日本財団 図書館


(6)クランプによる機器導入部の接地
 この場合、編組線をがい装に巻き付け、はんだ付け又はクランプによって、その端末に接地端子を付けて、それを押さえバンドの締付けねじに共締めしてもよい。
 
図3・38 ケーブル導入部での接地例
 
(7)ケーブルの端末処理法
(a)概要
 ケーブルの端末処理は、大別すると機器導入後の線さばき部の処理と、端末結線処理に分けられる。
イ. ケーブル端末の防湿処理は、完全に行われないと、ケーブルの絶縁抵抗の低下を招き、船舶の就航後に予期せぬ事故の元になる。
ロ. 端末結線は、振動、衝撃等によって断線を生じないように注意深い作業が必要である。
 また、レーダー等の電子機器類は、誤結線のまま通電すると機器の破損を招くので慎重に行わなければならない。
 レーダーの端末結線処理は、一般的には圧着端子による結線や、同軸ケーブル等の各種コネクタ類の取付けが多い。特殊な工事の場合は、その材料はレーダーの装備用品としてレーダーメーカーから支給されるのが普通である。コネクタ類の取付法や端末結線については、レーダーメーカーの装備工事用図書の指示に従って、確実に行うことが必要である。
(b)線さばき部の処理
イ. 線さばき部の処理材料は、一般的には、粘着ビニルテープや熱収縮性ビニルチューブ等が用いられる。
ロ. 2心以上のケーブルは、シースを除去した根元から線心端までの介在物を念入りに除去する。
ハ. 絶縁ゴム(又はブチルゴム)上の布テープ類は、絶縁低下の原因となるおそれがあるので、絶縁体の先端から10mm又は根元まではぎ取って、粘着ビニルテープでテーピングする。プラスチックテープの場合は、除去やテーピングの必要はない。
ニ. 線端処理に使用するテープの巻き付けは、原則として半重ね巻き2回以上とし、最終端部は巻き戻り防止のため、余分に1〜2回重ね巻きする。(図3・39参照)
ホ. 多心線の場合は、機器の接続端子の配列に従って、若干のゆとりをもたせて切断し、端子の配列の順に麻糸などでレーシングする。
 予備線は、最遠距離の端子に接続できる長さに切断してから、一括して縛っておく。(図3・40参照)
 
図3・39
 
図3・40
 
(c)端末結線処理
イ. 端末結線は、一般的には圧着端子がよく用いられている。そのほかには、銅管端子やソルダレス端子又ははんだ付けタイプの端子等が、用いられる場合もある。
ロ. 圧着端子の取付け(例)
 導体絶縁ゴムを除去する長さは、使用する圧着端子の種類によって相違するが、原則として端子を取り付けた後に心線導体が約1mm程度接続側に出る長さとすること。この場合、心線導体を損傷しないように注意すること。(図3・41参照)
 
図3・41
(注)
1. 圧着端子の圧着工具は、端子メーカー指定のものを使用すること。端子はケーブルの心線導体の太さに適合したものを使用のこと。
2. 番号スリーブは、機器結線部の端子番号と一致させる。多心ケーブルの場合で、保護テープに番号が付記されているものを、機器結線部の端子番号と一致させて結線する場合は、番号付きスリーブを用いなくてもよい。
3. 圧着が完了したら、端子が容易に抜けたりしないことを確認すること。

 特に心線導体が細い場合には、十分注意する必要がある。このようなときには心線導体を2重に折り返してから、圧着端子に圧着してもよい。
 
ハ. 裸圧着端子の取付け(例)
 裸圧着端子を使用する場合は、圧着した金属部分には熱収縮ビニルチューブや粘着ビニルテープを用いて絶縁と防湿の処理を行うこと。
 更に防水処理が必要な場合は、シール剤処理も行うこと。(図3・42参照)
 
図3・42
 
ニ. はんだ端子の取付け・・・図3・43による。
 
図3・43
(注)はんだはJISZ3282による55sn、50sn又は45snを用いること。
 
ホ. ケーブルの先端処理の色分けビニルチューブやビニルテープの色分けは下記のとおりとする。
(1)直流の場合
正極(P):赤
中性極(O):黒
負極(N):青
(2)交流の場合
第1相(R,U):赤 R,S,Tは負荷側
第2相(S,V):白 U,V,Wは電源側
第3相(T,W):青
へ. 特殊ケーブルの端末処理は、メーカーの指示に従うこと。
(d)高周波同軸コネクタの取付け(図3・44参照)
イ. レーダー装備に使用する高周波同軸コネクタ類は、レーダーメーカー支給品で、その取付方法は、メーカー装備工事用図面等に記載されているのが一般的である。
ロ. 参考例(CO2形コネクタ、BNCプラグのオス型の場合)
 ケーブル外被を7mmだけ切り取る。
 このとき、編組を傷つけないこと。
 編組を解きほぐし、誘電体を先端から3mmだけ切り取る。
 解きほぐした編組の先端をつぼめ、締付け金具、座金、ガスケット、クランプの順にケーブルに挿入する。
 編組をクランプ上に折り返して切りそろえる。ケーブルの中心導体に予備のはんだ付けを行い、中心コンタクトを挿入してはんだ付けする。このとき、中心コンタクトは誘電体と透き間のないようにし、また、熱によって誘電体を溶かさないように注意すること。
 以上のように組み付けたケーブルをコネクタ本体の中に差し込み、締付け金具で固定する。
 
図3・44
 
ハ. 同軸コネクタを取り付けるときの注意
(1)外被と誘電体を切断する長さは、コネクタの種類によって相違する。編組や中心導体を傷つけないよう注意する。
(2)中心コンタクトのはんだ付けは、コンタクトの外周にはんだを付け過ぎると、本体に入らなくなる。このとき、熱によって誘電体を溶かさないように注意すること。
(3)コネクタを取り付けてから、中心コンタクトが編組とショートしていないことをテスタで点検すること。
(4)がい装ケーブルの場合は、コネクタの手前でがい装を切断して、端末結束及びがい装に接地用リード線をはんだ付けして引き出す。
ニ. その他の電子機器用コネクタ類の取付け(例)(図3・45参照)
 レーダーの形式によっては、ケーブル端末に、いわゆる「接栓」を取り付けて機器側の接栓座と結合するような場合がある。
 接栓の種類にも丸形や角形、オス形とメス形等の各種がある。
 接栓の取付け上の一般的な注意事項は以下のとおりである。
 
図3・45
 
(1)ケーブル外被と導体絶縁物を切断する長さ(A及びB寸法)は、使用する接栓に適合させる。
(2)ケーブル導体は、丁寧によって予備はんだ付けをしておいてから、絶縁スリーブを通して、コンタクトにはんだ付けする。
(3)ケーブル心線番号又は色分けとコンタクトの番号は、図面指示どおり結線し、誤配線のないように注意する。
(4)接栓のキャップにケーブルクランプのあるものは、確実にケーブル外被を保持して締め付けること。
(8)ケーブルのクランプ方法
(a)レーダーユニットのケーブル導入部付近では、ケーブルに無理が掛からない位置で、できる限りユニットに近いところで必ずケーブルをクランプすること。
 レーダー空中線の場合などで、防振ゴム台を用いて装備されたユニットの場合は、防振性能を損なわないように注意しなければならない。
 この場合、第1クランプまでの寸法は450mm以上を標準とする。
(b)ケーブルのクランプ(例)
イ. 巻きバンド(図3・46参照)
 鋼又はSUS(ステンレス)製のテープ状のもので、電線馬などを用いてケーブルに巻き付けて使用する。止め金具(バンドバックル)と工具が必要である。
 
図3・46
 
ロ. クリップ(図3・47参照)
 支柱又は馬を用いて、黄銅や軟鋼製クリップでケーブルをクランプする。
 
図3・47







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION