日本財団 図書館


2・5 うず電流・うず電流損
 
図2・16
 
 電磁誘導作用はコイルの代りに導体の板又は固体についても起る。図2・16(a)についてみれば矢の方向に磁束Φが変化するときに発生する起電力はこの板又は固体を貫通しようとする磁束の変化を打消すように, うず状に電流が流れる。これをうず電流という。このために導体の抵抗によって熱を発生する。この電力損失をうず電流損という。このうず電流損を少なくするため図2・16(c)のように薄鋼板を重ね互いに絶縁した成層鉄心を用いる。発電機, 変圧器, 電動機などにはこのため成層鉄心を使用する。
 また, 図2・16(b)のようにアルミ円板にNS磁極をはさんで, 磁石を図のように回転すれば円板もこれに追従して回転する。これはうず電流と磁界との間に電磁力によって回転力(トルク)を生じて回転する。
〔応用〕うず電流を利用して回転体に制動力(ブレーキ)を与え, 又は逆に回転体に駆動回転力(トルク)を生じさせたりすることに利用する。また, うず電流損による発熱は電気炉などに利用されている。
 
 
図2・17
 
 図2・17(a)のように鉄心のまわりにコイルを巻き, これに電流を流せば鉄心は磁化され, 電磁石となることは, 2・3・4ですでに述べた。ところで, この電流を増してゆけば電磁石すなわち磁束密度B〔Wb/m2〕はどこまでも増してゆくかといえばそのようにはゆかないで図2・17(b)のような曲線を描いて, ある限度をこせば磁束密度はほとんど増加しない。そこで図2・17(b)のような曲線を磁化曲線といい, 磁束密度の増加しないような現象の現われを磁気飽和という。また, 図2・17(b)に示した曲線即ちB-H曲線を飽和曲線ともいう。
2・6・2ヒステリシスループ・ヒステリシス損
 一度も磁化されていない鉄心について磁化を増してゆく場合と減らしてゆく場合とでは, 磁束密度が同一でなく同一の経路をたどらないことが実験上確められる。これを図2・18について説明すれば, 先づ0点から次第にHを増しa点に(H最大), a点からHを減じてb点に, さらに-Hにしてc点に, さらに減じてd点に(-H最大)達する。これよりHを増していってHが零のときe点に, さらにHを増してf点に, そして最後にa点に戻る。このようにしてみると, 図2・18にみるようにBとHとの曲線は同一経路をたどらないで一つのループを形成する。これをヒステリシスループという。
 
図2・18
 
 そして鉄心を交流電源によったコイルで磁化すれば, 1循環毎にループ間の面積に比例した電力量が, 鉄の中で熱となって失われる。この電力損失をヒステリシス損という。
 このために交流の電気機器の鉄心内には当然のようにヒステリシス損を生じている。
 次にHが0となっても0bだけ磁束密度Brが残っているのでこれに相当する磁気を残留磁気という。
 また, 磁束密度を零にするためには0Cだけ-Hを加えねばならないから, この0CすなわちHcを保磁力という。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION