国が、露出済映画フィルムに関する内国の数量規則で第四条の要件に合致するものを設定し、または維持することを妨げるものではない。
補助金及び相殺措置に関する協定
第一部 一般規定
第一条 補助金の定義
1.1 この協定の適用上、次の(a)の(1)または(2)のいずれか及び(b)の条件が満たされる場合には、補助金は、存在するものとみなす。
(a)(1)加盟国の領域における政府または公的機関(この協定において「政府」という。)が資金面で貢献していること。すなわち、
(i)政府が資金の直接的な移転を伴う措置(例えば、贈与、貸付け及び出資)、資金の直接的な移転の可能性を伴う措置または債務を伴う措置(例えば、債務保証)をとること。
(ii)政府がその収入となるべきものを放棄しまたは徴収しないこと(例えば、税額控除等の財政による奨励)。(注) 注 千九百九十四年のガット第十六条(第十六条の注釈及び補足規定)及びこの協定の附属書Iから附属書IIIまでの規定に基づき、いずれかの輸出産品が、国内消費に向けられる同種の産品に課される関税若しくは内国税を免除されることまたはこれらの関税若しくは内国税が課されたときにその額を超えない額だけ払戻しを受けることは、補助金とはみなさない。
(iii)政府が一般的な社会資本以外の物品若しくは役務を提供しまたは物品を購入すること。
(iv)政府が資金調達機関に支払を行うこと、または政府が民間団体に対し、通常政府に属する任務であって(i)から(iii)までに規定するものの一若しくは二以上を遂行すること若しくは政府が通常とる措置と実質上異ならないものをとることを委託し若しくは指示すること。
(2)千九百九十四年のガット第十六条に規定する何らかの形式による所得または価格の支持があること。
(b)(a)の(1)または(2)の措置によって利益がもたらされること。
1.2 1.1に規定する補助金は、次条の規定に基づいて特定性を有する場合に限り、第二部の規定または第三部若しくは第五部の規定の適用を受ける。
第二条 特定性
2.1 1.1に規定する補助金が当該補助金を交付する当局(この協定において「交付当局」という。)の管轄の下にある一の企業若しくは産業または企業若しくは産業の集団(この協定において「特定企業」という。)について特定性を有するか有しないかを決定するため、次の原則を適用する。
(a)交付当局または交付当局の適用する法令が補助金の交付の対象を明示的に特定企業に限定している場合には、当該補助金は、特定性を有するものとする。
(b)交付当局または交付当局の適用する法令が補助金の交付を受ける資格及び補助金の額を規律する客観的な基準または条件(注)を定めている場合には、特定性は、存在しないものとする。ただし、当該資格が自動的に付与されるものであり、かつ、当該基準及び条件が厳格に遵守されていることを条件とする。当該基準または条件については、確認することができるように、法令その他の公文書に明確に定めなければならない。 注 この(b)に規定する「客観的な基準または条件」とは、中立的であり、特定企業を他のものよりも有利に扱うものではなく、本質的に経済に係るものであり、かつ、一様に適用される基準または条件(例えば、被用者の数または企業の規模)をいう。
(c)(a)及び(b)に定める原則の適用の結果として特定性が存在しないと認められるにもかかわらず、補助金が実際には特定性を有するものである可能性があると信ずるに足りる理由がある場合には、他の要因を考慮することができる。この要因とは、限定された数の特定企業による補助金制度の利用、特定企業による補助金制度の支配的な利用、特定企業に対する均衡を失した多額の補助金の交付及び補助金の交付を決定するに当たって交付当局が裁量的な方法をとっていること(注)をいう。この(c)の規定の適用に当たっては、交付当局の管轄の下にある経済活動の多様性の程度及び補助金制度を運用している期間の長さを考慮する。 注 この点に関し、特に、補助金の申請が拒否されまたは承認される頻度及びそのような決定の理由に関する情報を考慮する。
2.2 交付当局の管轄の下にある地理的に指定された地域内にある特定企業のみに交付される補助金は、特定性を有するものとする。この協定の適用上、権限を有するすべての段階の政府が行う一般的に適用される税率の決定または変更は、特定性を有する補助金とはみなさないと了解する。
2.3 次条の規定に該当する補助金は、特定性を有するものとみなす。
2.4 この条に規定する特定性については、実証的な証拠に基づく明確な裏付けによって決定する。
第二部 禁止される補助金
第三条 禁止
3.1 農業に関する協定に定める場合を除くほか、第一条に規定する補助金のうち次のものについては、禁止する。
(a)法令上または事実上(注1)、輸出が行われることに基づいて(唯一の条件としてであるか二以上の条件のうち一の条件としてであるかを問わない。)交付される補助金(附属書Iに掲げるものを含む(注2)。) 注1 補助金の交付が法的には輸出が行われることに基づいたものではない場合においても、当該補助金の交付が実際のまたは予想される輸出または輸出収入と事実上結び付いていることが事実によって立証されるときは、この基準は、満たされるものとする。輸出を行う企業に補助金を交付するという単なる事実のみを理由として、この3.1に規定する輸出補助金とみなされることはない。 注2 輸出補助金には当たらないものとして附属書Iに規定する措置は、この条の規定またはこの協定の他のいかなる規定によっても禁止されない。
(b)輸入物品よりも国産物品を優先して使用することに基づいて(唯一の条件としてであるか二以上の条件のうち一の条件としてであるかを問わない。)交付される補助金
3.2 加盟国は、3.1に規定する補助金を交付しまたは維持してはならない。
第四条 救済措置
4.1 加盟国は、他の加盟国が禁止される補助金を交付しまたは維持していると信ずるに足りる理由がある場合には、当該他の加盟国に対し協議を要請することができる。
4.2 4.1の規定に基づく協議の要請には、禁止される補助金の存在及び性格についての入手可能な証拠を付する。
4.3 関係する補助金を交付しまたは維持しているとされた加盟国は、4.1の規定に基づく協議の要請を受けた場合には、できる限り速やかに協議に応ずる。協議は、事実関係を明らかにすること及び相互に合意する解決を得ることを目的とする。
4.4 協議の要請から三十日(注)以内に相互に合意する解決が得られなかった場合には、協議の当事者である加盟国は、小委員会を直ちに設置するため、問題を紛争解決機関に付託することができる。もっとも、同機関が小委員会を設置しないことをコンセンサス方式によって決定する場合には、小委員会は、設置されない。
注 この条に定める期間は、合意によって延長することができる。
4.5 小委員会は、設置された場合には、関係する措置が禁止される補助金であるかないかの問題に関し、常設専門家部会(注)の援助を要請することができる。同部会は、その要請を受けた場合には、当該措置の存在及び性格についての証拠を直ちに検討するものとし、また、当該措置をとりまたは維持している加盟国に対し、当該措置が禁止される補助金ではないことを立証する機会を与える。同部会は、小委員会が決定する期限内に小委員会に結論を報告する。小委員会は、当該措置が禁止される補助金であるかないかの問題に関する同部会の結論を修正することなく受諾する。
注 第二十四条の規定に基づいて設置する。
4.6 小委員会は、紛争当事国に最終的な報告を送付する。当該報告については、小委員会の構成及び付託事項の確定の日から九十日以内にすべての加盟国に送付する。
4.7 関係する措置が禁止される補助金であると認める場合には、小委員会は、補助金を交付している加盟国に対し、当該補助金を遅滞なく廃止するよう勧告する。この点に関し、小委員会は、当該措置を廃止しなければならない期限をその勧告において特定する。
4.8 小委員会の報告は、すべての加盟国への送付から三十日以内に、紛争解決機関によって採択される。ただし、一の紛争当事国が上級委員会への申立ての意思を同機関に正式に通報しまたは同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。
4.9 小委員会の報告について申立てがされた場合には、上級委員会は、紛争当事国が当該申立ての意思を正式に通報した日から三十日以内に決定を行う。上級委員会は、三十日以内に報告を作成することができないと認める場合には、報告を送付するまでに要する期間の見込みとともに遅延の理由を書面により紛争解決機関に通報する。この期間は、いかなる場合にも、六十日を超えてはならない。同機関は、上級委員会の報告を、加盟国への送付の後二十日以内に採択し(注)、紛争当事国は、これを無条件で受諾する。ただし、同機関が当該報告を採択しないことをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。
注 紛争解決機関の会合がこの期間内に予定されていない場合には、この目的のために開催される。
4.10 小委員会が定めた期限の、委員会または上級委員会の報告の採択の日から起算する。)内に紛争解決機関の勧告が実施されない場合には、同機関は、申立てをした加盟国(この協定において「申立加盟国」という。)に対し、適当な対抗措置をとることを承認する(注)。ただし、同機関が対抗措置に係る申請を却下することをコンセンサス方式によって決定する場合は、この限りでない。
注 この4.10の前段の規定は、この条に規定する補助金が禁止されているという事実に照らして均衡を失する対抗措置を認めることを意味するものではない。
4.11 紛争当事国が紛争解決了解第二十二条6に規定する仲裁を要請する場合には、仲裁人は、対抗措置が適当であるかないかを決定する。(注)
注 この4.11の規定は、この条に規定する補助金が禁止されているという事実に照らして均衡を失する対抗措置を認めることを意味するものではない。
4.12 この条の規定に従って紛争を処理するに当たっては、紛争解決了解に従って紛争処理のために適用される期間については、この条に特に定める期間を除くほか、同了解に定める期間の半分の期間とする。
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