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「海洋教育拡充に向けた取り組み」
実施体制および協力者の方々
講師
宇多 高明 [(財)土木研究センター審議役/なぎさ総合研究室 室長]
嶋野 道弘 [文部科学省 初等中等教育局 視学官]
清水 透 [三協興産株式会社 技術部]
清野 聡子 [東京大学大学院総合文化研究科 助手]
田中 達実 [ジャパンGEMSセンター 講師]
中村 元 [江ノ島水族館 アドバイザー]
濱田 隆士 [東京大学 名誉教授/放送大学]
福島 朋彦 [SOF海洋政策研究所 研究員]
村上 八千世 [アクトウェア研究所]
 
ワークショップ参加者
磯貝 幸子 [木更津市立金田小学校]
今井 常夫 [富津市立天神山小学校]
川原 哲郎 [新宿区立大久保小学校]
久保田 智恵美 [新潟県教育庁上越教育事務所]
五島 由美子 [京ヶ瀬村立駒林小学校]
齋藤 響 [横浜市立戸部小学校]
杉本 茂雄 [中央区立月島第三小学校]
高橋 明久 [横浜国立大学教育人間科学部付属横浜小学校]
武澤 裕子 [目黒星美学園小学校]
田中 義順 [江戸川区立第七葛西小学校]
田村 学 [柏崎市教育委員会学校教育課柏崎市立教育センター]
中川 繭 [新宿区立余丁町小学校]
中村 泰之 [大田区立矢口小学校]
右田 清 [トキワ松学園小学校]
 
特別協力
大森 隆實 [目黒星美学園小学校 校長]
岸 道郎 [北海道大学大学院 水産科学研究科 教授]
小堀 信幸 [(財)日本海事科学振興財団(船の科学館) 学芸部 部長]
舩田 信昭 [新宿区立落合第4小学校 校長]
渡辺 さおり [学びの場.com]
※敬称略、50音順
 
プロジェクトメンバー
寺島 紘士 [SOF海洋政策研究所 所長]
菅原 善則 [SOF海洋政策研究所 企画室 室長]
酒井 英次 [SOF海洋政策研究所 研究員]
堀口 瑞穂 [SOF海洋政策研究所 研究調査員]
赤見 朋晃 [SOF海洋政策研究所 研究調査員]
大崎 博之 [SOF海洋政策研究所 研究調査員]
 
事業の背景
 近年、海洋関係者の間で海の学習の充実を望む声が特に強まってきたが、これは持続可能な社会の実現に向けた関心の高まりと捉えることができる。以前の海洋・海事教育に対する取り組みは、一部の専門機関や団体が取り組んでいる事業が主体であったが、海洋の統合的管理が叫ばれるようになり、また市民や学生の教育の重要性に対する認識が高まったことで、教育は海洋関係者の間でプライオリティの高いテーマとして扱われるようになった。
 加えて、平成14年から順次導入が開始された「総合的な学習の時間」は、それまで敷居の高かった学校教育の現場に外部機関が参入する好機として、様々な業界が教育に関心を持つきっかけとなった。学校の裁量で独自にテーマの選定が可能な学習時間は、分野横断的で総合的な視点が求められる海の学習には非常に合致したものであることは間違いない。
 しかし、学校教育の現場を見てみると海に関連した学習の機会は依然として少ないのが現実である。その要因としては、過去の学習指導要領改訂の度に海に関する具体的な表記が徐々に削除された結果、教科書中の海の題材が削減され、授業から海の学習の機会が失われていった点が指摘されている。事実、過去の学習指導要領や教科書の変遷を調べてみれば、それを裏付けるものを見い出すことができる。しかし果たして原因はそれだけであろうか。我々はこれまでの調査で、海の学習の導入を阻む原因としてむしろもっと複雑な問題が根底にあるという思いを抱いている。
 わが国の教育は、政治・経済情勢や産業構造の変化、また近年では社会や家庭の問題の複雑化などによって常に変革を求められてきた。その結果、学校教育の現場には教科学習のみならず、子どもの心の問題や食生活に至るまで、多様な問題にまで対応が求められるようになったが、ここで問題なのは、このような変化の中で学校教育にはスクラップ・アンド・ビルドの考え方がなされず、現場教員への負担が増加する傾向にあるという点である。
 ゆとり教育のあり方が問われ、教科学習の充実を訴える声も多いが、その一方で学校のあり方を変えようと従来のシステムからの脱却も求める声も多い。そのような学校教育の現状の中で、「海」という特定テーマに絞った学習を一方的に浸透させようすることは、現場教員の負担をさらに増やすことが予想され、また海洋以外にも多くの業界から同様のアプローチを受けていることを考えると、一方的な業界側からのアプローチのみでは現場に混乱を与えてしまうことも懸念される。
 いま必要とされているのは、それぞれが闇雲にアプローチしようとする姿勢ではなく、教育現場に歩み寄ろうとする外部機関と、外部機関に協力を求めようとする教育現場との相互理解の姿勢であり、真の意味での連携体制の構築が求められているのではなかろうか。
 
SOF海洋政策研究所のめざすもの
 以前から、当財団を含め海洋関係の公益法人や団体等で、海洋・海事に関する教育支援事業が実施されてきた。これらの事業の多くは主に自然観察、体験教室、展示・展覧会といったイベント的要素の強い内容であったが、それぞれ多くの参加者を集め海に触れる場を広く一般に提供するという意味で成果を上げてきた。しかしながら学校教育の中に継続的に取り入れられた例は少なく、特に通常の学習の一単元として活用されている例はほとんどないのが現状である。学校教育と外部機関の体験学習的なものを同一で扱うことは必ずしも適当とは言えないが、教育機関との有機的な連携という点では足りない部分があったことは否めない。
 海洋教育(定義は曖昧だが)と呼ばれるものを学校教育の中で普及浸透させていくためには、現行の教育システムを考慮した学習体系の構築と、実践を通じたその教育的効果の検証が必須である。海洋を扱う機関側としては海の学習が重要であることを認識しているが、これはあくまで海洋関係業界側の論理である。仮に学校という場で教育活動として展開するうえでは、身に付けさせるべき能力とその教育的手法としての海洋教育、という部分を明確にしてゆくことが求められてくる。
 SOF海洋政策研究所は本事業の取り組みを通じて、多くの海洋関係機関が実施している教育支援活動のそれぞれが、学校教育の中のどの部分に活用でき、またそれによってどのような能力を身に付けることができるか、これらをどう組み合わせることで総合的な学習体系としての海洋教育を展開できるか、その具体像を見出すことが出来ればと考えており、またそれが公益法人である海洋政策研究所というセクターの役割と捉えている。
 
これまでの経過と今年度の目標
 平成14年度の調査終了時点で、我々は海洋教育の普及・定着には、学校と外部機関との有機的な連携が不可欠であり、その連携の仕組みを構築することが優先テーマであることを認識した。その理由として、教育のうえで重要な要素である「良い人材」も「良い教材」も、「良質な場」がなければ十分に機能しないからである。
 そのような場を創造するためには、学校の教員と外部機関の専門家とがそれぞれの立場を主張するだけでは解決の糸口は見えないはずある。それぞれの立場を認識したうえで、海洋教育の普及・定着という共通目標を設定し、協働で作業することが必要となる。
 我々はこのような作業を通じ、海洋教育に理解のある「良い人材」の育成と、学習をより効果的なものにするための「良い教材」の提供、そしてこれらが有効にかつ継続的に機能しうる「良質な場」をいかに創造するか、という3つの要素が見出せるのではないかと仮定した。
 そこで3年計画の2年目である今年度は、小学校に対象を絞り、実際に教員と協働で作業を進めるための環境作りとして、学校という機関の仕事の進め方、物事の考え方、用語の使い方、評価の考え方など、学校教育現場の詳細な環境を把握するとともに、そのような場にはどのようなアプローチが最も有効なのか、「ワークショップの開催」・「ケーススタディの実践」・「フィールド巡検」という3つの手法を計画し、実践の中からその手法の有効性の検証を試みた。
 
手法
1. ワークショップの開催
ねらい:上記の3要素を創造するモデルとして、「人材育成」・「教材作成」・「場の創造」を個別ではなく、これらを同時に体験しながら向上を目指すものとしてOHPモデル(Opportunity-Human-Product Model)の実践を試みることとした。これは(1)海を知る場の提供(知と経験の共有)→(2)場の中でプログラムを作成(事例の創造)→(3)プログラム実践(事例実践)→(4)成果の共有(知と経験の蓄積)を1サイクルと考え、これを重ねることでスパイラルアップ式に人材の育成と教材の充実を図り、同時に場を活性化させようというものである。
実施方法:今年度は教員側の考え方や環境の詳細を把握するため、対象を小学校の現役の教員に限定し通年で6回のワークショップ形式とした。内容は最終回までにひとつのプログラムを作り上げることを目標に掲げ、各回毎に目的を持ったアクティビティを設定し、それに即した話題提供を海洋関係の専門家が行う形式とした。そしてこの一連の活動を通じ、OHPモデルの具体化に求められる様々な課題を抽出することとした。
 
想定成果:<教員側>海の学習に対する認識向上 海の教育的価値の拡大
     <運営側> 教員の海に対する意識 教育現場の諸環境の把握 教育側の論理
 
2. ケーススタディの実施
ねらい:実際に海に触れて学ぶことの効果と、それに対する負担について知る。
また、それについて学校側がどう考えるか詳しく知る
海浜学校、臨海学校の位置づけの把握と、通常学習との関連を把握
実施方法:目黒星美学園小学校の海浜学校を同行調査する
目黒星美学園小学校5年生の児童に対し、干潟学習を実施する
想定成果:<教員側>海を学ぶこと、海を通して学ぶことの有用性を知る
     <運営側>学校における野外活動やその準備の詳細を知る
       海の学習を学校や教員がどう捉えるのかを知る
 
3. 教員向けフィールド巡検の実施
ねらい:フィールド巡検は海を学ぶうえで効果的な方法として各地で実施されており、海に関心のある市民に好評を得ていることから、海に理解のある教員を育成するための手法として注目し、教員を対象にフィールド巡検を実施することで、どのような内容が有効か、資料として何が必要か、運営面での注意点等を抽出するとともに、海に対する教員の視点や学習展開の糸口を見出す。
実施方法:ワークショップの1コンテンツとして実施するとともに、別途機会を設けて実施する。
想定成果:<教員側>教員の海に対する意識の度合いについて知る
       学習テーマとしての位置付け方を想定する
     <運営側>ストーリーの立て方を検証する
       配付資料の必要条件を検証する
       安全面の確保について検証する
*各手法の実施結果と内容については別添資料参照







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