3 指示電気計器と計測
3・1 指示電気計器の階級と用途
次のように,指示電気計器(以下計器という)は分類されているから,用途に応じて下記の階級のうちから選定する。
計器の階級 |
許容誤差(定格に対する%) |
用途 |
0.2級 |
±0.2(特別精密級) |
副標準 |
0.5級 |
±0.5(精密級) |
精密測定 |
1.0級 |
±1.0(準精密級) |
準精密級測定 |
1.5級 |
±1.5(普通級) |
携帯用,配電盤用 |
2.5級 |
±2.5(準普通級) |
配電盤用 |
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計器は頑丈ではないので,取扱い上注意しなければならない。強い振動や衝撃を与えないことは勿論,丁寧に取扱うことが必要である。なお,使用上直流交流の別,取付け方法等も下記のとおり記号で記してあるので,これに留意する必要がある。
計器を構成するに3要素が必要であって,一つは駆動トルクを生ずる駆動装置,一つは制御装置及び他の一つは制動を行う制動装置の3要素である。
計器は駆動トルクを生ずる原理によって,いろいろ分類されるが,電流計,電圧計等は平等磁界と電流との相互作用によってトルクを生ずるようにしたものが多く使用されている。その他の原理によるものもあるがその都度説明する。
その計器の良否の判定の目安として機械的良度がある。
Td: 駆動トルク,W: 可動部の重量(g)
n: 定数(垂直軸の場合は1.5,水平軸の場合1.0)
γの値は0.5〜1.6程度が普通である。 |
制御装置とは,指針が駆動トルクによって,角度θだけ動き静止するためには,これと釣合った力が必要であって,この力と釣合いを保って初めて静止するようになる。これには
(1)うず巻きばねを利用する方法 (2)重力を利用する方法 (3)うず電流による方法等がある。計器の種類によって最適のものが選ばれている。
3・3・2で述べたように,指針の動きを制御し静止せしめるためには,制御装置だけでは不十分であって,実際にはその指針は行き過ぎ,もどり過ぎを繰り返し,その正規の位置を中心として振動が起こる。これを早く止める装置が制動装置である。これには,(1)うず電流制動法 (2)空気制動法 (3)液体制動法などがある。計器の種類によってその何れかが選ばれている。
以上三要素のほかに,計器の寿命に影響する軸受がある。これにも,宝石軸受,ばね軸受,磁気懸垂式等がある。指針にも,刃形指針,繊条指針,槍形指針,枠組指針等がある。また,目盛板にも平等目盛,不平等目盛,対数目盛,両偏れ目盛,多重目盛等がある。次に磁界を作るために永久磁石が使用されるため良質の磁気材料が選ばれる。即ち,(1)残留磁気及び保磁力が大きいこと。(2)着磁力,熱振動,磁気的刺激などで強さが減少しないこと。(3)温度係数が小さいこと。(4)寸法が小さくできること。(5)価格が安いこと等が必要条件である。
3・4・1 直流電流計
(1)原理
図3・1
図3・1において,可動コイルmにiなる電流が流れればNSの磁界内でトルク(回転力ともいう。)が生じて,コイルmに直結してある指針が電流の大小に応じてθ角だけ回転する。そして,うず巻きばねの制御トルクの力と釣合うが,この制動には,電磁制動法を用いている。今駆動トルクTdは磁界Hと電流iとに比例し,また,うず巻きばねの制御トルクTcは回転角θに比例するから次の式ができる。
Td=K1Hi,Tc=K2θ・・・(3・1)
よって,これは平衡するからK1Hi=K2θとなる。
故に,
ただし,
この式から,iは回転角θに比例するから,目盛板の目盛は平等目盛となる。制動装置は可動コイルmの巻枠に金属枠を用い,これとNSの作る磁界とを利用して電磁制動法となる。この原理をもった計器を,永久磁石可動コイル形といって直流電流計及び直流電圧計に応用される。
図3・1は,直流電流計の実態結線図で基本原理については既に述べたとおりi=Kθなる関係から,次に述べる分流器を用いて電流計に利用する。
(2)分流器
図3・2
図3・2は,その接続図である。
mは可動コイル,Rsはマンガニン抵抗でコイルに所定の動作電流を流すために接続された分流器である。Rは温度補償用のマンガニン抵抗で,これを吸収抵抗ともいう。
この電流計の目盛について考えよう。
被測電流をI,このときの可動コイルmの電流をi,回転角をθとすれば
故に,
ただし,
この(3・3)式から,目盛盤のθの位置は直接被測電流Iを目盛ることができる。これが電流計である。
この分流器Rsは,電流計の外箱内に設ける場合と外部に装置される場合がある。大電流になれば多くは外部に設ける。
を分流器の倍率と言う。
このRsの値を替えることにより測定範囲が広くなる。
(3)使用上の注意事項
強い永久磁石を利用しているため,付近に強電流を使用した直流回路又は強い磁界があれば,その影響を受けるからこれに対し注意が必要である。配電盤用計器は,動作部分が鉄製外箱中に収めいわゆる磁気しやへいがしてあるため,外部磁界の影響は殆んどないとみてよい。
(1)原理
図3・3(a)は直流電圧計の実態結線図で,図3・3(b)はその接続図を示したものである。mは可動コイル,Rは倍率器といい,直列抵抗であって電圧計の指針が最大目盛を指すような位置にその値を選定する。
作動原理は3・4・1(1)で述べたとおりで,図3・3(b)のように接続すれば直流電圧計となる。
図3・3
(2)倍率器
電圧計の目盛について考える。被測電圧V,このとき電圧計内に流れる電流をiとし,指針の回転角をθとすれば V=i(Ro+R),i=Kθ
ここではRoは可動コイルmの抵抗とする
故に,V=(Ro+R)θ=Kυθ・・・(3・4)
ただし,Kυ=K(Ro+R)
上式から目盛板のθの位置は被測電圧Vの値を目盛にすることができる。これが直流電流計である。
この可動コイルmに,直列に接続された抵抗Rのほかにより高い電圧を測定する場合には,さらに,抵抗器を直列に接続して使用する必要がある。これを電圧計の倍率器という。
この倍率器の抵抗材料には,固有抵抗が高く温度係数の小であるマンガニンという抵抗金属を用いる。普通この倍率器は計器の外部に装置する。
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