図2.42 1極当り各相1コイルの三相励磁による空隙に沿った磁界の移動
(1)回転磁界の回転速度(同期速度)
回転磁界は2・1で述べたように発生するのでその回転速度は次の式で示される。
Ns: 回転数毎分〔min-1〕
同期回転数毎分という。
P: 磁極数
f: 周波数〔Hz〕
|
上式から分るように,磁極数が定まれば回転速度と周波数とは常に比例関係にあるところから,この状態を同期といい,この場合の速度を同期速度という。
(2)回転子の回転速度・すべり・トルク
もしも,回転子の回転速度と固定子の回転磁界の同期速度が一致していれば,回転子の導体は少しも磁束を切らないから,その回路には電流が流れない。そのために
トルクT=KφI2〔N-m〕のトルク式からわかるように
K: 定数
φ: 毎極の磁束数
I2: 二次電流(回転子電流)
トルクが発生するためには負荷に応じて回転速度が図2.43のように減少すればトルクが増加する。図2.44はこの状態を示している。
図2.43
図2.44
図2.43において同期速度(Ns)と全負荷回転速度(N)との差に対する同期速度との比をすべり(スリップ)といい,百分率で表す。
次式はこれを示す。
上式からわかるように,すべりs=1のときは回転子は停止,s=0のときはN=Ns即ち回転子が同期速度で回ることを意味する。実際にはこの速度で回ることはない。図2.44はすべりとトルクとの関係を示したものである。
上記のトルクの式はまた次の式で表すこともできる。
この式からわかるように誘導電動機のトルクは回転子電圧E2の自乗に比例し,回転子回路の抵抗r2,リアクタンスX2及びすべりsによって変化することが分かる。この式から停動トルク(最大トルク)Tmを計算で求めると,
すべりが,
のときが最大トルクである。(図2.44参照)この最大トルクを境にして右側の曲線範囲内では安定運転ができ,左側の場合は不安定運転である。
巻線形誘導電動機ではこの最大トルクを始動時に移すことができる。そのためには巻線形回転子に始動用抵抗を付加し,始動時にはこれを使用し,運転時にはこれを短絡して除去する。図2.44中の破線のトルク曲線は始動時の場合を示す。
例えば,巻線形誘導電動機があって,その回転子一相の抵抗が0.3〔Ω〕,もれリアクタンスが1.5〔Ω〕である。この場合最大トルクを始動時に発生させるために,挿入する外部抵抗の値を求めると,
最大トルクの条件は2・4・1(2)における式 即ち
によって,始動時ではs=1であるから
r2=X2となる。この式において外部抵抗
r0とすればr0+0.3=X2となる。
よってr0+0.3=1.5から
r0=1.5-0.3=1.2〔Ω〕
したがって,外部抵抗として,1.2〔Ω〕を挿入すればよい。
|