表3-4 パラレルサイト
サイト名 |
管理政府 |
サイトの概要 |
Bataan, フィリピン |
Bataan州 |
・陸域面積:1,373km2
・海域面積:2,340km2
・海岸線:177km
・サイト概要:Bataan州は、マニラ湾の入口に位置しており、特別経済輸出地区が設けられ石油化学、繊維、電子産業などが行われている。また、養殖業や観光、国立公園などの保護区が存在して多様な利害関係が構築されている。しかし、経済的な変化とともに沿岸域の環境は様々な問題と遭遇している。例えば、侵食や堆積問題、生態系毀損、破壊的な漁業手法、陸又は海起因汚染物質の流入などが挙げられる。このような問題に対応するため、民間企業と市民団体が協力し設けたBataan
Coastal Care Foundationの基金で統合管理に乗り出している。この地域はPEMSEAの最初のパラレルサイトである。
・事業担当者:Mr. William Azucena |
Shihwa湖、 韓国 |
海洋水産部、京幾道、安山・始興・華城市 |
・陸域面積:964km2 ・海域面積:57km2 ・海岸線:253km ・1道、3市を包含 ・定期STAKEHOLDERフォーラム開催
・サイト概要:Shihwa湖は1994年防潮提の建設によって作られた人工湖である。建設の目的は付近の工業団地と農業地域への用水供給であったが、堤防建設以後急激な水質悪化によって深刻な環境問題が起きた。この現状を踏まえて海洋水産部はShihwa湖を特別管理海域として指定し、地域住民、自治体とともにパートナーシップを結び、実行計画の策定に臨んでいる。2001年に、海洋水産部、PEMSEA、自治体間で覚書を取り交わし、PEMSEAのパラレルサイトとして指定された。同時に、持続的な沿岸域利用と環境保護のためのShihwa宣言を採択し管理に取り組んでいる。
・事業担当者:Mr. Park, Kwang Youl、海洋水産部 |
Sukabumi, インドネシア |
Sukabumi区 |
・海域面積:749km2 ・海岸線:117km
・サイト概要:Sukabumi区は西ジャバ州のインド洋に面した宗教地区である。本地区では、まだ深刻な環境問題は起きていないが、観光などの空間利用計画が策定されておらず、無計画な開発のおそれがある。また、生活下水と固形廃棄物の拡散、漁港での環境悪化、破壊的な漁業手法などで対策が求められている。そのため、2003年2月PEMSEAとの覚書によって3番目のパラレルサイトとして指定された。
・事業担当者:Mr. Ichwanudin |
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3-7 パラレルサイト開発ガイドライン
以下に、PEMSEAで規定されているパラレルサイトの開発ガイドラインを示す。
(1)パラレルサイト開発の手順
(1)ICM実施のための自治体の主体的な取り組みの確保
(2)適切な財源措置
(3)国土交通省を通してPEMSEAへ公式要請提出
(4)PEMSEAによるサイト候補地の評価
‐自治体および利害関係者の意志確認
‐導入する適切な管理方法と対応すべき問題・課題抽出
(5)PEMSEAの承認を経て、合意書、作業計画、予算の策定
(6)合意書署名と実施プログラム開始
(2)パラレルサイト選定におけるPEMSEAの要請
(1)サイト評価のため最低2箇所の候補地指名
(2)サイトプロファイルの作成と提出(別表の様式)
(3)2003年1月31日までに公式要請提出
(3)パラレルサイトプログラム実施における自治体の役割と責任
‐事業管理事務所(PMO)と事業調整委員会(PCC)の設置
‐利害関係者との協議および市民に対する啓発・広報
‐作業計画策定および予算の確保
‐ICMプログラム開発・実施のための必要な資源の提供
‐多様な財源の整備
‐作業計画の調整
‐PEMSEAの自治体地域ネットワーク(RNLG)のメンバーとしての参加
‐得られた経験・教訓の文書化および普及
(4)パラレルサイトプログラム実施におけるPEMSEAの役割と責任
‐ICMプログラムの開発・実施・継続に関して自治体に技術的・管理運営的な面の助言または支援(実費ベース)
‐自治体のICMプログラムに関する作業計画および予算策定の支援
‐自治体への人材育成機会の提供(実費ベース)
‐自治体にICM関連PEMSEAの刊行物および技術報告書の提供
‐PEMSEAの自治体地域ネットワーク(RNLG)および統合情報管理システム(IIMS)、危険性評価のような他の地域ネットワークへの参加機会提供
‐Eメール、HP、事例研究などによって自治体の経験・教訓の普及努力を支援
3-8 デモンストレーションサイト「アモイ」の概要
PEMSEAの第1期(1994-1999)のデモンストレーションサイトであった中国のアモイ市は、PEMSEAの統合管理プログラムの導入と自治体の積極的な取り組みによって短期間に環境を回復させ、社会・経済的な大きな成果をあげたと国際的に知られている。
本事業の目的は、海洋汚染への効果的な予防・調節・修復のための統合沿岸管理の適用を試すことであった。
(1)地域概要
本サイトの陸地面積は1,516km2、海域面積は334km2、海岸線延長は185kmである。地域の人口はおよそ130万人、2000年のGDP成長率は15.2%であった。地域の主な産業としては、軽・重工業、水産業、塩田、農業、観光、貿易および港湾産業があげられる。
本地域では1980年代以前にも大規模な埋立が行われ、地形など物理的な変化は見られたが、工業化が遅れて農業や漁業が中心産業であったため、陸からの汚染物質の流入が少なく、湾の水質には大きな問題がなかった。しかし、1980年代に入って、国務院はアモイを特別経済区に指定し、現代都市・国際都市・海洋都市・景観都市としての発展を目標とする政策の展開によって社会経済的な成長をとげた。
このような政策は、アモイでの新たな資源利用と管理を求め、特に沿岸域資源への圧力が非常に高くなった。工業化・都市化は、人口の増加、海洋および沿岸資源に対する競合、汚染などの問題を引き起こした。また、無計画的な開発と人口の急増によって生態系破壊や生物資源の減少、海岸侵食による海岸線の後退、航路の阻害などの様々な問題が沿岸域で起きることになった。
そこで、当サイトでは、こうした急激な経済開発に伴う多面利用による競合や汚染の脅威を克服するためには、今までの伝統的な沿岸管理システムでは対応できないことを認識し、革新的で総合的な管理の取り組みを行うこととなった。
(2)環境問題
1980年代当時、アモイが抱えていた環境問題は以下のように報告されている。
○海洋汚染の予防と修復に対する体制の脆弱性
○統合計画の欠如、無調整・無規制の海洋資源開発
○単一分野指向の政策決定システムと非効率的な調整システム
○多面的な資源利用による競合を調整する制度的な基盤の欠如
○法執行能力の脆弱性
○統合環境管理のための資金不足
○政策決定権者の海洋環境に関する意識不足と一般市民の関心不足
○管理に必要な科学的基盤の不足
○データの総合管理体制の欠如と分野間の交流不足
○越境問題
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