3・6 可動鉄片形計器
3・6・1 原理
図3・8
反発形可動鉄片形計器の原理を説明する。図3・8(a)は断面図で,図3・8(b)は平面図である。
Fは固定コイルであって,これに被測定電流iを流す。Aは固定鉄片,Bは可動鉄片,うず巻きばねは制御トルク用である。今この作用原理を説明する。
固定コイル即ち,励磁コイルに電流iを流せば,磁界の強さH〔wb/m2〕によってA,B両鉄片はそれぞれ磁化され,いずれも磁石になる。両磁石はNとN,SとSが相対するので両鉄片間に反発力が生ずる。A鉄片は固定してあるのでB鉄片が回転する。この反発力(駆動トルクTdとなる。)は,両鉄片の各磁極の強さmA,mBの積に比例し,その距離の2乗に反比例する。ところが,このmA,mBの大きさはHに比例し,Hは,また,励磁コイル中の電流に比例するから
mA=κ1H,mB=κ2H H=κ3i
故に,
ただし,κ1,κ2,κ4,κ3:比例定数
κ5(θ):θの関数で,mAとmB間の距離である。
(3・8)式からTd∝i2の関係となる。
また,制御トルクTc=τθとし,かつ,Td=Tcとなるところから
故に,
(3・9)式から,指針の指示は励磁コイルF中の電流の瞬時値の2乗平均即ち実効を示すことになる。制動には普通空気制動を用いる。
この形の電流計では,可動コイルに電流を流さないから,750〔A〕位までは励磁コイルFに流しうるので測定できるが,しかし,30〔mA〕以下の小電流では製作困難である。
マンガニンの高抵抗を直列に接続して用いる。
この形の計器は交直両用であるが,直流に対して残留磁気の影響があるので,交流の場合より確度がおちる欠点がある。
3・7・1 原理
電力を直接測定するには,直流,交流とも電力計を用いる。ここでは,直流,交流両用の電流力計形計器の動作原理を説明する。
図3・9
図3・9の接続図において,固定コイルSに負荷電流iを,また,可動コイルmに負荷電圧vが加わるようにしてある。mには電圧に比例した電流ipが流れ,両コイル間に電流力作用によって可動コイルmに駆動トルクが生ずる。今負荷の瞬間電力
である。また,可動コイルmに働く瞬時駆動トルクtは次のようになる
ただし,
である。
即ち,瞬時駆動トルクtは瞬時電力pに比例することがわかる。
この場合は,電圧,電流等は一定値であるから,(3・10)式は,一定値のまま可動コィルmに働くトルク,即ち,回転角は電力に比例するから電力で目盛することができる。
瞬時駆動トルクtの一周期間の平均をとればPも同様に一周期間の平均をとる。
その結果
Td=(τの一周期間の平均)=K×(Pの一周期間の平均)
Td=KP・・・(3・11)
即ち,交流回路の場合も可動コイルに働く駆動トルクは交流電力に比例するから電力で目盛することができる。
図3・10
図3・10において,図3・10(a)の場合は,電流コイルSの 端子から負荷電流iが流れるときに,可動コイルmの 端子から負荷電圧υがSコイルと同相に,直流であれば加わるように接続すれば指針は正常に振れる。
これに反して,図3・10(b)のように,電流コイルSの 端子から負荷電流iが流れるときに,可動コイルmの接続を 端子でない方,即ち,反対側に接続すれば電流コイルSの電流と逆相に,直流であれば減ずるように接続されるから逆振れになる。
したがって,電力計を接続にあたっては十分の注意が必要である。
三相電力計は,後述する2電力計法の原理を基にして製作されたもので,図3・11に示すように,単相電力計の素子を2組を用い,そして可動コイルm1m2は同一軸に取付けられて指針を動かすようにしてある。接続法は2電力計法と同様である。ただし,注意すべき点は図3・11の上部素子と下部素子との間に磁気的干渉をなくすため鉄板の遮磁装置を施してあることである。
図3・11
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