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(説明)
 平成3年5月15日無線設備に関し船舶安全法が改正され、GMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)が平成4年2月1日から段階的に導入されている。
 次に述べる設備はGMDSS機器の概要を示したものであるが、これら性能等の詳細については、船舶設備規程、船舶救命設備規則、電波法関係規則等を参照のこと。
(1)ナブテックス受信機
 518kHzで送信される航行警報、気象警報、捜索救助情報等の海上安全情報を自動的に受信し、印字する無線設備である。
 情報の内容は、航行警報、気象警報等17に区分されている。
 海上安全情報のサービスエリアは海岸局から300〜400海里である。
(2)高機能グループ呼出受信機
 機能的にはナブテックス受信機と同様の海上安全情報をインマルサット静止衛星を経由して自動受信し印字する装置である。特定の船団の呼出しや一般公衆情報を受信する機能も備えている。
(3)デジタル選択呼出装置
 VHF、MF、HFによる通信をデジタル符号化することにより特定の船舶局又は海岸局を選択して自動的に呼出しをする装置である。呼出しを受信した場合は警報を発し、呼出しに含まれる情報は表示される。それぞれVHF、MF、HFの無線電話に付属させ、又は最初から無線電話に組込まれている。
(4)デジタル選択呼出聴守装置
 デジタル選択呼出装置の受信機能のみを有する装置である。
(5)狭帯域直接印刷電信
 デジタル符号を用いて自動的に相手局に接続し、通信文書を送受信するためのテレックス装置である。
 MF/HF無線設備又はインマルサット無線設備に接続される。
(6)インマルサット無線電話
 インマルサット静止衛星を使用し、遭難通信を含む情報を船舶と陸上との間で直接交信する装置である。4個のインマルサット衛星は赤道上約36,000kmの静止衛星軌道であって、東・西大西洋、インド洋及び太平洋上にあり、極地域を除く全世界的な通信有効範囲をカバーしている。
(7)極軌道衛星利用非常用位置指示無線標識装置(EPIRB)
 船舶が遭難した場合、コンパス・サーサット極軌道衛星を経由して陸上局に遭難の発生を送信する装置である。浮揚型と非浮揚型があり、浮揚型は手動発信のほか船舶から自動離脱して浮揚し自動的に発信される。非浮揚型は手動発信の機能のみを有し船橋等に装備される。
(8)レーダー・トランスポンダー(SART)
 船舶又は航空機に装備されている9ギガヘルツ帯のレーダー電波を遭難船又は生存艇上のレーダー・トランスポンダーが受信して、そのレーダー電波を送信し返し、それを船舶又は航空機のレーダー映像面上に発信位置を一列の輝点で表示させるホーミング装置である。船舶からのレーダー・トランスポンダーの探知距離はSARTの海面上の高さ及びレーダーの空中線の高さにより変り、数海里であるが、航空機ではさらに遠くから遭難者を発見できる。
(9)双方向無線電話装置
 船舶が遭難した場合、遭難船舶と生存艇間、生存艇相互間、生存艇と救助船間で遭難現場通信を行う小型の無線電話である。
 常時は、操舵室などに格納しておいて非常の際に持ち出して使用する持運び式と予め生存艇に固定装備するものとがある。
 GMDSS設備の搭載要件については、船舶の種類(条約船、非条約船)、航行水域(A4〜A1)等の条件によりその内容が異なる。
 ここで、A1水域とは、海岸局との間でVHF無線電話で通話ができ、かつ、海岸局に対してVHFデジタル選択呼出装置による遭難呼出しの送信ができる水域である。(約25海里の水域)
 日本においてはA1水域の具体的な水域は定められない。また、国外の水域についてはSOLAS条約に加盟している当該国の政府がこれを定めることとなっている。
 A2水域とは、海岸局との間でMF無線電話で通話ができ、かつ海岸局に対してMFデジタル選択呼出装置による遭難呼出しの送信ができる水域である。(約150海里の水域)
 具体的な水域は、平成5年10月28日付けの運輸省告示で示されている。また、国外の水域についてはSOLAS条約に加盟している当該国の政府がこれを定めることとなっている。
 A3水域とは、インマルサット直接印刷電信又はインマルサット無線電話により、海岸地球局と通話を行うことができる水域である。(約北緯75度から南緯75度までの水域)
 具体的な水域は平成4年1月28日付けの運輸省告示で示されている。
 A4水域とは、A1水域、A2水域及びA3水域以外の水域(主に極地)をいう。
 GMDSS設備の搭載要件及び導入スケジュールについては「資格更新研修用テキスト(弱電用)」を参照のこと。
(船舶設備規程の一部改定に伴う経過措置)
第2条 1.〜4. (略)
5. 平成7年現存船(国際航海に従事しない総トン数300トン以上500トン未満のものに限る。)については、新規程146条の12(航海用レーダーの備付け)の規定にかかわらず、第1条による改正前の船舶設備規程(以下「旧規程」という。)の規程の例により施設することができる。
6.〜9. (略)
10. 平成7年現存船については、新規程第299条(非常電源)(同条第2項第5号から第9号までに掲げる設備に係る規定に限る。)及び第300条(非常電源)(第299条第2項第5号から第9号までに掲げる設備に係る規定に限る。)の規定は、適用しない。
11.〜12. (略)







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