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平成15年度 通信講習用 船舶電気装備技術講座(レーダー、機器保守整備編)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


4・4 空中線と導波管
 空中線は、導波管又は給電線に伝わる電力エネルギーを空間に電磁波の形として発射したり、また、受けたりする装置をいう。
 送信機のマグネトロンで発振した送信出力は、そのままでは空間を伝搬しにくいので、空中線によって電磁波の形にして空間に発射する。実用面では空中線を回転させるので、導波管も回転させる必要があり、このため、回転部分には円形導波管を使用している。そして、この回転する円形導波管と固定の導波管との変換部分には、ロータリージョイント(図4・16参照)と呼ばれるものを使用している。
 アンテナは、そのほとんどが可逆の定理が適用できるので、同一の周波数においては送受信とも同じ能率で使用できる。
 レーダー空中線の重要な特性の一つに、方位分解能を決める指向性となるメインローブとサイドローブとの比率の性能がある。指向性が良すぎても、サイドロープレベルが大きいと偽像を生ずることになる。
 
図4・16 ロータリージョイント
 
 アンテナの指向性は、アンテナの開口面の長さが関係している。つまり、鋭い指向性を作りだすためにはそれだけ長いアンテナが必要となるわけである。指向性の指標となるビーム幅は、アンテナの長さと使用する電波の波長との間に次の略算式がある。
 
 
 例えば、220cmの長さのXバンドのレーダー・アンテナでは波長を3.2cmとすると、ビーム幅は約1°となり、50cmの長さの小型レーダー・アンテナでは約4.5°となる。
 アンテナの形状には、小さなダイボール空中線を配列したものや放物面状の反射板を使用したものがあるが、このうちのダイボール空中線を配列したものと同等のスロットアレイ空中線が現在では航海用レーダーに最も広く用いられている。
 
 導波管の一側面に一定の間隔をおいてスロットを斜めに切り込んで、そこから電波を発射させる。1個のスロットから発射される電磁エネルギーは少量なので図4・18のようにスロットを多数設け、アレイとして並べることで鋭い指向性を作り出している。このようなアンテナをスロットアレイ空中線と呼んでいる。スロットアレイには、方形導波管の狭い面(H面)にスロットを切ったものと、広い面(E面)にスロットを切ったものとがあるが、前者が水平偏波、後者が垂直偏波の空中線となる。
 水平偏波用のスロット・アレイ空中線では、導波管内部の電磁界の状態は図4・17(a)に示すようになっており、導波管内壁の電流分布は点線で示す通りである。この電流分布を斜めに切り込むことでギャップに生じた電界によってこのギャップから電磁波が発射される。また、この角度θが大きいほど発射される電磁波は大きくなり、逆にθ=0で発射は零となる。発射される電界ESは、水平方向の電界EHと垂直方向の電界EVとから成っている。図4・17(b)に示すように、隣接したスロットの間隔をλg/2とし、各スロットを逆の傾きで切っておくと垂直成分は互いに打ち消し合い、水平成分のみが相加わって水平偏波の空中線となる。〔図4・17(b)参照〕
 
図4・17 スロットの空中線における電界と磁界の状態
 
 このように集中した鋭いビームを得るためには、多数のスロットを一つずつλg/2の間隔で、それぞれ逆方向の傾きにして、中央部で傾斜角を大きくし、両端ではこれを小さくする。〔図4・18(a)参照〕
 電磁波のエネルギーはスロットを設けた導波管の一方の側から給電するが、給電側と反対側の終端は、最後のスロットからλg/4のところに吸収体を設け、空中に放射したエネルギー以外のものはこの吸収体で吸収して、無反射の状態とする。このように、終端を無反射にすると、スロットの数が少なくても鋭いビーム幅を作ることができるので空中線の長さを短くすることができる。しかし、周波数特性が悪くなる欠点もある。
 垂直ビーム幅は、スロットの上下にホーン状に開口させた金属板を設け、その角度によって決められる。〔図4・18(b)参照〕
 
図4・18 スロットの空中線の構造
 
 送信機から空中線への伝送線路としては、5GHzと9GHzのレーダーでは導波管が用いられているが、周波数が3GHz以下になると同軸管が多く用いられている。これは、周波数が低くなるに連れて導波管の寸法が大きくなり工事やスペースに支障が増えるからである。一方、同軸管は中心導体を中心位置に保持するため、外部導体との間に誘電体を入れる必要がある。3GHz以上の周波数になるとこの誘電体による損失が多くなりその損失による発熱のために扱い得る電力も限られるからである。そこで、この損失の原因となる中心導体を取り去り、中空の金属管として、マイクロ波の伝送線路にしたものが導波管で伝送中の損失が少なく、かつ大電力を扱うことができる。
 導波管及び同軸管については、第3章の3・9節に記述してあり、また、それらの取扱いについては、装備艤装工事編第2章の2・3・5項と第3章の3・5節〜3・8節に述べられているので、これを参照されたい。







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