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4・9・4 表示器(付加装置を含む)
(1)空中線部の回転と表示面上のスイープが同期していることを確認すること。
(a)輝度を適当な状態においてスイープの回転を観察し、引っ掛かりがなく、滑かにかつ、空中線部と同期して回転していることを確認する。
(b)輝度を適正な状態においたときに、スイープの中心がカーソルの中心に一致していることを確認する。
(c)PPI型CRT式表示器では、スイープの中心が完全な点の状態で、微小円運動や、みそすり運動をしていないことを確認する。
(d)ラスタースキャン式表示器では、地磁気等の影響による画面ひずみ、位置ずれ、色ずれなどが発生していないことを確認する。
(2)表示面の輝度、感度、同期調整に異常がないことを確認すること。
(a)感度調整つまみを最小位置から最大位置まで動かして、ノイズや物標の映像の変化を観測しながら感度の効果を確認する。
(b)感度調整つまみを適当な位置にしておいて、物標の映像を観測しながら同調つまみを操作して、映像が鮮明に観測できることを確認する。
(c)同調した状態での同調つまみの位置がほぼ中央にあり、かつ、同調メーターが設けられている機器では、メーターの指針が規定の状態(最大又は最小)に振れていることを確認する。
(d)同調した状態でつまみの位置が偏っている場合には、同調つまみをほぼ中央に置き、送受信部などの内部にある調整箇所を機器の調整要領に従って、映像感度が最良となるように再調整する。
(e)甲種においては、感度・輝度等を自動調整する装置を備える場合は、それぞれの装置が作動中であることを表示することができ、かつ、その作動を中止することができることを確認する。
(3)表示灯の点灯状態、及び照度の調整範囲に異常がないことを確認すること。
(4)船首輝線が±1度以下の誤差で、かつ、幅が0.5度以下の線により表示されていること。表示面の端まで表示することができること。また、この線を一時的に消去できることを確認すること。
(a)船首輝線の幅を、CRTの外周にある固定方位目盛で測定して、輝線の幅が0.5度以内であることをすべての距離レンジについて確認する。
(b)船首輝線にカーソルを合わせ、これをCRTの外周にある固定方位目盛で測定して、船首方位に対して±1度以下であることを確認する。
(c) (b)号の調整は、(12)項の方位の調整が終わってから再度行うこと。
(d)船首輝線の幅は、自動制御機能のない機器では輝線の照度とも関係があるので、各距離レンジとも適当な明るさを保つように留意する。
注1: 船首輝線の幅の調整は、指示器の内部に設けられている調整箇所(ボリウムなど)を操作して行う。
注2: 船首輝線の調整は、空中線ペデスタル部にあるマイクロスイッチ、又はフォトカプラなどの取付台の締め付けを緩め、少しづつ取付位置を変えて調整する。このときには、空中線側と表示器側とにそれぞれ人員を配し、連絡を取り合いながら行うようにした方がよい。
注3: 機種によっては、表示器のみで調整する方式のものもあるので、それらは個々の調整要領によって行うこと。
(5)FTC(雨雪反射妨害除去回路)及びSTC(海面反射抑制回路)が適正に作動することを確認すること。この場合において、甲種レーダーについては、これらの装置のつまみを左回り一杯にしたときに当該装置による効果が無効になることを併せて確認すること。
(a)FTCについては、感度を適当に調整し、雨や雲あるいは適当な物標の映像を観測しながら、FTCつまみを操作してその効果を確認する。
(b)STCについては、距離レンジをほぼ中間レンジに設定し、かつ、感度を最大においた状態でSTCつまみを操作して、主として近距離の範囲(例えば3〜6海里)でその効果を確認する。
(6)各距離レンジについて、その表示範囲、固定電子距離環数が適正であることを確認すること。また、固定電子距離環の間隔を計測し、偏差が5%以下であることを確認すること。甲種においては、オフセンター機能を有する場合は追加の電子距離環の表示を確認するとともに、固定電子距離環の幅が船首輝線の幅以下であることを確認すること。
(7)使用中の距離レンジ、固定電子距離環及び可変電子距離環の位置が、数字により明確に表示され、かつ、適正であることを確認すること。また、甲種の可変電子距離環は、表示された物標の距離を5秒以内に測定できることを確認すること。
(a)レンジスイッチを操作し、各距離レンジについてその表示に異常がないことを確認する。
(b)可変電子距離環については距離を変えながら、数字の表示が円滑に変化することを観測する。
(8)固定電子距離環、可変電子距離環及び電子方位線は、輝度を調整することができ、かつ、消去できることを確認する。ただし、甲種においては、それぞれ独立に消去できることを確認すること。
(9)1の距離レンジについて、船の全周にわたり、できるだけ多くの物標により、固定電子距離環及び可変電子距離環を使用し、それぞれの距離精度が使用中の距離レンジの1%【1.5%】又は30m【70m】(乙種においては、固定電子距離環では6%又は82m、可変電子距離環では6%又は120m)のうちいずれか大きい方の値以下であることを確認すること。
(a)海図によって正確に距離の分かる物標を選び、これと映像上の距離とを比較してその精度を確認する。
(b)目標にする物標としては1〜2海里付近の灯台やブイ、防波堤などが適当である。遠距離の山の頂きや砂浜の長い海岸線などは不適当である。
(c)導波管の長さが長い場合、実距離と差を生じるときもあるので、このようなときには調整が必要となる。調整は機種により異なるが、トリガーかビデオのいずれかを補正する調整箇所が送受信部か、又は表示器に取り付けてあるのでメーカーの指示に従って行うこと。
(d)可変電子距離環については、各距離レンジにおいて各固定電子距離環と重ね合せ、そのときの両者の指示目盛を比較して確認する。
(10)甲種の電子方位線について、次のことを確認すること。
(a)表示された物標の方位を5秒以内に測定することができることを確認する。
(b)左右のいずれの方向にも回転することができ、かつ、表示された物標の方位角を明りょうに数字で表示することができること、また、その線の幅は、船首輝線の幅以下であって、船首輝線と明確に区別できることを確認する。
(c)真方位モード又は相対方位モードのいずれを使用しているかを表示することができることを確認する。
(d)起点の位置から表示された物標までの距離を測定することができ、起点を自船の位置以外に移動させた場合には、容易に起点を自船の位置に戻すことができることを確認する。
(11)真方位モード及び相対方位モードの切替えが支障なく行えることを確認すること。また、甲種においては、平行線を2本以上表示することができることを確認すること。
注:真方位モードと相対方位モードとの切替えを数回行い、切替えが支障なく行え、かつ、切替え後、直ちに映像が安定することを確認する。
(12)1、2の物標により、方位精度が、相対方位モード及び真方位モードにおいて±1度以下(乙種は、±2度以下)であることを確認すること。
(a)各距離レンジについて、適当な物標を選んで船首方向に対する方位を海図によって測定し、これと映像上に現れる物標方位とを比較して精度を確認する。
(b)これは、停船時に各距離レンジについて行い、映像の全方向にわたって一様な誤差となるようにすることが望ましい。
(c)測定はヘッドアップ、及びノースアップあるいはコースアップの各モードについて行う。(コースアップがないものは除く。)
(d)真運動装置を使用している場合も同様の精度が要求されているので、スイープの中心が離心している状態での方位の計測は、よほど慎重に行わないと誤差を生じるので特に注意が必要である。
(e)測定に使用するコンパスは、その基線が船体の船首尾線と平行に据え付けられているものでなければならない。一般に本船のコンパスはこのように据え付けられているが、もし、測定のために特別に別個のコンパスを使用するようなときには、その設置についても同様の注意が必要である。
(f)レーダーマストと測定用コンパスとの位置の違いによる誤差は、両者の距離の100倍以上の距離にある物標を選んで測定すれば、0.5度以下に止めることができる。
(g)調整は、サーボ系の機種ではコントロールトランスを、レゾルバー系の機種では変更コイルを回転させて行うのが一般的であるが、メーカーの指示に従って行う。
(13)規定されている距離レンジにおいて、50〜100%の距離にある適当な物標により、距離分解能が40m【50m】以下、方位分解能が2.5度以下(乙種はそれぞれ68m以下、3度以下)であることを確認すること。
(a)距離分解能については、2海里(甲種は1.5海里のみ)以下の距離レンジにおいて、上記確認を行う。
(b)方位分解能については、1.5海里又は2海里(甲種は1.5海里)の距離レンジにおいて、上記確認を行う。
(c)通常、これらの計測を行うのに適当な物標を選び出すことは、なかなか難しいが、その地区における過去の経験により、これらが判断できるような適当な物標を選んでおく。
(14)映像を観測し、各種の偽像及び障害物等による映像の陰の現れ方に異常がないことを確認すること。
(a)自船の構造物による有害な偽像が出ていないか確認する。
(b)偽像とは異なるが、マストなどの障害物による陰があるかどうかも確認する。この場合、海面反射や雨などのように一様に広がった映像の中に薄くなった部分があり、しかも船の方位が変っても、船首方向に対する陰の方向は変化しないので判断できる。
(c)多重反射や遠距離効果に起因する偽像が認められた場合には、これらの像に惑わされないよう周囲の状況も観察する。
(15)1、2の物標を用いて、最大探知距離及び最小探知距離が、20海里及び50m(乙種は20海里及び92m)であることを確認すること。
(a)点検場所においてあらかじめ適当な物標を選定しておき、その映像の状態を観測しながら確認する。
(b)この物標は、点検場所における過去の経験によって選ばれることが多いが、周囲を山に囲まれた湾内のように遠距離の物標がない場合には、エコーボックスやパフォーマンスモニターなどを使用して点検し、確認する方法もある。
(16)ジャイロコンパスの表示に対する連動誤差が、ジャイロコンパスの毎分2回転に対し、0.5度以下の誤差であることを確認すること。
(a)先ずジャイロコンパスからの方位信号を毎分2回転以上の速さで時計回りに回転させ、真方位装置のレピーターカードも時計回りに回転し、かつ、その追従に遅れのないことと、同期の誤差が0.5度以下であることを確認する。次に、同様にして反時計回りの方向も確認する。
(b)更に同様の操作をして、真方位モードにおけるレーダーの映像を観察し、船首輝線が真方位装置の回転と同期して滑らかに回転し、正しい位置に出ていることを確認する。
(17)甲種については、次の機能を確認すること。
(a)航行情報以外の情報を表示面に表示しない機能及び記号等の物標以外の情報の消去機能が適正であることを確認する
(b)自船の速力並びに潮流の速度及び流向に関する情報を手動操作により入力できることを確認する
(c)船速距離計、ジャイロコンパス又は自船の位置を測定するための装置からの情報の伝達が行われていることが表示され、かつ、当該情報の伝達が停止した場合に、可視可聴の警報を発することを確認する
(d)真方位モードと相対方位モードの切替え後5秒以内に物標を表示できることを確認する
(a)スイープの起点を表示面の中心位置から移動させ、表示有効半径の1/2を表す固定電子距離環が表示面の中心を横切ったときまでの時間を計測し、その移動速度が設定値の5%又は1/4ノットのうちいずれか大きい方の値以下であることを確認する。
(b) (a)号と同様の方法で移動後のスイープの起点と表示面の中心とのなす角度と、当初の設定値との差が3度以内であることを確認する。
(c)スイープの中心が表示有効半径の75%を超えて移動せず、かつ、リセットされることを確認する。
(d)真運動装置の船速設定器を低速の適当な値に設定し、それぞれについて上記(a)から(c)までの各号を確認する。
(e)真運動装置へ、ジャイロコンパス及び船速距離計からの信号が正しく入力されていることを確認する。
(f)リセットされる位置が、取扱説明書のとおりであることを確認する。
(g)前(9)項の可変距離環による精度、前(11)項の方位精度並びに、前(12)項の距離分解能及び方位分解能について、それぞれ確認する。
 なお、各精度(特に方位精度)の測定は、離心した状態では特に注意が必要で、慎重に測定しないと測定誤差を生ずる。
(19)甲種においては、表示性能に著しい劣化がないかを確認できる装置*の機能が適正であることを確認すること
*:空中線のふく射部を通じ電波を送受信し、送受信電力の初期値と比較して、その減衰量を確認して性能を測定するパフォーマンスモニター等をいう
(1)距離レンジ(24マイルレンジが適正)、輝度・感度は中央部、STC・FTCは最小、同調最適値にセットするなど条件を揃える
(2)表示器に現れる装備初期における正常な映像状況を記録する
(3)調査時に現状を計測、記録し、初期値との比較から劣化状況を確認する
(20)反射プロッターによるプロッティング設備については、プロッターガラス面に描かれたマークが観測位置を変化させても適正に映像の上に重なっていること、及び照明調整により見やすい明るさに調整できることを確認すること。
(a)レーダーの映像面の全周にわたり、外周及び内周にある数点の映像にプロットし、このとき目の位置を移動してもマークが当初プロットした映像に対して移動しないことを確認する。
(b)照明調整つまみにより、照度が適正に調整できることを確認する。
(c)そのほかのプロッティング装置については、操作及び目視により確認する。
(21)9GHz帯の電波を使用するものにあっては、水平偏波を受信することができ、かつ、レーダービーコン(甲種においてはレーダー・ビーコン及びレーダー・トランスポンダー)の表示を消去させる装置(干渉除去回路)を備える場合は、当該装置の機能を停止させることができることを確認すること。また、甲種において、2以上の偏波を使用することができる場合は、使用中の偏波方式を表示することができることを確認すること
 測定地点でレーダー・ビーコン及びレーダー・トランスポンダーから、信号の受信が得られない場合は、消去機能を停止させることができることを乗組員から聴取して確認すること。
(22)2以上の航海用レーダーを備えている場合には、相互干渉像が現れないことを確認すること。
(a)相互干渉像は映像面に多数の斑点として現れることがある。この斑点はいろいろな現れ方をして同じ位置に現れることはないので、一般の物標の映像とは区別することができる。
(b)相互干渉が強く現れるときには、相互干渉除去装置の取付けについて考慮する必要がある。
(23)2以上の航海用レーダーに相互の切替装置が備え付けられている場合には、素早く切替えができ、そのうちの1のレーダーが故障した場合でも、他方に影響を及ぼさないことを確認すること。
(a)切替装置を数回作動させ、切替えが円滑に素早く、かつ、支障なく行われることを確認する。
(b)1台のレーダーについて、例えば空中線ヒューズなどを抜くなどして故障状態を作り、これが他方のレーダーに影響を及ぼさないことを確認する。また、切替装置を切り替えて、他方のレーダーについて同じような故障状態を作り、同様のことを確認する。
(24)その他の付加装置について、これらが設置されている場合は、動作に異常がないことを確認すること。
(a)相互干渉除去装置
 自船に同一周波数帯のレーダーが2台装備されている場合には、2台を同時に動作させて各装置の映像を観測し、干渉像が除去されていることを各レンジについて確認する。
(b)レーダー干渉除去装置(デフルーター)
 他船のレーダー干渉像を観測しながらデフルーターつまみを操作して、干渉像が減衰し、除去されることを確認する。
(c)マイクロ波ダイオード破損防止装置(シャッター)
 レーダー装置が停止状態にあるときには、導波管がシャッターによって遮へいされ、使用状態のときにはこれが開いていることを確認する。
 なお、この装置が作動しないために起こる事故を防止するために、送信停止用マイクロスイッチ等の保護回路が施されている場合には、その動作も併せて確認する。
(d)空中線部凍結(着氷)防止装置
 空中線部のふく射部やペデスタル部に設置されているヒーター用温度センサーを冷やして、このときにヒーターへ通電することを確認する。
(e)パフォーマンスモニター装置(平成11年1月1日以降設備した甲種を除く。)
 レーダーが正常な性能を保って動作しているときを基準として、これと現在の状態とを比較観測するものであるから、表示器に貼りつけられている通知表(インフォメーションラベル等)に初期における正常な映像の状況、さらに、そのときのテストメーターの指示値等を記録して現在状態と比較する。
4・9・5 整備記録の作成等
 装備者又は整備者は、「航海用レーダー点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(1)(様式R-1)」(「GMDSS装備等整備記録総括表(様式GM-1)」を含む。)を各3部作成し、管海官庁あるいは日本海事協会の支部及び船舶所有者に各1部提出し、残り1部を事業場の記録として保管する。
 なお、平成10年12月7日運輸省令第75号による船舶設備規程の改正前の規定による航海用レーダーにあっては、平成9年6月16日付け海検第40号による「航海用レーダー点検整備記録表/レーダー設備試験成績表(1)(様式R-1)」の様式を使用してもよい。







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