2・7・2 半導体整流器
電力を交流から直流に変換することを整流又は順変換というが,この変換には一般に半導体整流器が使用されており,整流器の使用目的によりダイオード又はSCR(以後サイリスタという。)の整流素子が用いられる。ダイオードでは,それ自身が電圧調整の機能を有していないので,出力側の直流電圧を調整するには,電源の交流電圧を変化させる必要があるが,サイリスタを使用する場合は交流側電圧一定のままで,直流出力の電圧を自在に調節することができるので,サイリスタを使用した整流器を他と区別して制御整流器とも呼ぶ。なお,直流電動機の電源側にサイリスタを使用し,電力の順変換と逆変換(直流から交流への変換)の両方を行わせる場合には,そのサイリスタ装置を一般にサイリスタ変換装置又はサイリスタコンバータという。
(1)整流器の結線方式とその電圧波形
サイリスタによる整流回路と,その電圧波形は,結線方式と位相制御角(電圧位相に対する点弧パルス供給の位相遅れ)などによりそれぞれ異るが,ダイオード整流器の場合の電圧波形はサイリスタ無制御時(制御位相角α=0の時)に相当する。サイリスタ無制御時の直流電圧Edo(平均値)と電源側の交流電圧Ea(実効値)との関係は整流素子の順方向電圧降下を無視すると表2.1の通りである。
表2.1 交流入力電圧に対するダイオード整流器の無負荷電圧
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単相全波 (混合ブリッジ) |
単相全波 (純ブリッジ) |
3相半波 |
3相全波 (混合ブリッジ) |
3相全波 (純ブリッジ) |
Edo |
0.9Ea |
1.17Ea |
1.35Ea |
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備考:
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(1)Ea:半波結線の場合は変圧器直流巻線相電圧(実効値)
ブリッジ結線の場合は整流器入力線間電圧(実効値)を示す。
(2)混合ブリッジとはブリッジの片方のアームにサイリスタ,他の片方のアームにダイオードを配置し,サイリスタとダイオードを混用するブリッジ結線をいう。
ダイオードのみのブリッジ状整流回路では,混合ブリッジと純ブリッジの区別が生じないので,単にブリッジ結線という。
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サイリスタの整流器の位相制御角と電圧波形との関係はかなり複雑であるが,概念的な理解をし易くするよう下記に代表的な結線方式について図示することとする。
(a)単相全波混合ブリッジ
整流アームの半数にダイオードを使用するのでサイリスタの使用箇数が少ないし,又逆変換運転(インバータ運転)ができない。
位相制御角α=180°で負荷の種類(抵抗又はインダクタンス負荷)に関係なく電圧零となる。
図2.79 単相全波混合ブリッジ回路の基本結線と整流電圧波形
(b)単相全波純ブリッジ
整流アーム全部にサイリスタを使用しており,単相電源を使用した可変電圧直流電源として広く利用される。順変換運転(整流器運転)ばかりでなく,逆変換運転(インバータ運転)も可能である。
抵抗負荷:α=180°で電圧零となる。
誘導負荷:α=90° で電圧零となる。
図2.80 単相全波純ブリッジ回路の基本結線と整流電圧波形
(c)三相半波
逆変換運転ができるが,中性点が必要なので整流器用変圧器を必要とする。変圧器の利用率がよくないので採用される例は少いが,サイリスタの代りにダイオードを使用したものはブラシレス交流発電機の回転整流器に用いられている。
抵抗負荷:α=150°で電圧零となる。
誘導負荷:α=90° で電圧零となる。
図2.90 三相半波整流回路の基本結線と整流電圧波形
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