【調査の概要】
背景
バタンガス州は、マニラ首都圏に次ぐ経済基盤を持ち、ルソン島南部の経済・政治的中心地である。州都であるバタンガス市は首都マニラから南へ約100kmの位置にある。バタンガス州では、マニラ首都圏への物流拠点として、リパ市にあるフェルナンド空軍基地を民間と共用し、カラバルソン空港として整備拡張する計画が検討されている。
調査目的および内容
調査は、カラバルソン空港整備計画策定の必要性と事業実施の可能性の両方を確認することを目的として実施された。
1)カラバルソン空港 空港施設には、訓練機用の格納庫、管制塔、消防車庫、航空援助施設のVOR/DME等がある。滑走路は1,500m(03-21)が1本と、滑走路を挟んで西側と東側に平行誘導路が1本づつある。エプロンは、滑走路南側へ格納庫とともに1つと、滑走路中央西側へ1つある。空港の拡張は、北側を考えざるを得ないが、民家も少なく土地収用への問題は軽微と考えられる。
2)マニラ国際空港 マニラ国際空港は、今後予測される航空需要の増加に備え、空港のターミナル施設容量の拡充を行っている。しかし、空港周辺は都市化が進み拡張用地の確保が望めない状況にあり、滑走路の容量が問題となり、現在の航空機使用事業をマニラ周辺の空港へ移転するよう検討中である。
3)空港周辺のインフラ整備および工業団地などの開発状況 マニラ〜カラバルソン空港は、既存の国道と高速道路を利用すれば約1時間30分で到着する。一部の区間で高速道路が未整備であり、これらを整備すれば所要時間はさらに短縮できる。バタンガス州政府は、高速道路の延伸計画を最優先で実施する方針である。バタンガス〜マニラの国道沿いには、工業団地が多く建設されている。しかし、アジア地域の経済低迷のため販売実績は39.7%と低い。
問題点の整理
・英国コンサルタントが、ドイツのメーカーより依頼を受け2002年7月に作成した「カラバルソン空港整備計画書」があるが、経済・財務分析の前提条件が不明確であり、かつその内容に多くの齟齬がある等、資金調達のベースであるF/Sとしては不充分である。
・カラバルソン空港はマニラ国際空港の機能を補完する(競合する)ものと考えられるため、マニラ国際空港の将来の開発構想、スービック空港、クラーク国際空港などマニラ首都圏にあるその他の空港の調査、関係機関への調整を図る必要がある。
・マニラ国際空港の航空機使用事業の移管については、マニラ国際空港公団が検討中であり、早急に移管候補地を選定しなくてはならない。カラバルソン空港も候補地の1つであり、関係機関との調整も必要である。
今後の見通し
州政府は地域経済発展とマニラ国際空港の補完のため、3,800mの滑走路を持つ国際空港規模の空港整備を考えており、英国コンサルタントの作成したカラバルソン空港整備計画書を国家経済開発庁へ提出している。しかし、前述したとおり内容が不充分なため調査団は日本政府の技術協力による整備計画の策定を提案した。しかし、州政府は早急な調査実施を希望しており、別途資金で調査が行われる可能性もある。
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