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3. 適正なビジター艇受入れシステムのあり方
 
3.1 受入れ手続きについて
(1)手続きの方法について
 利用者側にとっては、手続きが容易でリーズナブルな利用形態であることが求められる。また、管理者側にとっては、作業負担の少ないシステムの構築が望まれることから、手続きが比較的容易で事務量が許可制に比べて少ない、届出制の導入を推進する必要がある。
 ただし、許可制をすでに採用している漁港については、漁港の利用実態を十分に検討した上で、漁船とプレジャーボートが安全にかつトラブルなく利用できると判断された場合には、段階的に届出制へ移行するなどの配慮がなされるべきである。
 
(2)必要書類について
 利用者のニーズに柔軟に対応するシステム構築が必要になるとともに、漁港を管理する上で最低限必要な書類を容易に保管できるシステムが必要になることから、管理に要する書類については、可能な限り簡素化し、身分証明等については、プレジャーボートを運航する際に携帯が義務付けられている小型船舶操縦士免許を充てることが妥当である。
 
(3)予約システムについて
 将来的には、インターネット等を活用することにより、全国のビジター艇受入れ漁港をネットワーク化し、事前に予約可能なシステムとする必要がある。また、併せて、空きバース情報や使用料などの入港案内、漁港周辺の宿泊施設や飲食施設情報などの提供が可能なシステムを構築する必要がある。
 
(4)使用料の納付方法について
 管理事務の事務量の軽減および利用者負担の低減を図るためのシステム構築が望まれる。
 現行の届出制で行われている現金決済の他に、銀行・郵便局・クレジットカード・コンビニエンスストアでの決済の導入やクーポン券・回数券等による前金制の導入も検討されるべきである。
 
3.2 受入れ体制(条件)の確立について
(1)管理・運営方法について
 漁港におけるプレジャーボートのビジター艇受入れについては、利用者および漁港管理者の負担の軽減を図るとともに、利用者がより多くのサービスを享受できるような新たな漁港管理体制の確立が必要である。昨年改正された地方自治法に基づく指定管理者制度※1を活用し、ビジター桟橋等の施設の管理を漁業協同組合や民間事業者等に代行させる方法なども積極的に導入する必要がある。
 現場対応については、適正な手続きを踏んだ利用者を容易に判断できるような証明書の発行などのシステムづくりが必要である。
 また、利用者に提供するサービスの向上を図る観点から、現場の漁港施設、利用手順・手続き等を熟知している漁業者、地元のプレジャーボートに関する熟練者、利用者団体等からのファシリテーター※2の導入やサービス業のノウハウ等の積極的な導入などの対応を図る必要がある。
 
※1: 指定管理者制度とは、地方公共団体の管理権限の下で、第三セクターなどの地方公共団体の出資法人や公共団体が管理受託者として公の施設の管理を行う従来の「管理委託制度」を改め、地方公共団体の指定を受けた民間事業者等が「指定管理者」として管理を代行できる制度。
※2: ファシリテーター(facilitator)とは、適正な施設利用を促進するための人材。
 
(2)漁業者との合意形成について
 漁業者と利用者が共存できる体制づくりが不可欠であることから、地域毎に自治体、漁業協同組合、利用者等からなる漁港利用促進協議会など関係者が協議する場を設置し、漁港利用および海面利用に関する基本ルールを取り決める必要がある。
 なお、基本ルールの策定に当たっては、漁港の立地特性や利用状況など、地域の事情にあったローカルルールを策定する必要がある。
 
【合意形成が必要な項目】
・海面利用調整
・対象船舶
・利用時間、場所(浮桟橋、岸壁、斜路など)
・保険加入
・水質汚染、廃ガス規制、廃船問題等の環境対策
 
(3)マナーの確立について
 環境への配慮および地元地域と利用者との信頼関係を築くために、ゴミの持ち帰りや排ガス・騒音等の漁港利用に関するマナー等啓発活動を積極的に推進し、利用者のモラルの向上を図る必要がある。
 
3.3 設備・施設について
(1)受入れ施設について
 利用者の負担を減らすとともに、より多くのサービスを提供できるような施設整備が望まれることから、漁業活動との棲み分けが可能な範囲で、漁港管理者が桟橋やトイレなどのビジター用施設の整備を行うことが望ましい。
 また、陸上からのビジター利用に関しても、斜路やトレーラー置き場などの整備を行うのが望ましい。
 
(2)管理棟の設置について
 常設の管理棟については、配置することが望ましいが、ビジター艇の利用回数や収益性等を考慮し、その設置の是非を検討する必要がある。
 
(3)告知(指示)・案内板について
 漁港管理者は、ビジター用施設の整備と併せてプレジャーボート等の放置等禁止区域の設定および利用可能施設の告示を行う必要がある。また、それら区域等を明示した告知看板の設置や泊地を許可施設として公示する場合は、岸壁等に係留場所と認識できるような工夫を施す必要がある。
 さらに、利用者の利便性向上を図るためには、周辺施設の案内板の設置を併せて検討するべきである。
 
3.4 情報発信について
 利用者ができるだけ多くの情報を容易に入手できるシステムづくりが望まれることから、ホームページ、広報、パンフレット・専門誌等を積極的に活用する必要がある。
 全国のボート・ヨットの愛好家で作る情報交換ネットワークJCN(Japan Cruising Network 事務局KAZI編集部内)では、インターネットを介した会員制の情報サービスとして会員同士でビジター艇が利用できる漁港の情報提供などを行っている。
 
3.5 ビジター受入れの経済効果について
 地域社会においてビジター艇の漁港利用による経済効果を波及させるような環境整備が必要である。
 また、漁港の機能を最大限に活用するためには、ビジター艇の適正な利用を図るとともに地域全体としての受入れ体制の確立が必要である。
 瀬戸内海では、ビジター艇受入れ施設として海の駅という制度を推進し、ネットワーク化を構築している。
 
おわりに
 
 今回、漁港におけるビジター艇受入れのあり方を提言することで、既にビジター艇を受入れている漁港については、更にビジター利用が促進され、クルージングの寄港地として、より魅力的な漁港となることが期待される。
 
 また、調査結果から、ビジター艇を受入れているフィッシャリーナを除くと、受入れ体制が整っているのは、わずか100漁港であり、漁港数全体の3%に過ぎない。このような実態は、利用者サイドからみると大変残念なことである。
 
 従って、受入れ体制が整っていない漁港については、地域の状況を踏まえつつ、積極的に受入れ体制の整備に取り組んでもらいたい。
 
 そして、ビジター艇の受入れにともなうさまざまな試行を通し、漁港管理者、漁業者、ビジター利用者の相互理解を深めるとともに、地域の合意形成を図り、地域の実態に即した「よりスムースなビジター艇受入れシステム」が構築されることを期待している。
 
 ボート・ヨット愛好家や国民の満足度を高めるための漁港の新しい管理手法の確立は、「国民に開かれた漁港」づくりにつながり、結果として漁港・漁村地域全体の活性化に寄与するものと考えている。
 
漁港におけるビジター艇受入れシステムの検討委員会委員名簿
(五十音順、敬称略)
 
<委員長>
近藤 健雄  日本大学 理工学部 海洋建築学科教授
 
<委員>
小川 誠一  鋸南町保田漁業協同組合 保田港ハーバーマスター
桑名 幸一  海洋ジャーナリスト
田久保雅己 株式会社 舵社 常務取締役 KAZI編集長
田中重五郎 マリンスポーツ財団 事業部長
中村 宏   B&G財団 事業部 海洋・企画課 課長
 
<オブザーバー>
本田 耕一  水産庁漁港漁場整備部 計画課課長補佐







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