日本財団 図書館


3.3.2 海洋構造と貧酸素水の分布・変動
(1)水温・塩分の分布と変動
 2002年6月〜9月の大村湾縦断面(図3.2.1のLライン)における水温、塩分、σtの鉛直断面図を調査時ごとに図3.3.5a-eに示す。湾口部に最も近いL1ではいずれの調査日もよく鉛直混合していたが、湾内は8月を除くと成層化していたことが分かる。また、6月21-22日と7月12日にはL3から湾奥までの底層に低温水域(20〜23℃)が広がっていたが、9月2-3日にはこの低温水域は消滅していた。塩分も水温と同様に湾口で鉛直的によく混合しており、湾内には弱い成層が見られた。6月21-22日を除けば、2002年の夏季の塩分は湾全域で塩分32.0以上と高めであった。さらにσtの鉛直断面図を見ると、6月21-22日以外は湾内に密度成層があまり発達しておらず、湾口部の海水が湾内の底層付近に広がっている様子がうかがえる。
 一方、2003年について同様の鉛直断面図を作成し、調査時別に図3.3.6a-gに示す。2002年と同様、湾口では鉛直混合し、湾内は成層化していた。底層の低温水域(20〜25℃)は、6月21日には湾奥からL5付近まで、さらに7〜8月はL3まで広がり、その後、9月18日にはL7付近まで後退した。10月には低温の底層水は出現しなかった。一方、塩分は2002年とは大きく異なり、6〜8月にかけては湾内全域で表層水が低塩分化し成層が発達していた。9月18日には成層は弱まり、10月29日には鉛直的によく混合していた。またσtの鉛直分布を見ると、湾口部の密度と等密度の海水は6〜8月には主に湾内の中層に分布していたが、9月18日には中層から底層付近まで広く分布していた。なお、2002年、2003年ともに、大潮期には湾口付近の海水は鉛直方向によく混合しているのに対して、小潮期には弱く成層する傾向が認められた。
 湾口部の海水とほぼ等しい密度が2002年には湾内の底層付近、2003年は中層に見られたことから、湾口に最も近い観測点L1と湾北西部に位置するL5についてそれぞれT-Sダイアグラムを作成した(図3.3.7a,b)。その結果、2002年には大潮期におけるL1の密度はL5の20m以深の底層水とほぼ一致したのに対して、2003年には6月と9月以外はL1と等密度の水はL5の中層に分布した。またこのT-S図からも両年ともに小潮期には湾口部での鉛直混合が弱いことがうかがえる。
 
図3.3.5a 2002年6月21-22日(中潮期)L lineの観測結果
水温(左上)、塩分(右上)、DO(mg/L)(左下)、σt(右下)、横軸が測点、縦軸が水深(m)
 
図3.3.5b 2002年7月12日(大潮期)L lineの観測結果
水温(左上)、塩分(右上)、DO(mg/L)(左下)、σt(右下)、横軸が測点、縦軸が水深(m)
 
図3.3.5c 2002年8月10-11日(大潮期)L lineの観測結果
水温(左上)、塩分(右上)、σt(右下)、横軸が測点、縦軸が水深(m)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION