2・4・2 種類
(1)回転子構造による分類
回転子の構造によって,かご形と巻線形に分けられる。巻線形回転子は,その巻線を回転子鉄心に対して絶縁し,スリップリングとブラシを介して外部に接続できるようになっている。巻線形電動機は回転子巻線に外部抵抗を接続することにより,始動トルク及び加速トルクを必要に応じ変えることができるばかりでなく,始動電流も大幅に抑制することができるので,重トルク負荷を頻繁に発停させる必要のある場合又は極度に始動kVAの抑制を必要とする場合等の限られた用途に使用される。かご形回転子の巻線は回転子鉄心の溝にアルミニウムの鋳込み又は銅バーの挿入等の方法により形成され,絶縁が施されていないので,回転部は構造簡易で,機械的に堅固のため,かご形誘導電動機は連続運転に対する耐久性が非常にすぐれており,一般の駆動動力として広く使用される。
船用の三相かご形誘導電動機のトルク特性についてはJEM1277-98(船用低圧三相誘導電動機)が下記のように規定している。
定格出力
kW |
定格トルクに対する比 |
2極 |
4極 |
6極 |
最小始動 トルク |
プルアップ トルク |
停動 トルク |
最小始動 トルク |
プルアップ トルク |
停動 トルク |
最小始動 トルク |
プルアップ トルク |
停動 トルク |
0.2 |
1.9 |
1.3 |
2.0 |
2.0 |
1.4 |
2.0 |
- |
- |
- |
0.4 |
1.9 |
1.3 |
2.0 |
2.0 |
1.4 |
2.0 |
1.7 |
1.2 |
1.7 |
0.75 |
1.8 |
1.2 |
2.0 |
1.9 |
1.3 |
2.0 |
1.7 |
1.2 |
1.8 |
1.5 |
1.8 |
1.2 |
2.0 |
1.9 |
1.3 |
2.0 |
1.6 |
1.1 |
1.9 |
2.2 |
1.7 |
1.1 |
2.0 |
1.8 |
1.2 |
2.0 |
1.6 |
1.1 |
1.9 |
3.7 |
1.6 |
1.1 |
2.0 |
1.7 |
1.2 |
2.0 |
1.5 |
1.1 |
1.9 |
5.5 |
1.5 |
1.0 |
2.0 |
1.6 |
1.1 |
2.0 |
1.5 |
1.1 |
1.9 |
7.5 |
1.5 |
1.0 |
2.0 |
1.6 |
1.1 |
2.0 |
1.5 |
1.1 |
1.8 |
11 |
1.4 |
1.0 |
2.0 |
1.5 |
1.1 |
2.0 |
1.4 |
1.0 |
1.8 |
15 |
1.4 |
1.9 |
2.0 |
1.5 |
1.0 |
2.0 |
1.4 |
1.0 |
1.8 |
18.5 |
1.3 |
0.9 |
1.9 |
1.4 |
1.0 |
1.9 |
1.4 |
1.0 |
1.8 |
22 |
1.3 |
0.9 |
1.9 |
1.4 |
1.0 |
1.9 |
1.4 |
1.0 |
1.8 |
30 |
1.2 |
0.9 |
1.9 |
1.3 |
1.0 |
1.9 |
1.3 |
1.0 |
1.8 |
37 |
1.2 |
0.9 |
1.9 |
1.3 |
1.0 |
1.9 |
1.3 |
1.0 |
1.8 |
|
注:
|
プルアップトルクとは電動機が零速度から停動トルクに相当する回転速度の間で軸端において発生するトルクの最小値をいう。
|
(2)外被形式と出力による分類(JEM)
船用として一般的に使用されるかご形誘導電動機については,JEM1410-92(船用低圧三相かご形誘導電動機の寸法)にて外被形式別及び据付形式別に定格出力,絶縁の耐熱クラス,主要寸法等を規定しており,その規定の範囲は次の通りである。
外被形式 |
極数 |
絶縁の
耐熱クラス |
出力(kW) |
横形 |
フランジ形 |
保護形:IP22
(自由通風形:IC01) |
2、4 |
E |
0.75〜1.5 |
1.5〜3.7 |
〃 |
B |
5.5〜30 |
5.5〜30 |
〃 |
F |
37〜200 |
37〜132 |
6 |
E |
0.75〜2.2 |
1.5〜2.2 |
〃 |
B |
5.5〜18.5 |
3.7〜18.5 |
〃 |
F |
22〜160 |
22〜110 |
8 |
F |
30〜110 |
30〜75 |
全閉形:IP44
(外被表面冷却自力形:IC411) |
2、4 |
E |
0.2〜3.7 |
0.2〜3.7 |
〃 |
B |
5.5〜22 |
5.5〜22 |
〃 |
F |
30〜200 |
30〜132 |
6 |
E |
0.4〜2.2 |
0.4〜2.2 |
〃 |
B |
3.7〜15 |
3.7〜15 |
〃 |
F |
18.5〜160 |
18.5〜110 |
8 |
F |
30〜110 |
30〜75 |
|
船の特殊条件その他を考えて,JIS規格(JIS C4210-01一般用低圧三相かご形誘導電動機)とNK鋼船規則及びJEM規格(JEM1277-98船用低圧三相誘導電動機)を比較すると次の通りである。
項目 |
JIS規格 |
NK規則 |
JEM規格 |
基準周囲温度 |
40℃ |
45℃ |
45℃ |
相対湿度 |
規定なし |
規定なし |
95% |
船の傾斜,ローリング及び 振動に対する考慮 |
規定なし |
規定あり |
規定あり |
定格出力(基準) |
0.2〜37kW |
規定なし |
0.2〜200kW |
極数 |
2,4,6 |
規定なし |
2,4,6,8 |
定格周波数(標準) |
50Hz・60Hz |
60Hz |
60Hz |
定格電圧 |
制限電圧600V |
制限電圧500V |
440V |
軸材 |
規定なし |
JIS又はNK合格品 |
JIS合格品 |
つり金具 |
規定なし |
規定なし |
30kg以上に必要 |
人体及び固形異物に関する保護 |
開口部φ12以下 |
開口部φ12以下 |
開口部φ12以下 |
軸受 |
規定なし |
規定なし |
ころがり軸受 |
絶縁処理 |
規定なし |
耐湿,耐油,耐塩 |
同左(巻線) |
端子箱 |
規定あり
(位置) |
規定あり
(絶縁距離) |
規定あり
(位置,構造等) |
端子記号 |
適切な方法で表示 |
規定なし |
左よりU.V.W |
全負荷特性 |
規定あり |
規定なし |
37kW以下規定あり |
騒音 |
規定あり |
規定なし |
規定あり |
振動 |
規定なし |
規定なし |
規定あり |
過速度試験 |
規定あり(注1) |
規定あり |
規定あり |
超過トルク試験 |
規定あり(注1) |
規定あり |
規定あり |
絶縁距離 |
規定なし |
規定あり |
規定なし |
寸法 |
規定あり |
規定なし |
規定あり(注2) |
|
注1: |
JIS C4034-1,5,6:99「回転電気機械」を参照のこと。 |
注2: |
JEM1410-92「船用低圧かご形誘導電動機の寸法」による。 |
三相誘導電動機は始動電流が大きく大容量のものでは,その配電系統の電圧を著しく低下させるので,発電機容量に比べて小容量のものは,直接全電圧を加えて始動し,容量の大きな電動機に対しては,特別な始動方法が用いられる。
(1)かご形
(a)全電圧始動(直入始動)
直入始動であって,広く使用されるが,始動電流が大きい反面,大きい加速トルクが得られ,始動時間は短い。
(b)スターデルタ始動接続による方法
始動時に電磁接触器A及びBを閉として,固定子巻線をスター(Y)接続すると,各相固定子巻線には運転時の の電圧が加わる。速度が上昇した時点で電磁接触器Bを開とし,引き続きCを閉じて各相巻線をデルタ(△)状に接続し運転状態とする。
この方法によると始動電流は電圧に比例するので全電圧始動時各相巻線電流の ,即ち電源から流入する全電圧始動電流の1/3倍となる。
一方,始動トルクは各相巻線に加わる電圧比の二乗に比例するので,始動電流と同様に,全電圧始動時の1/3となる。
図2.45 スターデルタ始動接続図
(c)始動補償器による方法
三相単巻変圧器を使用する始動器を始動補償器式始動器(俗称コンペン式始動器)というが,これは低電圧から全電圧に切換える際に,電動機端子への印加電圧を一旦零とする方式と,過渡的にリアクトル挿入回路を作って無電圧としない方式の両方がある。後者はコンドルファ始動方式といい,全電圧へ移行の際の突入電流のショックを緩和する効果が大きい。
コンドルファ式始動補償器では,通常タップ電圧を定格電圧の50〜80%の範囲で選んで,始動時に電磁接触器A及びBを閉として電動機に低電圧を加え,速度が増大して始動電流が低下した時点で,電磁接触器Bを開とし,続いて電磁接触器Cを閉じて全電圧による運転状態とする。
この方式で電源から流入する始動電流及び始動トルクともに,タップ電圧比の二乗に比例する。
図2.46 コンドルファ式始動補償器の始動接続図
(2)巻線形
図のように回転子回路に始動抵抗器を挿入して始動する。加速するにしたがって抵抗を減じてゆき,規定速度に達したとき抵抗を短絡してかご形と同じ要領で運転状態にする。
図2.47 巻線形回転子電動機の始動抵抗接続図
|