第9章 実現に向けた課題の整理
ここでは、第8章で検討を行った循環資源等の海上輸送促進方策の実現に向けた課題を整理した。
9.1 リサイクル、輸送における官民の連携
(1)連携の必要性
循環資源の効率的かつ環境に配慮した輸送の実現のためには、輸送に関わる官民の関係者だけでは難しく、リサイクル企業や環境行政の参加が必要である。関東や九州離島などからの循環資源の海上輸送を行う前に、リサイクルの妥当性や事業性の検討、判断が求められるのである。また循環資源の輸送には、廃棄物処理法等の環境関連の法制度が係わっており、この点からも環境行政との連携を必要としている。
さらに、循環資源の輸送及びリサイクルに係わる北九州市、福岡県、国の関係する部署と民間企業との間での検討が必要であり、これら官民による連携が求められている。
(2)連携のあり方
今後の具体的な検討においては、循環資源の輸送及びリサイクルに係わる北九州市、福岡県、国の関係する部署と民間企業の関係者による検討が必要である。
個別の研究会、委員会での関係する官民の委員の参加や必要に応じた連絡・調整等が考えられるが、普段からの関係者の交流が重要である。
9.2 北九州リサイクルポート研究会の活動展開
(1)研究、活動組織の必要性
循環資源の海上輸送の促進のためには、港湾施設の整備や運営、輸送容器、様々な法的規制、集荷対策等について、民間(リサイクル企業、輸送企業)、行政(港湾、物流、環境)の専門家による具体的検討や活動が重要であり、そのための研究会の設置、運営が必要である。
(2)北九州リサイクルポート研究会
北九州リサイクルポート研究会は、民間(リサイクル企業、輸送企業等)、行政(北九州市港湾局、環境局、企画政策室)が参加し、「リサイクルポート事業の推進のため、北九州港での様々な課題の解決、戦略の構築を目指し」て平成15年8月に設置された。今後、北九州港における様々な循環資源の海上輸送の方策を検討、計画、推進する組織としての活動展開が求められるところである。
(3)取組項目案
本調査で提案された方策のうち、北九州リサイクルポート研究会において、検討、計画、推進されることが、特に求められる方策は以下の通りである。
・「公共埠頭の産業廃棄物荷役取扱基準」の再検討
・循環資源の海上輸送に係わる実証実験の実施
・効率的なコンテナ輸送の検討
・混載・帰り荷の集荷システムの検討
・「北九州エコブランド」の検討
9.3 リサイクルポート推進協議会との連携
(1)全国組織との連携の必要性
循環資源の輸送の促進のためには、北九州側における取り組みだけでは実現せず、全国的な取り組みや相手港湾などとの連携が必要なものもある。北九州側の事前の検討、取り組みに基づきながら、リサイクルポート推進協議会などの全国組織や東京湾や離島の港湾との連携の上で方策を進めていく必要がある。
(2)連携のあり方
リサイクルポートに指定された全国18港の港湾管理者、全国のリサイクル企業、輸送企業、業界団体などにより設立されたリサイクルポート推進協議会は、「リサイクルポートを核とし海上輸送を活用した静脈物流システムの事業化を推進し、循環型社会の構築に貢献することを目的」として、平成15年4月に設立され、循環資源の海上輸送に関する関係省庁への要望、各種セミナー、研究等が取り組まれている。北九州市は、この協議会のメンバーであり、北九州市長が会長である。北九州港での取り組みのうち、全国的なテーマとなるものについて、リサイクルポート推進協議会に諮っていくことが必要である。
一方、北九州港と循環資源の輸送を行う関東、九州離島、沖縄の港湾は、必ずしもリサイクルポートに指定されておらず、リサイクルポート推進協議会の会員ではない。従って、北九州港との循環資源の海上輸送の推進においては、個別に相手港湾と連絡、調整していく必要がある。
今後、リサイクルポートに指定されていない港湾であっても、静脈輸送に係わりの深い港湾や静脈輸送に関心のある港湾については、リサイクルポート推進協議会へ参加できる様に提案していくことも考えられる。
(3)取組項目
本調査で提案された方策のうち、全国的な組織、相手港湾との連絡、調整の上で取り組まれることが必要な方策は以下の通りである。
・相手港湾との循環資源の海上輸送の実証実験
・効率的なコンテナ輸送の検討
・港湾連携による海上輸送ネットワークの形成
9.4 情報公開
(1)情報公開の必要性
北九州エコタウン事業は、市民や内外の関係者へのリサイクル施設の公開等の徹底した情報公開に基づいて取り組まれてきたものである。本調査で検討、提案されている関東、九州離島などの広域からの循環資源の北九州への海上輸送の促進についても、情報を公開し、理解を求めていくことが重要である。
(2)情報公開の方法
既に実施されているが、循環資源の輸送に関する研究会等での検討の公開やセミナー、シンポジウムは、市民や関係者の理解を得ていくために必要である。また今後は、市民やエコタウン見学者への公共岸壁等の施設(整備プロセス、整備後の施設及び運用)の公開も求められる。
9.5 より早急な取組
(1)必要性
関東などからの循環資源の輸送・リサイクルは、北九州だけでなく、他のエコタウン(山口県エコタウン)やリサイクルポート(宇部、徳山港等)でも取り組まれており、大都市圏の循環資源のリサイクルを巡る競争は激化している。北九州が先進エコタウン・リサイクルポートとしての優位性を確保しつづけるためには、本調査において提案した方策を、より早急に、具体的に取り組む必要がある。
(2)実施スピードの確保
様々な方策を検討、具体化していく必要があるが、優先順位をつけるにあたって、官民のリサイクル、輸送に係わる関係者との連絡、調整しやすいものを優先させることも一つの方法である。また、方策の実施計画ではタイムスケジュールを示すことになるが、そのスケジュールに係わらず、調整、合意形成ができたものから順次、実施していくことも有効な方法である。
9.6 循環資源の海上輸送機能を活かした関連企業の誘致
(1)北九州エコタウン事業の拡大
本調査では、既に立地しているリサイクル企業を前提に、循環資源の海上輸送を検討、提案してきたが、今後は、充実した循環資源の海上輸送機能を活かした関連企業の誘致もターゲットになる。北九州エコタウン事業・第2期計画において着目されているように、従来からのリサイクル(再資源化)に加えて、リユース(再使用)、リビルド(分解再生加工)と資源循環産業も拡大しつつあるが、いずれも一定の取扱量、集荷のための輸送システムを必要としており、北九州港の循環資源の海上輸送機能が有利に働く可能性が高い。
(2)資源循環産業の誘致の可能性
成長が顕著である資源循環産業において、広域的な循環資源の海上輸送機能、および広大な敷地を有する北九州の優位性を活用できる業種として、パソコン・OA機器(リサイクル、リユース、リビルド)、中古建機、農機、産業機械(国際的リユース、リビルド)などが考えられる。本格的に循環型社会を形成しようとしているわが国においては、今後、多様な資源循環ビジネスの展開が確実であり、上記以外にも誘致可能な業種が考えられる。従って、その具体的な絞り込み、誘致の実現に向けた取り組みを行う必要がある。
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