3・4・4 ガスタービン(gas turbine)
ガスタービンが最初に動いたのは, 1902年コーネル大学の大学院生のS.A.モスが試験的に製作したことによる。その後1905年2人のフランス人アルマンガンとルマールがこれを実用化し今日に至った。
蒸気タービンは蒸気を吹き付けて動力を発生させるが, ガスタービンは, 蒸気の代わりに, 高熱ガスをタービンの羽根に吹き付けて, 動力を得る装置で, 図3・12は基本的な原理図である。図3・12にみるように, 大気圧の空気が圧縮機に入る。ここで3〜5気圧に圧縮された空気は燃焼室に入る。そこへ燃料が入って炉と同じように連続的に燃焼する。この燃焼された高圧高温のガスが, ガスタービンの羽根にぶつかり, ガスが膨張するとともに, ガスタービンには機械的仕事をする。この膨張ガスは排気ガスとして大気に放出される。この場合, 空気圧縮機はガスタービンの軸に直結されているので, ガスタービンの有効出力は, 圧縮機に必要な動力(普通半分以下)を差し引いた残りの動力である。ガスタービンの熱効率を高めるために, 排気ガスを直接大気に放出しないで, 熱交換器をとおして, 燃焼室に入る空気を予熱して大気へ放出する方法(図3・12の点線の部分)又はこの予熱した空気を, 更に, 冷却して圧縮機へ入れる方法等がある。前者を開放再生サイクルガスタービンといい, 後者を密閉サイクルガスタービンという。
図3・12 開放サイクル又は再生サイクルガスタービン原理図
プロペラの推進軸を駆動する原動機として電動機を使用するための一連の装置をいう。
この歴史は古く, 1886年ドイツにおいて, 120Ahの電池を電源とし, 5PSの直流電動機を原動機として, 小舟を毎時11kmの速度を得て運航したことに始まる。
その後は誘導(同期)電動機を最終段の駆動機として用いる交流方式, 直流電動機を最終段の駆動機として用いる直流方式および交直併用方式に分かれて発展してきたが, パワーエレクトロニクス技術の進歩に伴い, 1980年頃を境にサイリスタモータ方式やサイクロコンバータ方式の採用が主流となってきている。
(1)電気推進の分類
電気推進方式は, 電気機器の種類や主回路の電力の性質によって以下の3種類に分類することが出来る。
(a)交流方式
発電器および電動機ともに交流機(器)で構成されるものをいう。発電機には一般に同期発電機が用いられ, 電動機には同期電動機または誘導電動機が用いられる。
(b)直流方式
発電機および電動機ともに直流機(器)で構成されるものをいう。
(c)交直併用方式
発電機は交流機, 電動機は直流機で構成される。
以下の各方式の基本構成, 特徴および採用例を示す。
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基本構成 |
特徴 |
採用例 |
交流方式 |
○定速度方式
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・システム構成はシンプルであるが, 速度制御のためCPPが必要
・電動機の始動対策が必要
・大容量システムに適する
・保守性良
・船内電源と共用可能 |
・1970年代から貨物船, 客船に採用
・プロダクトキャリア 35000DWT
9200kW×1
・客船QEII
44000kW×2 |
○可変速方式
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・周波数変換器(サイクロコンバータ, シンクロコンバータ等)が必要
・広域にわたり速度制御可能
・保守性良
・船内電源と共用可能(ノイズ対策必要) |
・1980年代から客船, 砕氷船, 調査船に採用
・客船 FANTASY
14000kW×2
・海洋研究船 白鳳丸
460kW×2 |
直流方式 |
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・定電圧, 定電源, ワードレオナード方式により速度制御
・大容量システムには不適
・保守面で問題有り
・専用電源設備が必要 |
・1950年代から1970年代にかけて砕氷船, 調査船, 作業船に採用
・砕氷船 ふじ
2250kW×4 |
交直併用方式 |
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・サイリスタレオナード, インバータ方式により速度制御
・DC方式に比べ, 発電機の交流化により, 保守作業は低減
・トルク特性良 |
・1970年代から砕氷船, 調査船に採用
・石油掘削リグ 第3, 5白竜丸
1000kW×4
・砕氷艦 しらせ
3680kW×6 |
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(2)交流方式による電気推進
電気システムは, 適用される船の使用によってこれまで様々な方式が考案され実用化されてきた。特に近年, サイリスタなどの静止型電力変換素子を用いた産業用電動機の可変速度制御技術の発達・普及がめざましく, 高い制御性能, 保守性等の利点を有するため船舶の電気推進システム用としても広く採用されるようになってきた。
回転機についても, これまで制御の容易さやトルク特性の良さから用いられてきた直流電動機が保守に手間がかかるため徐々に用いられなくなってきたが, 代わって交流電動機が, 保守性の良さとパワーエレクトロニクス技術の普及により可変速制御が容易に実現可能となったことから, 推進電動機の最近の主流となってきている。
従って, ここでは交流方式の中でも圧倒的に採用例の多いサイリスタモータ方式とサイクロコンバータ方式について, その概要を述べる。
(a)サイリスタモータ方式
サイリスタモータとは, 矩形波電流形直流式無整流子電動機のことをいい, その主回路構成を図3・13に示す。
ここで直流式の主回路変換器は, 直流電源を作る電源側変換器(コンバータ)および電動機に交流を供給する電動機側変換器(インバータ)から構成され, その中間に直流向路を持つ。電動機の速度調整は, コンバータのサイリスタ制御角を調整し, 直流中間回路の電圧を変えることにより行われる。一方, インバータは, 磁極位置検出装置からの信号をもとに分配器でゲートパルスを形成し, サイリスタにゲート信号を与えれば転流動作を行い, 電動機の回転速度に比例した矩形波交流電流を供給する。
図3・13 矩形波電流形直流式無整流子電動機の主回路構成
(b)サイクロコンバータ
正弦波電流形無整流子電動機のことをいうが, 広義には矩形波電流交流式無整流子電動機も含まれる。いずれも, 固定周波数の交流電源から直流中間回路を介さずに直接異なった周波数の交流に変換する方式であるが, 特に正弦波電流形の場合は, 変換効率が高くまた出力周波数を0から連続的に調整することが出来るため, 矩形波電流形と比較し低速機に適している。
正弦波電流形と矩形波電流形の主回路構成をそれぞれ図3・14, 図3・15に示すが, 図3・14における転流は次のように行われる。
図3・14でB側整流器の点弧パルスをオフとし, A側整流器の各サイリスタ素子に決められた順序に点弧パルスを与えると, 負荷の両端には整流波形が現れ, 次にA電動機の主回路構成(単相分)側整流器の点弧パルスをオフとし, B側整流器に同様に点弧パルスを与えると, 負荷の両端に逆極性の電圧が現れる。このように各整流器に交互に点弧パルスを与え, 繰り返し周期を調整することにより, 正弦波の可変電圧を得ることができる。
図3・14 正弦波電流形無整流子
図3・15 矩形波電流形交流式無整流子電動機の主回路構成
(3)利害得失
電気推進方式は在来方式(ディーゼル直結を想定)に比べ高率で劣るものの, 優れた操縦性, 定速域での高トルク, 低振動・低騒音等の長所を生かして砕氷船, 客船, 各種調査船・観測船, ケーブル敷設船, シャトルタンカー等で, これまでに主に採用されてきた。
在来方式との主な相違点は以下の通りであるが, 電気推進方式は在来方式にない, 多くの優れた特徴を有している。
(a)利点
(i)主機と発電機を共用する場合が多く, 原動機の型式, 重量の均一化, 設備台数および, シリンダ数減を図ることができる。
(ii)操縦が容易で, また, 遠隔操作が容易である。
(iii)発電機の原動機の位置が推進用電動機の位置を拘束しないから, 電動機を任意の位置に選べる。したがって, 中間軸を排し, 電動機を船尾に設けられるから, それだけ貨物倉を増すことができる。
(iv)発電機の原動機を必要に応じ, 分割して設置すれば負荷に応じ, 台数の増減によって運転できるから, 経済運航が可能である。
(v)速度制御が一般に容易で, 逆転が速かで最大出力まで利用できる。
(vi)低速域で大きなトルクが得られて, 砕氷船等の推進システムとして有利である。
(vii)原動機が定速であり, 運転台数(シリンダ数)も負荷に応じて自由に減らし得るのでメンテナンス性に優れる。また, 電気設備としても交流化, デジタル化により, 機器自体の保守整備の簡易化を実現している。
(viii)発電機用であるため原動機の弾性支持が行い易く, またトルク脈動の少ない電動機で推進するので振動・騒音が少ない。
(ix)原動機が定速であり, 環境対策としてNox対策がし易い。
(b)欠点
(i)設備費が割高である。
(ii)燃料消費量がやや大きい。
(iii)静止型変換装置を使用する場合, 高調波に対するノイズ対策が必要となる。
(iv)逆電力に対する検討が必要となる。(場合によっては, 逆電力吸収装置の装備が必要)
(1)主機関の出力の種類のうち常用出力, 連続最大出力及び過負荷出力について述べよ。
(2)主機関の伝達出力とはどのようなものかを述べ, かつ, タービンの伝達出力2000kWのとき軸出力はいくらになるか。
(3)船の速力を30%あげるためには, 伝達出力を何%上げればよいか。
(4)主機関の出力5000PSは何kWになるか。
(5)1000馬力のディーゼル機関において, 1時間の燃料消費量が200kgとすれば, この機関の熱効率はいくらになるか。
ただし使用燃料の発熱量は10000kcal/kgとする。
(6)過給機は如何なる役目をするか述べよ。
(7)調速機の働きの原理を述べよ。また, その必要性につき述べよ。
(8)復水器について述べよ。
(9)電気推進装置中最近主流となっている方式は何か。かつ, これを説明せよ。
(10)電気推進装置の利害得失を述べよ。
以下で述べる補機の種類及び台数等は, 船舶の種類と大小及び機関の型式と出力によって, 非常に差異があるので一般的なものをあげる。
主空気圧縮機及び高圧空気溜 機関始動用
各種冷却用油又は水(清水又は海水)ポンプ 運動部分の冷却用
潤滑油ポンプ 運動部分の潤滑用
燃料油, 潤滑油等移送ポンプ
油清浄機 燃料油及び潤滑油中の來雑物の除去
補助ブロワ(水柱500mmHg空気吐出圧力以下をファン, 以上をブロワという。)
油加熱器等その他 燃料油又は潤滑油加熱用
(1)主機用補機
冷却水循環ポンプ 復水装置冷却用
復水ポンプ 凝結した復水を給水ポンプの方へ送る
潤滑油ポンプ 運動部分の潤滑用
油清浄機 燃料油及潤滑油中の夾雑物の除去
燃料油, 潤滑油移送ポンプ
空気圧縮機等その他
(2)ボイラ用補機
各種復水ポンプ, 各種給水ポンプ, 燃料油移送ポンプ, ボイラ送風機(高圧及び低圧)ドレン循環ポンプ(drain pump), 造水装置用循環(brine)及びエゼクタポンプ(ejectorpump), 各種循環ポンプ, 各種噴燃ポンプ等 その他
消防ポンプ(fire pump) 出火時における消防用ポンプ
ビルジポンプ(bilge pump) ビルジの搬送又は排出に使用するポンプ
バラストポンプ(ballast pump) 脚荷水を注排水するポンプ
サニタリーポンプ(sanitary pump) 衛生用に使用する海水吸上ポンプ
雑用ポンプ 雑用の海水ポンプ
清水ポンプ 清水(缶水及び飲料水)に使用するポンプ
飲料水ポンプ 飲料水用に使用するポンプ
船尾管潤滑油ポンプ プロペラ軸を包む船尾管潤滑油ポンプ
冷凍機装置 冷凍庫用
各室の通風装置用通風機
空調用諸機械
各種工作機械, 電気溶接機等 その他
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