(3)バリアフリー化に関する対応状況
(1)バス車両
■乗降口や通路幅員、床面の高さは、半数以上が未対応。リフトや車いすスペースもほとんど設置されておらず、車いすでの乗車は困難な状況。情報提供設備は約半数に設置
対象路線で使用される車両のうち、主要な車種のバリアフリー化の状況を整理したものが表4-3-3である。
乗降口についてみると、80cm以上の有効幅を確保しているものは3車種、またスロープ板があるものは2車種である。リフトを設置している車両は本土、離島部ともにない。本土で使用されている車両では、乗降口の有効幅や、スロープ板の使用に一部対応しているが、離島部では、徳之島において、80cm以上の有効幅を確保しているものが1車種あるほかは、全く対応がなされていない。
床面については、地上面からの高さが「移動円滑化基準」に定める65cm以下のものは、本土で使用されている2車種のみであり、離島部では全く対応がなされていない。床の滑りにくい仕上げについては、本土で使用されている3車種と、離島部において、下甑島で使用されている1車種を除く計6車種で対応がなされている。
通路の有効幅についてみると、80cm以上の有効幅を確保しているものは、全体の1/4にとどまっており、手すりについても対応があるのは全体の約4割となっている。離島部においては、岩崎バスの運行する車種に、手すりが設置されている。車内に車いすスペースを設けているものは本土の2車種のみで、離島部では全く対応がない。
案内設備についてみると、本土で使用されている車種には、いずれも文字運行情報提供設備、音声運行情報提供設備、車外用放送設備が設置されている。一方、離島部では、上甑島と徳之島において、各案内設備を備えたバス車両が運行されているが、離島部全体では設置は半数以下にとどまっている。
表4-3-3 本土・離島別にみるバリアフリー対応バス車種数
|
本土 |
離島 |
全体 |
車種数 |
3 |
|
8 |
|
11 |
|
乗降口 |
乗降口の有効幅(80cm以上) |
2 |
100% |
1 |
17% |
3 |
38% |
スロープ板 |
2 |
67% |
0 |
0% |
2 |
18% |
リフト |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
床面 |
地上面からの床面高さ (65cm以下) |
2 |
67% |
0 |
0% |
2 |
22% |
滑りにくい仕上げ |
3 |
100% |
6 |
86% |
9 |
90% |
通路 |
通路の有効幅(80cm以上) |
2 |
100% |
0 |
0% |
2 |
25% |
手すり |
3 |
100% |
1 |
14% |
4 |
40% |
車いすスペース |
2 |
67% |
0 |
0% |
2 |
20% |
案内 |
文字運行情報提供設備 |
3 |
100% |
4 |
50% |
7 |
64% |
音声運行情報提供設備 |
3 |
100% |
3 |
38% |
6 |
55% |
車外用放送設備 |
3 |
100% |
3 |
38% |
6 |
55% |
|
注1)各項目の比率(%)は、当項目に回答のあった車種数に対する比率であり、「車種数」欄の数値に対する比率ではない。
注2)「移動円滑化基準」では、乗降口や通路等の有効幅を80cm以上としていることから、幅に関する項目については、80cm以上のものを対応済として計上した。同様に床面の高さについては65cm以下としていることから、高さについては65cm以下のものを対応済として計上した。
表4-3-4 バス車両におけるバリアフリー化への対応状況
|
車種名 (メーカー・ 型式) |
乗降口 |
床面 |
通路 |
車いす スペース |
案内 |
乗降口 の有 効幅 |
スロープ坂 |
リフト |
地上面か らの床 面高さ |
滑りに くい仕 上げ |
通路 の有 効幅 |
手すり |
|
文字 運行 情報 提供 設備 |
音声 運行 情報 提供 設備 |
車外用 放送 設備 |
本土 |
鹿児島市 交通局 |
いすゞ |
100.5 |
あり |
なし |
33.5 |
対応済 |
83.0 |
あり |
あり |
あり |
あり |
あり |
いすゞ |
100.5 |
あり |
なし |
33.5 |
対応済 |
83.0 |
あり |
あり |
あり |
あり |
あり |
林田バス (株) |
|
|
なし |
なし |
65以上 |
対応済 |
|
あり |
なし |
あり |
あり |
あり |
離島内 |
上甑島バ ス企業団 |
三菱自動車 |
|
なし |
なし |
|
|
|
|
なし |
あり |
あり |
あり |
下甑村自 動車運送 事業 |
三菱・ KC-BE632G |
67 |
なし |
なし |
67 |
対応済 |
31 |
なし |
なし |
なし |
なし |
なし |
三菱・ KK-BE63EG |
68 |
なし |
なし |
66 |
対応済 |
32 |
なし |
なし |
なし |
なし |
なし |
日野・ U-RR3HGAA |
70 |
なし |
なし |
79 |
未対応 |
37 |
なし |
なし |
なし |
なし |
なし |
日産・ KK-BHW41 |
67 |
なし |
なし |
69 |
対応済 |
37 |
なし |
なし |
なし |
なし |
なし |
(株)岩 崎バス |
|
|
なし |
なし |
|
対応済 |
|
あり |
|
あり |
なし |
なし |
徳之島総 合陸運 (株) |
日野 RX4JFA |
68 |
なし |
なし |
68 |
対応済 |
32 |
なし |
なし |
あり |
あり |
あり |
三菱 MK619J |
80 |
なし |
なし |
85 |
対応済 |
32 |
なし |
なし |
あり |
あり |
あり |
その他 |
桜島町営 バス |
日野 |
130 |
なし |
なし |
|
未対応 |
110 |
なし |
なし |
なし |
あり |
あり |
日野 |
130 |
なし |
なし |
|
未対応 |
110 |
なし |
なし |
なし |
あり |
あり |
いすゞ |
110 |
なし |
なし |
|
未対応 |
110 |
なし |
なし |
なし |
あり |
あり |
|
(2)バスターミナル
■段差の解消や、移動経路における手すりの設置、車いすでの開閉・通過に対応した戸はほとんど未対応。ホーム・乗降場における転落・進入防止装置、点字案内板等の視覚障害者用設備は、全く設置されていない
対象路線が発着しているバスターミナルのハード面でのバリアフリー対応を、本土・離島の別にみたものが表4-3-5である。
ターミナルの出入口についてみると、90cmの有効幅の確保と、車いす使用者に対応した段差解消の両方を満たしているのは、離島部の岩崎バス本社のみである。
ホーム・乗降場における設備は、車いすで円滑に乗降できる設備、視覚障害者の転落・進入を防止する設備ともに全く未対応である。
便所はいずれのターミナルにも備えられているが、床置式小便器や身障者用便所についても、設置しているのは本土の1ターミナルのみである。出入口の段差の解消や、乗車券販売所での車いす対応、車いすでの利用に適したカウンター設置がなされているのは、岩崎バス本社のみである。
休憩所は、多くのターミナルに設置されている。また、各設備間の移動経路における高低差が解消されているのも岩崎バス本社のみで、車いすでの開閉・通過に対応した戸や手すりは全く設置されておらず、床の滑りにくい仕上げについても、離島部のターミナルのうち、沖永良部バス企業団の和泊営業所以外では未対応である。
案内設備については、視覚障害者の誘導用ブロックや、点字案内板、触知図等の案内設備は全く備えられていない。主要設備の案内板等の案内設備を備えるターミナルは、徳之島総合陸運の亀津待合所のみ、運行情報提供設備を備えるターミナルは、本土の山形屋バスセンターと、離島部の上甑島バス企業団と亀津待合所にそれぞれ備えられている。
表4-3-5 本土・離島別にみるバリアフリー対応バスターミナル数
|
本土 |
離島 |
合計 |
ターミナル数 |
2 |
|
6 |
|
8 |
|
ターミナルビル数 |
1 |
|
1 |
|
2 |
|
出入口 |
出入口の有効幅(90cm以上) |
1 |
100% |
1 |
50% |
2 |
67% |
車いす対応 |
0 |
0% |
1 |
25% |
1 |
20% |
ホーム・乗降場 |
車いすで円滑に乗降できる設備・構造 |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
視覚障害者の転落・進入防止設備 |
|
|
0 |
0% |
0 |
0% |
便所 |
便所 |
1 |
100% |
3 |
100% |
4 |
100% |
出入口(戸)の有効幅(80cm以上) |
|
|
1 |
50% |
1 |
50% |
出入口に段がないこと |
0 |
0% |
1 |
33% |
1 |
25% |
床置式小便器(手すり設置) |
1 |
100% |
0 |
0% |
1 |
33% |
身障者用便所 |
1 |
100% |
0 |
0% |
1 |
33% |
乗車券販売所等 |
乗車券販売所 |
1 |
100% |
2 |
50% |
3 |
60% |
券売機 |
1 |
100% |
0 |
0% |
1 |
20% |
待合所 |
1 |
100% |
4 |
100% |
5 |
100% |
案内所 |
1 |
100% |
2 |
67% |
3 |
75% |
出入口(戸)の有効幅(80cm以上) |
|
|
1 |
100% |
1 |
100% |
車いす対応 |
0 |
0% |
1 |
33% |
1 |
25% |
車いすでの利用に適したカウンター |
0 |
0% |
1 |
33% |
1 |
25% |
休憩所 |
休憩所の有無 |
1 |
100% |
3 |
75% |
4 |
80% |
上記設備間の床面の高低差 |
高低差の有無 |
1 |
100% |
3 |
100% |
4 |
100% |
高低差の解消 |
|
|
1 |
33% |
1 |
33% |
通路 |
通路(戸や傾斜路)の有効幅(140cm以上) |
1 |
100% |
0 |
|
1 |
100% |
車いす対応 |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
経路全般 |
手すりの設置 |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
床の滑りにくい仕上げ |
0 |
0% |
1 |
25% |
1 |
20% |
車いすでの開閉・通過に対応した戸 |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
案内設備 |
視覚障害者誘導用ブロックの敷設 |
|
|
0 |
0% |
0 |
0% |
運行情報提供設備 |
1 |
100% |
2 |
50% |
3 |
60% |
主要設備の案内板等の案内設備 |
0 |
0% |
1 |
25% |
1 |
20% |
点字案内板、触知図等の案内設備 |
0 |
0% |
0 |
0% |
0 |
0% |
|
注)各項目の比率(%)は、当項目に回答のあった車種数に対する比率であり、「ターミナル数」欄の数値に対する比率ではない。出入口、通路の有効幅については表4-3-3と同様、「移動円滑化基準」をもとに対応状況を区分した。
表4-3-6 バスターミナルにおけるバリアフリー化への対応状況
(拡大画面:47KB)
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(4)バリアフリー化に関するハード・ソフト面の対応
(1)ハード・ソフト面での対応状況
■多くの事業者では、特に取り組みなし
対象路線におけるバリアフリー化への取り組みとして、鹿児島市交通局バス事業課においては、ノンステップバスの導入や、音声合成放送装置の設置、LED行先表示、全区界表示運賃表示器の導入などが行われている。ソフト面の取り組み事例については、特に回答はなかった。
(2)従業員に対するバリアフリー化に関する教育・指導
■バリアフリー化に関する教育・指導を行っているのは、全体の約1/3
バリアフリー化に関する教育・指導を行っているのは4事業者で、全体の約1/3である。
*バリアフリー化対応の特別な教育:鹿児島市交通局バス事業課
*定期的な従業員教育の一部:鹿児島市交通局電車事業課
*入社時等の不定期な従業員教育:岩崎バス
*その他(社営業所会等での指導):奄美交通
教育・指導の具体的な内容としては、「交通バリアフリー法で定められた基準に適合したバス車両を導入する際に、車いす装着(車載装置)について研修を行う」(鹿児島市交通局バス事業課)や、「低床式車両への車いすの設置・固定方法について研修を行う」(鹿児島市交通局電車事業課)などの例がある。
図4-3-5 バリアフリー化に関する教育・指導(n=11)
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