4. 総合的沿岸域管理に向けた第1次検討
4-1 総合的沿岸域管理の要件(地域主導型沿岸管理の要件整理)
総合的沿岸域管理の必要性がいわれるが、日本の沿岸域管理の現場の現状と課題の抽出のための詳細な事例研究が必要である。
日本では沿岸域では、セクターを越えた管理者間や利害関係者の統合的な協議会が実質上存在しないことから、管理者や利用者のセクター内での調整をはかったうえで、ほかの調整すべき相手との協議する方法がとられてきた。自治体や国の連絡協議会などがあっても、報告と情報交換が主な内容で、利害や意見の調整は行政内では行われることがあっても公開性は低かった。そのため、社会問題化していなかったり、逆に大きな紛糾事項になった案件については、セクター外との調整を図らないほうが組織としてはまとまりやすいという特徴があった。セクショナリズム化は、組織の本性ともいえるもので、なんらかの社会的仕組みがない限りは、実質的な統合的管理や計画作成は困難と考えられる。
そこで、ボトムアップともいうべき"地域主導型"の沿岸域管理がありえるかとの作業仮説をもとに検討を進める。
統合的沿岸域管理では、広域的、分野横断的、が前提であるが、主体が不明確になりやすい。一方、地域主導では、それぞれが個別的な利害を主張するばかりで、その大きな調整が困難であるとも考えられる。
統合的沿岸域管理の要件の描出のために、事例研究を通じて、地域と湾岸自治体、国の関係性、地域の海域の保全や利用と広域的自然システムとの関係を要点とする。
4-2 木更津地区の歴史的変遷
(1)沿岸域管理の視点からの要点
『木更津市史』をもとに郷土史を俯瞰する。下記年表中の*に沿岸域管理の視点からの要点を挙げる。
表3-1 「木更津市史」にみる沿岸域管理の歴史
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