6.付録リスト
付録−1:生物出現状況調査用のガイドブックとチェックリストについて(付表1)
付録−2:一次検査用の判定基準(改訂版)と参考事例(付表2-6)
付録−3:全国の閉鎖性海湾における底層水の溶存酸素濃度に関する調査の実施状況(付表7)
付録−1: 生物出現状況調査用のガイドブックとチェックリストについて
(1)「生物フィールド観察ガイドブック」
「生物フィールド観察ガイドブック」は、生物出現状況に関する現場調査の準備から調査方法まで、調査の一連の流れがわかるように作成する。記載内容は、生物種名を特定するだけではなく、その生物種が生息することによってその場の環境に果たしているさまざまな役割(例えば、濾過、分解などの浄化に関する機能、基礎生産など)や生態系の仕組みにも簡単に触れるものにする。
また、従来の図鑑にない浄化機能別の生物分類や、貴重性や外来性、人の利用など生態系の安定性に関わる内容についても記載する。
目次案
1. 準備しましょう
調査に最低限必要な道具、事前に調べておく情報(気象・潮位等)
2. 海岸へ行きましょう
調査場所の選び方、事故等気を付けるべき事
3. 調査をしましょう
生物の探し方、海岸での一般的な生き物の紹介(下例参照)
4. 記録しましょう
チェックシートの使い方、記録の仕方
例)
水をきれいにする生物の仲間
a. アサリ
詳細情報
多くみられる場所 |
貴重さ |
在来?外来? |
人の利用 |
北海道から九州 |
干潟から浅場
河口に多い |
普通 |
在来 |
食用 |
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(2)生物チェックリスト
生物の生息状況調査は各海湾における生態系の安定性を診断する際の一項目である。したがって、生物チェックリストは、生態系の安定性の程度が表現できる内容にする必要がある。生態系の安定性を示す指標として、下図の3項目(多様性、希少性、撹乱度)を考える。
各指標におけるチェック内容は次のとおりとする。
多くの種類の生物が住んでいること
多くの種類が海に生息していれば、ある種類がその海から消えた時に、その生態的な位置に他の種類が入り込んで安定した生態系に戻る可能性が高い。したがって、多くの種類の生物が生息する海の生態系は安定性が高いものと推測できる。
そこで、海で普通にみられる生物をチェックし、その総種類数をもとに生態系の安定性を評価する。なお、上記の種類数はここでは海岸域(岩礁、砂浜、干潟、人工護岸)でみられる生物を主な対象とする。
貴重な種類が住んでいること
貴重種とは本来繁殖力が弱く個体群自体が小さい種類や現在の環境条件や生物的な競争などの制約によって減少した種類などと考えられる。したがって、貴重種が生息する海は弱い種の個体群を存続させる環境として良好と言える。
ガイドブックを参考にして生息が期待される貴重種の有無をチェックし、その種類数をもとに生態系の安定性を評価する。なお、主な観察対象は海岸域(岩礁、砂浜、干潟、人工護岸)でみられる生物とする。
外来種が少ないこと
近年、海域の生態系では外来種の移入による在来種の駆逐などの生態系の撹乱が大きな問題となっている。したがって、外来種ができるだけ少ない方が生態系の安定性は高いと考えられる。
ここでは、ガイドブックを参考にして出現が予想される外来種についてチェックし、外来種の有無により生態系の安定性を評価する。なお、主な観察対象は海岸域(岩礁、砂浜、干潟、人工護岸)でみられる生物とする。
その他の留意点
以上のような考え方にしたがって生物チェックリストを作成するが、全国的に健康診断を行うにあたっては、生物地理学的な違いにも留意する必要がある。
すなわち、気候や沿岸を流れている海流の影響が場所によって大きく異なっているため、日本全国で一律に同じ種類の生物がみられる訳ではない。したがって、生物チェックシートはそうした地域性を踏まえたものにする必要がある。ここでは、生物チェックシートを北海道・東北・関東〜九州・沖縄の4つの区分についてそれぞれ用意することにする。
以上を総合的に考慮して、生物チェックシート案を作成し付表1に示す。
生物の生息状況についての診断は普通にみられる種類(チェック1)での診断を基本とし、それに貴重種のチェック及び外来種のチェックによる追加診断を加えて総合的に判定することとする。
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