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はじめに
 
 平成13年6月に水産基本法が制定され、その第31条には「都市と漁村の交流等」が謳われており、これからの漁港は、国民の水産業および漁村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆとりのある生活に資するため、新たな利用ニーズに応えていくことが求められている。
 
 千葉県の保田漁港には、地元の漁業協同組合が経営する飲食店「ばんや」がある。ここでは、漁師が採ってきたばかりの新鮮な魚を調理して出していることから人気を呼び、年間約30万人もの来場者で賑っている。また、当日の届出で利用可能な海からのビジター艇利用も年間約2,300隻にも及んでいる。
 
 一方、漁港管理条例に基づきビジター艇の利用を許可制としている港については、その利用者は事前の許可申請手続きが必要となることから、クルージング中において漁港の寄港を結果的に妨げかねない。
 
 従来、漁港の利用については、プレジャーボート等の利用を排除しているものではないが、実際には、現行の漁港利用の手続き方法がビジター艇の利用実態にそぐわないため、これが弊害となり、誰でもが容易に漁港を利用できる状況にはない。さらに、この問題に対しては、漁港管理者においてもビジターニーズにどのように対応すべきか判断に迷うところが見受けられる。
 
 そこで、漁港におけるビジター艇の受入れの現状を把握するとともに、その課題について整理・分析し、ボート・ヨット・水上オートバイなどのプレジャーボートを対象として、漁港におけるビジター艇の受入れに関するあり方等について検討してきた。
 
 本報告書は、漁村地域の活性化への取り組みの一つとして、「国民に開かれた漁港」の実現を目指し、漁業者とプレジャーボート利用者との相互理解を深めつつ、プレジャーボート利用者が利用しやすい受入れ体制づくりについて、そのあるべき方向をとりまとめたものである。
 
 なお、本検討調査は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)の助成金交付を得て行ったもので、近藤委員長をはじめとする委員各位、並びにアンケート・ヒアリングに御協力頂いた漁港管理者等、関係各位の皆様方に、深く感謝の意を表する次第である。
 
平成16年3月
社団法人 フィッシャリーナ協会
理事長 秦 英 樹
 
I. 調査概要
 
I.1. 目的
 漁港は、全国に約3,000港あり、旧来より天然の良港として豊かな海産物や、地元の人々の人情等が、美しい景観と相まってボート・ヨットの愛好家や国民にとって魅力的な観光スポットとなっている。
 しかし、漁業者マインド・規制上の課題等もあり、現状ではまだ広く国民に開かれた状況にあるとは言いがたい。
 そこで、委員会を開催しつつ、漁港におけるビジター艇の受入れの現状を把握するとともに、その課題について整理・分析しビジター艇の受入れに関する基本方針を策定する。
 上記検討を踏まえて、漁港におけるビジター艇受入れの在り方を整理することで、沿岸域である漁港の管理手法を画策し、ボート・ヨット愛好家や国民の満足度を高め、漁港・漁村地域の活性化への波及を目的とする。
 
I.2. 調査内容
 
(1)ビジター艇受入れの現状把握
 現在、ビジター受入れを行っている漁港を対象地区としてアンケート(漁港管理者、漁業協同組合、管理委託先)とヒアリングを実施し、漁港におけるビジター艇の受入れ実態と抱えている課題・問題点などを把握する。
 
(2)課題の整理
 ビジター受入れに関する課題・問題点の解決方法や工夫している点などを整理する。
 
(3)基本方針の策定
 ビジター艇の漁港利用の実態、管理者・地元漁協の意向、課題等を踏まえ、有識者・関係者による委員会を開催して、受入れに関する基本方針を策定する。
 
(4)ビジター艇の受入れ方策の検討
 事務手続き面(許可制、届出制、自由使用制等)について比較検討する。また、管理面(現場管理方法、確認方法、課金方法(課金の場合))について、有識者・関係者による委員会により具体的な方策について検討を加える。
 今回の調査結果として、「漁港におけるビジター艇受入れのシステムの在り方(案)」についてまとめ、現存するビジター艇受入れ漁港及び将来のビジター艇受入れ漁港において、ビジター艇を受入れる場合の参考となることを目標とする。
 
(5)委員会の開催
 3回の委員会を開催する。
 
調査フロー
 
I.3. 調査スケジュール
 
I.4. 委員会の開催記録および委員等
 
(1)委員会開催記録
  開催日 時間 場所
第1回委員会 平成15年7月9日(水) 14:00〜16:00 霞山会館 2階 会議室
第2回委員会 平成15年12月11日(木) 13:00〜15:00 鋸南町保田漁業協同組合
会議室
第3回委員会 平成16年2月19日(木) 13:30〜17:00 霞山会館 2階 会議室
 
(2)委員等
委員 日本大学 理工学部 海洋建築学科 教授 近藤 健雄 氏
マリンスポーツ財団 事業部長 田中重五郎 氏
B&G財団 事業部 海洋・企画課 課長 中村 宏 氏
海洋ジャーナリスト 桑名 幸一 氏
株式会社 舵社 常務取締役 KAZI編集長 田久保雅己 氏
鋸南町保田漁業協同組合
保田港ハーバーマスター
小川 誠一 氏
オブザーバー 水産庁漁港漁場整備部 計画課 課長補佐 本田 耕一 氏
日本財団 海洋船舶部国内事業課
海洋担当リーダー
相澤 佳余 氏







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