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3・5 導波管
3・5・1 一般的事項
 導波管等の配置図により貫通金物の取付け、導波管等取付台の船体への取付け、導波管等の切断、接続用部品の取付け等を行う。
 導波管等の取付けに当たっての一般的な注意事項は次のとおりである。
(1)貫通金物はメーカー支給品を使用する。
(2)貫通金物を甲板や隔壁の貫通部に取り付けるに当たっては、メーカーの工事用図書にある取付寸法等を示し、造船所にコーミングの取付けや開孔を依頼する。
(3)取付台は、1m間隔で配置する。
 フランジによる接続部においては、どちらかの端部からも100mm前後の所にも取付台を設ける。
(4)アンテナマストと導波管等との間隔は100mm以内とし、これより離れる場合は補強して振動を防止する。
(5)導波管等は取付台にクランプなどを用いて取り付ける。この際、導波管等とクランプの間に亜鉛板あるいはゴム板を巻くか、メーカー支給のプラスチック材を挿入する。
(6)甲板部及び甲板面から1500mm以上の高さまで(2mを超える必要はない)の導波管等には保護カバーを設ける。
3・5・2 接続方法
(1)接続箇所のフランジにはチョークフランジとプレンフランジ(別名フラットフランジともいう。)とがあり、必ず1対として使用する。また、チョークフランジは空中線側(上側)に位置させること。
(図3・5参照)
(2)チョークフランジ側には防水用ガスケット(Oリング)を挿入する。
(図3・5参照)
(3)接続ねじには、防食のためステンレス製のねじを使用すること。他の材質のねじは、絶対に使用してはいけない。(図3・5参照)
 
図3・5 導波管フランジの接続
 
(4)接続は自然に力の加わらない状態で行われるべきであり、引張り、押し付け、ねじれなどストレスのかかる作業をしてはならない。ひずみにより亀裂が生じ浸水の原因になる。
(5)直線部分には必ず一箇所現場合せの部分を設け、(4)項で禁止した作業が避けられるようにしなければならない。このためには、作業のやりやすい場所を選ぶことも必要である。(図3・6参照)
 
 
3・5・3 銀ろう付けの方法
(1)ろう付け前の注意事項
(a)導波管の切断面は、導波管に対し直角であることを確認する。直角でないと、接続したとき導波管に無理な力が加わる。
(b)切断面はやすり又はサンドペーパーでばりを取って整形する。特に内側のばりは、小さな細かい目の平やすりで丁寧に取り、導波管の伝搬損失を減らすように心掛けねばならない。
(c)ろう付けする部分に油類が付着していると、ピンホール発生の原因となるから適切な溶剤等で脱脂する。
(d)ろう付けする部分の熱拡散を防止する目的で、レンガブロックの上で作業した方がよい。
(e)銀ろうとフラックスは、一対の組になっているので、異った組合せで使用すると失敗する。(銀ろうメーカーの指定のフラックスを用いる。)
(f)銀ろう付けの秘けつは加熱温度にある。(約620℃〜700℃)
(g)導波管の一端がチョークフランジならば、他端はプレンフランジの組合せとなる。
(2)使用材料
 銀ろうはJIS規格でBAg-1〜11まであり、低温用としてはBAg-1又はBAg-7が最適と思われる。これに相当するものが、フラックスと組みにして、いろいろな商品名で市販されている。例を示すと下記のようである。
(a)キングソルダ#101とフラックス#6
(b)JS445Dとフラックス#27
(c)金属溶材#318とフラックス#304
(3)手順
(a)フランジに挿入した導波管の切断面が、フランジ面と一致しているか確認する。
(b)フランジ面をレンガの上に置き、この面と導波管が直角になるように工夫して固定する。
(c)フラックスをろう付けする部分に薄く塗布する。
(d)ガスバーナーで溶接部を約620〜700℃になるように均一に加熱する。バーナーの火色の変化に注意していると、丹銅の場合は、赤色→緑、青色→白色に変化することが分かり、この白色になったときが適温である。また、フラックス#6を使用の場合には、加熱すると、あめが溶けるように流れだし、これが透明になったときが適温である。このとき、銀ろうを接触させると、ちょうど、はんだを流すときと同じように流れる。必要以上に加熱すると、フラックスが溶ばいの役をなさなくなったり、導波管にひずみを生じたりして、失敗することがあるので注意を要する。
(e)フラックスの残りかすは、銀ろうが固まり、ろう付け部分が冷えきらないうちに清水に浸して、ワイヤブラシで除く。このフラックスが残っていると腐食のおそれがあり、また、フラックスを取り除かないと、ピンホールがあっても発見できず、後日水漏れの原因となる。ただし、このとき急冷するとひび割れが発生するので注意を要する。
 なお、使用する銀ろうやフラックスの種類によっては、水洗いの前に酸洗い(比重1.1位の硫酸液)が必要なものもあるので、銀ろうとフラックスの使用書に十分注意し、それに従うこと。
(f)冷却後、フランジ結合部の面がフラットであるか確認し、必要あれば若干やすりやサンドペーパーで修正する。
(g)ろう付け部分に、ピンホールがないか入念に調べ、気密テストを実施する。
3・5・4 気密テスト
(1)運輸省の検査基準(検査の方法)
 導波管に50〜100kpa(0.5〜1.0kg/cm2)の圧力を30分以上かけ気密試験を行い、内気圧が10%以上減少しないことを確かめる。
(2)作業手順
(a)空中線と導波管とを分離し、パッキングゴムを介して、めくら板を取り付ける。
(b)バルクヘッドフランジの屋外部(通常この箇所にテフロンシートが挿入されていてEベンドかHベンドで水平方向に曲がっている。)のベンドを取り外し、ここから空気を送り込む。(図3・7参照)
 
図3・7 気密テスト
 
(3)テスト完了後、取り外した箇所の復旧作業を行うわけであるが、接続を慎重に行わなければこの箇所から浸水することが考えられる。
 ガスケットとテフロンシートを忘れずに挿入すること。
3・5・5 防水上の注意
(1)結露対策
 室内に装備された導波管内の空気の温度と、室外に装備された導波管内の空気との温度差による結露は、エネルギーロスとして無視できず、少量の水滴で遠距離探知能力に影響する。
 これを防止するため、送受信機出口と室内貫通部のバルクヘッドフランジに、それぞれテフロンシートを挿入し、空気の流通を遮断する。
 テフロンシートは0.2〜0.5mm程度の厚さのものを使用する。厚過ぎるとフランジと密着せず浸水の原因になるので注意すること。
(2)ガスケットは一回使用したものは、原則として使用してはならない。やむをえず使用する場合は、傷のないこと、弾力性があることを確認する。
(3)接続部のわずかな透き間からの浸水防止のため、ねじ締め後ねじとフランジの合わせ目の全周にシーリング剤を塗り付けて、乾燥後に油性塗料を十分塗ること。(図3・8及び図3・9参照)
 
図3・8
 
図3・9
 
(4)テフロンシートを入れた場所が分かるように、その部分にマーキングしておくこと。







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