背景および調査事項
2000年2月から2001年5月にかけてJICAによるアスタナ新首都総合開発計画M/P調査が実施された。またアスタナ新首都から約20km南南東に位置するアスタナ国際空港では空港設備の拡張・改良を行う空港改修事業が実施中である。JICA M/Pではアスタナ国際空港からアスタナ都心部を経て国鉄アスタナ駅を結ぶ路線、既存の都心と新都心を結んでいる環状路線、および新住宅地域への路線の計3本の軽快鉄道(LRT)の建設が提案され、このうち空港と国鉄アスタナ駅を結ぶ路線は2010年を目途に提案されている。本調査ではこのLRT計画実施に向け我が国からの技術協力の可能性を年頭に置き関係省庁の聞取りと既存資料や関連情報の収集の他、現地踏査、現状実態調査を実施した。
現況
アスタナ市の人口は著しい開発に伴い年々増加している。1998年は27.5万人、1999年では32万人で現在2002年は50万人とも言われている。これは一時的に開発地区事業に携わる労務者が人口増加原因と考えられ、今後の人口推移には十分注意しておくべきである。公共交通はバス、ミニバスおよびトロリーバスからなっており市民の多くはバス交通に依存している。バスは33路線あり、そのうち鉄道駅と空港を結ぶ路線は合計10台でまかなっており約10分間隔で運行されている。所要時間はおよそ50分で運賃は20Tenge(1US$=153Tenge)である。ミニバスは市が認可した民間企業により運営されており、およそ300台あり運賃は25Tengeである。トロリーバスは5路線あり運賃は20Tengeで総延長路線は51kmである。現在空港から旧市街地の間(約20km)には道路の渋滞は無く車での所要時間は15分である。
旧市街中心部をはじめとした都市開発に伴い、いたるところで道路整備工事や新設道路工事が行われておりイシム川に架かる新しい道路橋も完成している。アスタナ市主導で着々と道路整備が進んではいるものの、大量の公共交通輸送が可能なLRTを含めた軌道系交通を考慮した道路計画が策定されていないのが現状である。
問題点と今後の見通し
アスタナ市で登録されている自動車は1999年でおよそ3万台あり総人口に対しては低い水準と言える。しかし首都開発および道路網の整備が進み、経済成長にともなうアスタナ市民の所得向上を踏まえると、人口増加とともに道路交通量が増えると予測できる。JICA M/Pでは2030年の自動車保有台数は28万台と予測されており、道路交通に代わる軌道系交通システム(LRT)の導入を提唱している。
上記を踏まえると公共交通においては依然バス、トロリーバス、ミニバスが主流ではあるが、いずれは軌道系交通を導入することにより更なる都市交通ネットワークの強化を図ることは必要であると考える。しかし現状はアスタナ国際空港の整備・拡張工事や都市開発に伴う建設ラッシュによる急激な発展により、将来の人口の伸びや道路交通の需要予測は非常に難しい。また新都心地区の完成に伴う行政機関をはじめ企業や住民の移転がいつになるか不透明な現状では、JICA M/Pで提案している空港−国鉄アステナ駅を結ぶLRT路線(2010年を目標)の着手は若干時期尚早と考える。一方で今回の調査を省みればアスタナ市東部の住宅地区開発が急速に進んでいることから、旧市街地と東部の住宅地区を結ぶ軌道系の公共交通を優先的に進めることが有効であると思料する。
市民の公共交通であるトロリーバス
市が認可している民間のミニバス
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