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ISO/TC 8/SC 1
国際標準化機構/船舶及び海洋技術専門委員会/救命及び防火分科委員会
第13回 ボルチモア会議出席報告
財団法人 日本船舶標準協会
まえがき
 ISO/TC 8/SC 1の第13回会議が、傘下の作業委員会(WG)とともに2003年4月15日〜17日に、米国メリーランド州ボルチモア市のMaritime Institute of Technology & Graduate Studies (MITAGS)において開催された。
 同会議では、これまで審議してきたISO/CD 24432(袖付保温具)、ISO/CD 17338(防火図記号)、ISO/CD 23269(非常用及び消防用呼吸具:日本がProject Leader)、ISO/WD 24409(安全表示)等の新たな規格作成作業など、盛りだくさんの項目について審議が行われるとともに、日本が提案した新作業項目の「船舶用火炎感知器の基準」の作成作業が開始された。
 そこで、これらの国際規格案等に日本の意見をできるだけ反映させるべく、本会防火専門分科会委員長の吉田公一氏(海上技術安全研究所)、日本舶用品検定協会の久野勝秀氏(本会防火専門分科会委員)及び本会救命専門分科会委員の太田 進氏(海上技術安全研究所)に同会議に御出席いただいたので、ここにその結果を報告する。
 
開催日及び場所
平成15年4月14日(月)から4月16日(水)
Maritime Institute of Technology & Graduate Studies (MITAGS)
Training & Conference Center
5700 Hammonds Ferry Rd.
Linthicum Heights (Baltimore), Maryland, USA
 
1. 開会
 SC 1議長 Claudio Abbate(イタリア)が、US Marine Safety Associationに会議施設の提供に感謝し、開会を宣言した。
 会議のスケジュールを次のとおり決定した。
4月14日(月)は終日WG会議を開催する。
4月15日(火)は、午前10時からSC 1会議を開催し、午後はWG会議とする。
4月16日(水)は、午前中はWG会議を開催し、SC 1会議は午後1時から再開する。
 
2. 出席者の確認
 ISO/TC 8議長からの会議の成功を祈る旨のメッセージが紹介された。
 出席者の確認がなされた。デンマーク代表がMr. Hans-Jørgen MølstrandからMs. Ibsenに変更した。出席者は添付資料2のとおりである。
 
3. 議題の採択
 日本からパイロットラダー関係のISO規格案(DIS 16848「水先人用梯子」及びDIS 799「舷側梯子」)の審議の促進要請が来ていることが紹介された。遅れている作業項目については、SC 1事務局からの報告の議題の中で検討することとなった。
 議題案SC 1 N 164(添付資料1参照)を採択した。
 
4. 決議起草委員会委員の選出
 Mr. C. AbbateとMr. Kurt Heinzを指名した。(SC 1決議 40)
 会議は英語のみで進行することとした。
 
5. SC 1 事務局からの報告
5.1 TC 8 釜山会議の報告について
 SC 1事務局は、TC 8釜山会議の概要報告を行った。
・TC 8の現議長のCaptain C. Piersallがさらに3年間TC 8議長職を継続する。
・新作業項目に賛成する国は、必ず参加エキスパートを登録することがTC 8の基本とすることとした。当該エキスパートは必ずしも会議に出席しなければならないということはないが、通信ベースでISO企画作成に参加すること。
 
5.2 IMOとの関係について
 IMO/FP 47へは、ISO/TC 8からFP 47/INF. 6を提出し、TC 8/SC 1の作業の現状を報告した。
 Directional Sound System (DSE) について、FP 47にてLow Location Lighting system (LLL) との同等物として導入することを検討した。DSEの基準案がFP 47に提出された(ISO 13571のLLLに関するISO基準を基にしたもの)。FP 47では、避難誘導に関する一般的な性能基準を作成すべき旨合意した。本件については、英国が国内規格作成作業を進める準備をしている旨報告し、更にTC 8/SC 1へ新作業項目提案を提出する意向である旨表明した。
 IMO/FP 47ではISO 17631(防火、救命設備及び脱出手段に関する図記号)の中身を採用して、IMO総会決議A. 654(16)「火災制御図用記号」の改正を作成した。これはIMO/MSC 77の承認を経て、今年秋のIMO第23回総会で採択される見込みである。
 IMOでは、規則で強制化するISO企画、あるいは勧告して実質上は使用せざるを得ないISO規格の購入を強制されることに難色を示す国がある。これは技術的な議論ではない。
 
5.3 メンバーシップについて
 ポルトガルが正式にTC 8/SC 1のPメンバーとして参加した。
 中国はSC 1のPメンバーであるが、IMO/FPの会議の場では中国がISO/TC 8/SC 1の作成したISO規格のIMOでの使用に難色を示すことが多々あるため、中国のSC 1への実質的な参画が望まれている。SC 1議長及び事務局が中国に連絡を取ることとなった。
 
5.4 作業項目の確認について
 遅れている作業も含め、すべての作業項目の現状を確認した。
・シーアンカーに関するISO規格(ISO 17339)は発行された。
・パイロットラダー(DIS/799)については、DAM投票のそのコメントの処理は済んでいるので、早急にテキストを完成してFDAMの投票にかける。
・パイロット・アコモデーション・ラダー(DIS/16848)はDIS投票とそのコメントの処理は済んでいる。DIS投票が100%賛成であった。図の修正に時間を要したが、ISO中央事務局へ出版用の原稿を送付済みである。ISO規格の発行を待っている状況である。
・エンバケーション・ラダー(CD/5489 Ed.2)も同様の図の修正を済ませて、CD投票を行う。
・CD/17338は今回会議のWG 3で進展した。追ってDIS投票を行う。
・DIS15736パイロテクニックはISO中央事務局にDIS投票の原案を提出済み。
・Position indication lightは、draft作業をして近々にCDとして登録する。
・DIS/22488(消防員装具)は投票中である。
・日本から提案したflame detectorのNWIPは、ポルトガルと伊が参加を表明したため、新作業項目可決条件を満たした。
・23269-1(非常用呼吸具)の CD投票は終了している。各国提出コメントを今回会議で検討した。23269-2、23269-2 及び 23269-4もPart 1と同様の変更を施して(Project leader)、CD投票にかける。
・高速船のfire control plan/life saving appliance planはMr. Abbateが進める。
 
5.5 将来の作業項目について
 以下の新作業の可能性を協議した。
・LSA Code (DE 43/WP. 6):WG 1で検討する。
・EUのMED Table-2にある国際基準がない救命設備及び防火設備に関するISO規格の可能性:WG 1及びWG 3で検討する。
・Fire Safety SystemのTechnical standards: ISO/TC21が機関室用water mistの規格を作成していることに注意する。IMO/FPにおける審議に注目して、WG 3で検討する。
 
6. リエゾンについて
 ISO/TC92とTC 8/SC 1とのリエゾン設立がTC 8により承認された。TC92の次回会議は9月の米国ボストンで開催するので、そこへのTC8 /SC 1からの参加がTC92から招聘されるであろう。
 TC94が提案してるリエゾンの確立とJoint Working GroupによるISO/DIS 22488(消防員装具)及びDIS/CD 23269(呼吸具)の共同開発並びに、将来はこれらをTC94へ移管する提案について協議した。舶用の消防設備(CD 23269 及びDIS 24488)については、TC94が作成したISO規格を勘案して、TC 8/SC 1で作成作業を継続することにSC 1は合意した。また、Joint WGは必要ない旨合意し、TC94からにリエゾンのTC 8/SC 1への参画を引き続き歓迎することに合意した。各国は、国内レベルでTC94メンバーからのコメントを取り入れているよう要望された(現在、独、米、日で実行されている)。
 TC145とのリエゾンは効果的に継続している。
 TC58(高圧シリンダ容器)は舶用CO2消火装置のボンベについてISO/CD 3500(船舶用CO2消火器用シリンダ:添付資料17参照)に関してコメントを求めてきたため、TC 8/SC 1からコメントを返した。TC58とは今後も連絡を保つこととなったが、正式なリエゾンは不要の旨合意した。
 
7. WGからの報告
7.1 WG 1(救命設備及びはしご作業委員会)の報告
(1) SC 1/N 154:NP「生存艇及び救助艇の装備品」は、投票の結果新作業項目として承認されたことが報告された。各国からのコメントに基づきWDの見直しを行い、CD案を作成した。
(2) CD/24432「袖付保温具」は、今回会議においてCDの見直しを終了し、DIS 案を作成した。
(3) 将来の作業項目について話しあった結果、MES(Marine Evacuation System)のSignaling規格が有望であろうとのことであった。これについては、英国が提案を準備している可能性がある。また、救命設備の各種試験法について意見交換が行われたが、特にまとまったものはなかった。
(4) 次回の中間会議については、2003年11月上旬にイタリア(ミラノの可能性が高い)で開催されることが有望である。
 
7.2 WG 3(防火設備作業委員会)の報告
(1)17338(防火仕切の図記号)はDIS投票にかける旨WG 3事務局から提案された。SC 1はこれに合意した。
(2)24488(消防員装具)はDIS投票中である。
(3)23269-1(呼吸具)はCD投票済み。投票に寄せられたコメントを検討し、CD文書を修正した。その結果を考慮に入れて同規格案を修正し、DIS投票にかけることにSC 1は合意した。Project leaderは20269-2、23269-3及び23269-4のCDを、Part 1へのコメントを勘案して、用意することとなった。
(4)24409-1(避難安全用の表示)及び24409-3はWDを検討し、CD文書を完成させたので、CD投票にかけることにSC 1は合意した。
(5)火炎感知器(flame detector)の日本からの新作業項目投票は、賛成10カ国、原案審議参加6カ国で承認された。この投票に添付されたWDをそのままCD投票に出す旨、WG 3が提案し、SC 1はこれに合意した。
(6)aerosol type 消火装置の新作業項目案を検討し、新作業項目として投票にかけることにSC 1は合意した。
(7)ISO15371(deep fat cocking equipment)用消火装置に関する疑問が紹介された。
 
8. 規格案の検討結果について
8.1 ISO/CD 17338 (防火仕切りの図記号)
 CD投票に寄せられたコメントはWG 3の東京会議及びストックホルム会議において解決したので、DIS投票にかけることとなった。
 
8.2 ISO/CD 24432 (袖付保温具)
 CD投票に寄せられたコメントはWG 1の今回会議において解決したので、DIS文書案としてISO中央事務局に出すことにSC 1は合意した。
 
8.3 ISO/CD23269-1 (非常用呼吸具)
 CD投票に寄せられたコメントはWG 3の今回会議において解決したので、DIS文書をProject leaderと事務局が用意して、投票にかけることにSC 1は合意した。
 なお、Project leaderは、Part 2、Part 3及びPart 4について、Part 1へのコメントを勘案して、CDを用意するよう要請された。これらの文書をCD投票にかけるべく準備する。
 
8.4 ISO/FDIS799(パイロットラダー)
 FDIS文書はISO中央事務局に送付し、FDIS投票の開始をする。
 
8.5 ISO/DIS 16848(パイロット・アコモデーション・ラダー)
 DIS投票とそのコメントの処理は済んでいる。DIS投票が100%賛成であった。図の修正に時間を要したが、ISO中央事務局へ出版の原稿を送付済みである。ISO規格としての発行を待っている状況である。
 
8.6 ISO/CD5489(エンバケーション・ラダー)
 CD/5489 Ed. 2も同様の図の修正を済ませて、CDとして投票にかける。
 
9. 新規格案の作成について
9.1 ISO/WD 24409 (避難安全用の表示)
 WG 3がCD文書を用意しつつある。それをCD投票にかけることにSC 1は合意した。
 
9.2 生存艇及び救助艇の装備品の規格の新作業項目
 本件については、投票の結果CDを作成することが承認されており、WDに対する各種コメントを考慮の上、CDを作成した。日本は、このCDにおいて、別途規格を作成中である「袖付保温具」(CD 24432)のみならず、「バッグ型保温具」も含めるべきとの意見を提出しており、この意見は採用された。
 
9.3 火炎感知器の新作業項目
 新作業項目提案への投票は、作業への参加と賛成が日、米、スウェーデン、デンマーク、ポルトガル及びイタリアの6カ国から示され、その他、インド、ロシア、ドイツ、韓国の4カ国が賛成したので、新作業項目として承認された。我が国が用意したWDをそのままCD投票日出すことにSC 1は合意した。
 
9.4 エアロゾル消火器
 Don Murray氏が用意したWD案(SC 1 N 165:添付資料14参照)を付して、新作業項目投票を出すことにSC 1は合意した。
 
9.5 ISO/15371(深鍋油調理器の消火装置)
 改正が必要である旨の意見がWG 3に照会されたことが報告され、当該規格の次回の見直しにおいて、詳しい議論をすることとなった。
 
10 将来の作業項目
 WG 1では、将来の作業項目について検討した。最も有力と考えられるのは、MES(Marine Evacuation System)のSignalingの規格であるが、具体的予定は無い。将来の作業項目については、次回WG 1でさらに検討する予定である。
 
11 次回以降の会議予定
 次回SC 1本会議は、2004年4月又は5月に開催予定である。2004年は欧州での開催の番である。場所はロンドン(英国)が有力であるが、会場の提供があれば事務局へ通知するよう、要請された。
 WG 1会議は今年11月第1週又は第2週に、イタリアで開催する予定旨、WG 1が報告した。場所はミラノ(イタリア)が有力である。
WG 3会議は今年11月当初に開催する予定旨、WG 3が報告した。場所は未定であるが、トリエステ(イタリア)が有力である。これらのWG会議がイタリアで開催される場合には、会議の日程を調整し、両WGへの出席を容易にすることが望ましい旨合意した。
 
12 その他の事項
 検討事項なし。
 
13 決議の採択
 以下の決議を採択した。
・SC 1決議40:決議起草委員会医院に、Mr. C. ABBate及びMr. K. Heinzを指名する。
・SC 1決議41:以下の項目についてCD投票にかけることを合意した。
- CD火炎感知器(新作業項目:ISO番号はISO中央事務局から付与される)
- CD 24409-1及びCD 24409-3(避難安全用の表示)
- CD生存艇及び救助艇の装備品(新作業項目:ISO番号はISO中央事務局から付与される)
・SC 1決議42:以下の項目についてDIS投票にかけることを合意した。
- DIS/23269-1(非常用呼吸具)
- DIS/173389(防火仕切の図記号)
- DIS/24432(袖付保温具)
・決議43:次回会議は、ロンドンで2004年4月〜5月に開催することに仮に合意した。会議場所については、欧州の他の場所での開催の可能性をSC1事務局が探る。WG1はイタリア(ミラノまたはジェノバ)とWG3はイタリア(トリエステ)で2003年11月初頭に開催することに仮に合意した。
 
14 閉会
 議長は、US Maritime Safety Associationに会議場等の提供について謝辞を述べ、会議を閉会した。







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