4.2 送信機
レーダーでは、図4・5に示すように極めて短い時間(一般にショートレンジで0.08〜0.1μs、ロングレンジで0.6〜1.3μs)だけ、一定振幅のマイクロ波を繰り返し送信する。このような電波をパルス波といい、パルスが送出されている時間をパルス幅、一つのパルスが発射され、引き続いて次のパルスが発射されるまでの時間をパルス繰り返し周期という。
図4・5 送信電波
送信部の動作はトリガ信号によって始まる。このトリガが加えられるとサイリスタ(SCRという以下同じ。)又はサイラトロンが所定の時間幅だけONになってスイッチの作用をし、その時間幅をもった高電圧のパルスがマグネトロン加えられると、マグネトロンは非常に高い尖頭出力で発振することになる。
レーダーのすべての動作はトリガを動作開始の基準としている。トリガ回路は送信部と表示部の動作を同期させるための同期信号としてトリガパルスを発生するが、この同期信号の周波数がパルス繰り返し周波数(PRF)となる。いま1秒間に1,500回ずつ(パルス繰り返し周波数1,500Hz)トリガパルスが出たとすれば、このトリガによりサイラトロンやサイリスタがONになってマグネトロンが発振する。同時にこのトリガにより、表示器のブラウン管(CRT)上を走査する掃引線(スイープ)も同期して1パルスごとに1回ずつブラウン管の中心から端までスイープすることになり、スイープの基点はブラウン管の中心と一致することになる。
トリガパルスを発生する回路にはいろいろある。最近の送信出力10kW程度のレーダーでは、直流12〜24Vを電源とするものが多く、このような機種では電源回路を小型化するために発振周波数の高いDC-DC電源が使用されている。また、この発振周波数を1,000〜2,000Hzとして、この発振周波数からトリガパルスを作る電源同期方式のものが多い。この回路の一例として電源の発振周波数1,500Hzの場合のブロックダイヤグラムを図4・6に、タイミングチャートを図4・7に示す。
図4・6 トリガ回路のブロックダイヤグラム
図4・7 タイミングチャート
ショートレンジかロングレンジかによって、1,500Hzの電源周波数をリレーで選択する。ロングレンジの場合は1/3分周回路を通って500Hzに分周され、パルス発生部で、送信へのトリガとしてサイラトロン又はサイリスタを駆動するのに必要なパルス幅を、500Hzの波形の立ち上がりに同期して作る。このパルスはサイラトロンやサイリスタをONとして高圧パルスを作る役目をするので、送信トリガと呼んでいる。実際には、送信トリガで高圧パルスを作り、マグネトロンを発振させて空中線から電波の出る時間と表示器に入ったトリガによってブラウン管のスイープが始まる時間とを一致させる必要がある。もし、このスタートの時間が一致していないと誤差を生じることになるので、ゲート幅を可変できる遅延ゲートを設けて、送信トリガとの時間差を調整できるようにしてある。
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