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7. 接地工事
7.1 接地の目的
 電気機器やケーブルの接地は, 充電部の絶縁破壊や誘導漏えいなどによる外部金属部の電位上昇が, 人体に危険を及ぼしたり火災の原因となったりするのを防止するためのものである。我が国を含め各国の規則でも, 一般的に安全電圧以上の電圧の機器の金属外被及びケーブルの金属外被を接地することを規定している。
 なお, 安全電圧(Safety Voltage)は, 各国の規則により多少異なるが, 従来からIEC規格(60092-101)では, 次のように定められている。また, SOLAS1996改正でSOLAS規定もIEC規格に整合されたので, 船舶設備規程(第21在条)及びNK鋼船規則(項目2.1.4及び2.5.2)もIEC規則に準拠したものに改正された。
(1)直流・・・導体間又は導体とアース間50V以下
(2)交流・・・導体間又は導体とアース間50V(実効値)以下
 接地の目的には上記のほか誘導障害防止などがあるが, 10.3.1に記述, 検討されているのでここでは触れない。
 
7.2.1 機器の接地
(1)船舶設備規程及びNK鋼船規則においては, 電気機器の取扱者を保護するため, 二重絶縁構造と認められたもの以外の電気機器については, その露出金属部の接地を要求している。また, 故障時に帯電のおそれのある露出金属部の接地も求められている。ただし, 導体間電圧が安全電圧以下の場合は, 接地は要求されていない。
(2)移動用の電気機器については, 金属製枠をケーブル又はコード内の導体によりプラグ及びレセプタクルを通じて接地しなければならない, とされている。この場合のレセプタクル及びプラグは, 接地極を持つものであり, 挿入時に両接地極は充電極が接触する前にプラグの接地極に接触する構造でなければならない。
 
 ケーブルの金属被覆は, 船舶設備規程及びNK鋼船規則とも, その両端で有効に接地することを要求している。ただし, 最終支回路は給電側だけ接地すればよい。
 
 機器の接地には, その取付部と船体構造物との接触により有効な接地が確保されるメタルタッチ方式と, 別に接地線を設ける接地線方式とがある。
 一般には次のように使い分けられている。
 
表7.1 接地方式と適用機器
メタルタッチ方式又は接地線方式 回転機(発電機, 電動機など), 配電盤, 充放電盤, 変圧器, 始動器, 分電箱, 厨房機器, 小形器具, 通信・航海・電子機器
接地線方式 絶縁性構造物に取付ける機器, 750V以上の機器, 移動形機器, 船体帰路回路を必要とする機器(溶接機・セルモータ・防食装置)
 
 発電機や電動機などは, 取付部のメタルタッチで十分接地されることが多い。ただし, この場合は, 取付脚部と取付台との接触面は, 少くとも取付脚の一つに対して, 塗料をはがしてよく磨き, 面を平滑にして接触をよくしておかなければならない。
 比較的小形の機器では, 歯付き座金などを使用して取付けると, 上記と同等の効果がある。ただし, この場合は, 塗料をはがしたり磨いたりする必要はない。(図7.2参照)
 
7.3.2 接地線による方式
 機器の非導電金属部と船体金属構造物との間を接地線により接続する方式であるが, 接地線を確実に接続できる接地用端子又はそれに相当する金物をそれぞれに設ける必要がある。船体金属構造物に金物を設ける代りに, 機器取付用のボルトを利用してもよい。
 いずれの場合にも, 接地線はできるだけ短くし, 締付け部には有効な回り止めを施さなければならない。
 
図7.1 接地用金具の船体取付例
(注)ねじ, ボルトの呼び径は, 6mm以上とする。
 
 接地線としては, 固定ケーブル内の接地導体を使用する場合と別に独立の接地線を設ける場合とがある。ただし, 鉛被ケーブルの鉛被のみを接地線とする方法は認められていない。
 断面積の小さい場合は銅より線又は銅編組線を, 大きい場合には銅編組線を使用する。なお,接地線には塗装を施してはならない。
 機器を単独で接地する場合の接地線の断面積は, NK鋼船規則検査要項(H編)では, 表7.2のようになっている。
 
表7.2 接地接続導体の大きさ
(単独の接地線の場合)
(NK鋼船規則検査要領表H2.1.4-1)
導電部導体断面積 銅製接地接続導体の最小断面積
3mm2以下 導電部導体断面積の100%。ただし, 最小は, より線の場合最小1.5mm2, その他の場合3mm2とする。
3mm2を超え
125mm
2以下
導電部導体断面積の50%。ただし, 最小は3mm2とする
125mm2超過 64mm2
(IEC規格に合わせ, 平成14年5月1日付で改正された。)
 
(1)金属構造物に固定された機器
 
図7.2 メタルタッチの例
(注)メタルタッチでは接地が不十分であると思われるときは, 図7.3のように接地線を用いる。
 
図7.3 防振ゴム付機器の場合







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