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II. ホーチミン市
1. ホーチミン市の位置づけと役割
 
 ホーチミン市は南ベトナムにあり、北はビンヅオン州、北西部はタイニン州、北東部はドンナイ州、南東部はバリア州、南西部はロンアン州とティエンザン州に接し、南は15kmの海岸線に接している。
 
 ホーチミン市は、ベトナム最大の都市で、南ベトナムにおける経済、商業、文化、科学の中心であり、首都ハノイに次いで位置付けかれた都市である。また、道路、鉄道、水路、空路などの主要交通路の中心地でもある。
 
2. 地理的・経済的特徴
 
 ホーチミン市の面積は2095km2で、その内訳は以下のとおりである。
市街地区:442km2
郊外地区:1653km2
 
 人口は、1998年で509.6万人、そのうち、361.1万人(70.9%)が古い地区、63.2万人(12.4%)が新しい地区、85.2万人(16.73%)が郊外地区に居住している。人口密度は、1、3、4、5、6、10、11の各地区、フーニュアン地区(1km2当たり36,000〜56,000人)が最大で、特に、地区5が1km2当たり62,234人である。また、カンザー、クチ、ニャーベ、ビンチャンの地区(1km2当たり82〜890人)が最も低い。
 
 ここ数年間で、人口は、1980年の320万人(都市部の230万人)から2001年の530万人(都市部の430万人)へと著しく増加したが、このうちの150万人は非定住人口である。ここ21年間で、人口は165%(都市部が191%)上昇した。したがって、交通インフラが交通需要を満たすことができない。
 
 地理的優位性がこの都市を国の経済の中心地にしている。しかし、過去の開発が人口や経済に過剰な負荷をかけ、生態上の環境バランスを失わせている。工業もこの都市に著しく集中している。この都市には、2万8600の企業(その80%が市街地にある)が13の輸出加工地区に存在する(タンビン、タントュアン輸出加工地区、港湾もこの都市にある)。
 
 集中的な工業地帯が非常に急速に構築されたために、多くの熟練度の低い労働者と若い労働者(70%がこの都市の郊外に居住している)が引き付けられた。このようにして、多数の職工がホーチミン市に入って来ることになった。その上、交通容量、宿泊施設、電気、水の供給、その他の施設に関する人々の要求が満たされていない。また、最近では新たに工業地帯が集中的に建設され、そのために周辺地域が都市化されて、さらに急激な人口の移動を招くことになった。特にホーチミン市の境界線でラッシュ時の混雑が発生している。この都市には、港湾や工場があるので、ここを通過する多数の貨物自動車が、渋滞と事故を起こし、また騒音・排気ガスによる環境汚染の原因となっている。
 
3. 経済成長
 
 2005年までの経済成長の状況は次のとおりである。
 GDPの平均年間成長率は11%を超えるが、そのうち、少なくとも9.5%がサービス業で、13%が工業・建設、2%が農業・水産養殖業である。
 
 2005年までの1人当たりの平均GDPは、2000米ドルで、2010年までには、3000米ドルとなるであろう。
 
4. 現在の交通事情
 
4.1 道路
 
4.1.1 交通網は、交通省が管理する幹線道路、州道、州間を結ぶ道路、市が管理する市街地道路から成っている。全道路の総距離数は約1685kmである。
 
 交通のための土地は不足しているが、都市部に不均等に分配されている。
 地区1、3、5などの古い地区の中には、土地の交通分担率が市街地面積の7.8〜14.2%のところがあり、人口が多いために1000人当たりの路線距離も0.26kmである。
 
 地区4、6、8、10、11、ビンタン地区、フーニュアン地区、およびタンビン地区などの古い地区の中には、土地の交通分担率が市街地面積の2.2〜2.8%のところがあり、1000人当たりの路線距離は0.16kmである。
地区2、7、9、12、および郊外地区などの新しい地区では、土地の交通分担率は市街地面積の0.2〜1.1%で、1000人当たりの路線距離は0.9kmである。
 
4.1.2 この地域の道路網に関する技術的な状況も著しく偏っている。
 
・古い地域の道路網は正方形になっているために交通が便利で、路面もアスファルト・コンクリートで舗装されているため滑らかで、排水システム・照明設備・舗装された駐車場などがそろっている。
・新しい地域の道路網は路面が海面よりも低く、舗装幅も狭くて樹木もない。
・郊外地区の道路網はアスファルトのみで舗装されている。
 
 一般に、ほとんどの道路の幅が狭い。14%の道路は12m以上の道路幅があり、公共交通システムの編成に便利である。51%の道路は7〜12mの道路幅で、乗用車やマイクロバスには便利である。35%の道路は7m以下の道路幅で、2輪車にのみ十分な広さと言える。
 
4.1.3 直線と環状の道路システムが計画されているが、そのほとんどがまだ建設されていない。放射道路は改善され更新されているが、その質はまだ十分ではない。その上、既存道路の技術的グレードと断面は計画時の要件を満たしていない。
 
4.1.4 ホーチミン市には1350箇所以上の交差点があり、そのうち120の交差点が重要な平面交差点で75の主要な市街地道路と国道上にあるが、その処理能力は低い。現在、インターチェンジ方式で建設されている交差点はわずか8箇所である。
 
4.1.5 ホーチミン市の駐車場システムは次のとおりである。
 
・州間を運行するバスのターミナルは4箇所あり、ミェンドン、ミェンタイ、アンスーン、キートウオンのバスターミナルである。 面積は14.4ヘクタール(14.4万m2)、年間の乗客処理能力は2790万人である。
・4つの主要なバスターミナルがあり、ベンタン・マーケット、チョロン、トウドゥック、ホクモンにある。総面積は0.42ヘクタール(4200m2)である。
・駐車場は10箇所にある。その総面積は8ヘクタール(8万m2)である。
・9箇所にタクシー停車場があり、市の約5500台のタクシーの駐車需要を充たしている。
・6箇所に整備ステーションがあり、総面積は7へクタール(7万m2)で、その内訳は次のとおりである。ゴーバップ(1箇所、0.7ヘクタール[7000m2])、タンビン(3箇所、2.8ヘクタール[2万8000m2])、地区11(1箇所、0.2ヘクタール[2000m2])、フーニュアン(1箇所、3ヘクタール[3万m2])である。
 
 一般に、バスターミナルの数と面積はわずかで、都市部の約0.1%である。市内にある州間運行バスのターミナルは、少ない土地と都市部の渋滞の原因となるため不適切である。まだ専門のバスターミナルは設置されていない。
 
4.2 鉄道
 
 国有鉄道は、ホアフン駅の南北に走る1路線のみである。以前はホーチミン市行きの路線が4本あった。サイゴン〜ハノイ、サイゴン〜ロンアン〜ミトー、サイゴン〜ライティエウ〜トゥーザウ1〜ロクニン、サイゴンン〜ゴーバップ〜ホクモン(サイゴン中央駅)である。また、サイゴン港とタンカン港行きの2本の特定路線があった。
 
 市を横断する南北路線には14の平面交差点があり、渋滞と事故の原因となっている。
 
4.3 水路
 
・港湾:すでに建設されているタンカン、サイゴン、ベンゲー、タントュアンなどの港は、都市に深く入り込んだところにあるが、Victやニャーベなどの新しく建設された港は都市部からあまり離れていない。港の取扱能力は年間2420万トンである。港へ接続する専用道路がないために、港に係わるあらゆる活動が都市の道路を経由して行なわれ、これが都市の渋滞の原因となり、さらに港の取扱能力にも影響を与えている。
 
・河川港:河川港は分散しており、主にケンドイ川とケンテ川沿いにある。これらの河川港のインフラ技術は貧弱で、ほとんどの作業を手作業で完成させたものである。そのため河川港の取扱能力は低く年間約180万トンである。
 
・航海路:サイゴン地区の港への航路が2本ある。たとえば、航路距離が85kmのロンタウ航路(最も浅い河床がコード7.0で、積載重量トン数15,000〜20,000トンの船舶用)と、航路距離が40kmのソアイラップ航路(最も浅い河床がコード5.3で、積載重量トン数が5000〜7000の船舶用)である。船舶および小型船舶の航行密度が高い上に、航路が両者とも長く狭いため、環境汚染と安全性欠如の原因となっている。
 
・地域の河川システムをつなぐケンテ川とケンドイ川に2つの主要路線が運行しており、西部地区とホーチミン市間の貨物輸送を行なっている。河川と運河の密度はかなり高いが、その中には、浸食が進み堆積物が沈殿している河川と運河もあり、また橋梁のクリアランスの制約も受けている。そのため、河川の輸送システムを中断することなく、効率的に利用することが不可能になっている。
 
4.4 航空路
 
 ホーチミン市には空港が1つしかない。それはタンソンナャット空港である。2002年の乗客処理能力は年間550万人に達した。今のところ、滑走路は1つであるが第2滑走路が建設されつつある。総面積は約816ヘクタール(816万m2)で、都市部にある。このため、市の中心部から、ナムキーホイギア通りとグエンバンチョイ通りに沿ってチュオンソン道路までの地帯で、常に渋滞が発生している。
 
4.5 公共交通システム
 
 2002年12月現在、ホーチミン市の車両数は約16万台で年率12%の割合で増加し、オートバイが240万台で年率17%の増加、自転車の数が100万台以上である。現在のホーチミン市の交通は、公共交通が37%、自家用車(主な2輪車を含む)が93%という構成になっている。
 
 市の人口は700万人(530万人が常住人口、150万人が非常住人口)で、市内電車はない。1976年には、約1000台のバスがあり、当時約300万人のトリップ需要の10%を賄っていた。2002年には、約2070台のバスが約700万人のトリップ需要の3.7%を満たした。このことは、公共交通システム能力の深刻な劣化を反映している。その主な理由は、インフラの容量が経済と社会の発展速度に追い付かず、未だに公共交通システムに対する適切な考慮がなされていないためである。
 
5. ホーチミン市の2020年までの交通開発計画
 
 2020年までに、道路交通、鉄道、水路、航空路の各システムの建設を完了して、ホーチミン市を確実に発展させ、国の中枢、南部の重要な経済地区の1つとし、さらに、東南アジアにおける重要な商業サービスの中心地へと発展させるべきである。
 
5.1 ホーチミン市の交通計画立案のための基本的な規則
 
 ホーチミン市における都市交通の立案は、交通省によって承認された2020年までの、市の都市空間開発に関する一般的計画に基づいて行なわれるべきである。
 
 ホーチミン市の都市交通は「開放都市」の観点から計画されるべきである。特に、衛星都市、集中した工業地帯、海港、空港、密接に協力する各州の連携により、この地域の経済と社会の優位性を展開し活用することが可能である。2020年までに、交通ための土地利用(能動的・受動的交通を含む)を、市街地の平均15〜25%になるようにすべきである。
 
 公共交通システムを開発することは重要な職務である。公共交通のサービス能力は、2010年のトリップ需要の30%に達し、2020年にはトリップ需要の50%に達するようにするべきである。
 
 都市交通を開発するための投資は、国家基盤建設のための重要な方針の1つである。それは、5カ年計画と緊急の問題を解決する年間計画を立て、ホーチミン市の都市開発を促進するために適切な段階的な投資計画を設定することである。
 
 現在、JICAを含めていくつかのコンサルタント会社が、ホーチミン市のための総括的交通計画の検討を進めている。しかし、今のところ、交通省への承認のための検討結果の提出は行なわれていない。







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