IV. カイロの都市交通
1. 歴史的外観
カイロは、国の経済成長に伴い、人口と都市経済の面で、エジプトの首都圏として発展してきた。カイロ市の歴史は、BC4200年にナイル川の河口地域に始まったが、現在の地域での近代化は19世紀に起こった。当時カイロは、16km2に人口267,000を有する商業・貿易の中心として最も進んだ都市集団であった。
エジプト政府は、1960年代に、カイロ東部の集中的な土地開発プロジェクトを行なった。この期間に、ナイル川を南北に走る交通ルートから砂漠地帯へ向かう東西の交通ルートまで、都市化の方向づけがなされた。
2. 交通量の増加と現状
過去10年間、カイロの都市としての発展は比較的緩やかなものであったが、交通需要は急激に増加した。大カイロ圏(GCR)の人口増加は、国の人口増加よりもずっと緩慢なものであったが(1990年代に1.2%)、現在では1500万人程度と推定され、カイロは中近東と北アフリカ地域における唯一のメガシティとなっている。
人口密度は1km2当たり879人(1986年)から1685人(1996年)に増加した。
GCRの車両数は、カイロ行政地区が、1989年の人口千人当たり45台から今日の77台へと増加したことに伴い、驚異的に増加した。GCRに属するギザおよびカルオビア行政地区は、それ以上に高い可能性がある。他の中東諸国の自動車の増加率を見ると、近い将来、人口千人当たり100にまで上昇することも予想される。この急速な自動車の増加のために、カイロの交通状態は世界の主要都市の中で最悪のものとなった。
現在、カイロの平日の平均移動速度は、時速10km以下と推定されており、ラッシュ・アワーの移動速度は、カイロ市のいたるところで時速5〜6kmになっている。この極端な混雑状況は、国の経済に年間約4億ドルの損失をもたらしているものと推定され、時間のロスと車両の運転経費を増大させている。これには、交通渋滞で旅行を見合わせるために起こる損失は含まれていない。1980年代末から、政府は様々なインフラの改善を実施している。たとえば、間もなく完成予定のカイロ・メトロ2号線や、「環状道路」・「6th of October」立体交差・「26th of July」などの多数の高速道路、そしてナイル川に架けた7つの橋などである。これらの改善は成功し、現在「メトロ」は公共交通の四分の一を占めているが、都市交通の悪化を防ぐことはできていない。
3. 都市部の開発
大カイロ圏は都市部全体で構成され、大カイロ首都圏(GCMA)とも呼ばれ、人口統計上は小行政区域である51のKismsと408のShiakhasから成っている。人口は1127万人である。新たにマスタープランが作成され、このプランにより提案された主な方針は、次のとおりである。
・増加するカイロの人口を、まだ人の住んでいないニュータウンの郊外、近隣の衛星都市、周辺の新しい開拓地にうまく分散する。
・人々の活動拠点の合理的な分散
・公共交通に基づく交通政策
現在、砂漠地帯よりも都市部の開発を積極的に推進している。新たに10の開拓地が、環状道路の外側に開発されつつある。新しい開拓地の中には、6th of October市、al Obour市、al Shorouk市、New Cairo市、15th of May市などの衛星都市が含まれ、多くの魅力的なプロジェクトや総合的なサービスが行なわれている。一方、カイロの中心部から周辺地域へ人口を分散させるプロセスは完全に終わっている。また、都市部の非公式な変化が進行中である。
4. 社会経済的背景
4.1 人口
1976年から1996年の大カイロの人口推移は次のとおりである。
1976 |
1986 |
1996 |
8,200,000 |
11,000,000 |
13,500,000 |
|
過去10年の人口増加は、それ以前の10年と比較すると緩やかなものであった。大カイロ首都圏の平均人口増加率は、1976〜1986年の2.9%から1986〜1996年の2.1%に減少した。この増加率は、主として自然増(外部からの人口移動が比較的少なかった)によるものであった。
ただし、局部的に著しい不均衡が存在し、地域によっては、人口の増減を繰り返している。人口密度は図に示すとおりである。
エジプトの出生率の水準は、すべての発展途上国の平均に到達しつつある。予想によれば、2010年と2022年の大カイロの人口は、それぞれ1705万と1967万である。これはエジプトの総人口の21.3%と21.2%に相当する。
一方、混雑した中心部付近の人口密度は減少し続けているが、周辺地域の人口密度は増加している。この傾向は地域別の人口密度の格差を低減しつつある。
4.2 雇用
1996年の雇用総数は約370万人で、この内約30%が政府部門で働いている。したがって、GCMAにおける労働力は、過去10年間で年平均約8.7%の増加をしたことになる。
この間、失業率は減少し、男子では10%から6%へ、女子では18%から11%へ減少した。
雇用の地域は、主として中心部の活動地帯にあり、周辺地域の家と大カイロ中心部の職場まで通勤する人が多い。これらの雇用地点は、アブディン、alMosky、Misral Kadima、Mohandsin、Zamaiek、インババ、バサティン、ヘルワン、アル・テビン、ショブラ・エル・ケイマ、ナセルシティ、マタリヤである。図4.fは、1996年のGCMAの各地域の就労者の密度を示している(民間および公共部門)。
全体的に見て、大カイロの潜在的労働力は2022年に1360万人に達する。人口統計的な原動力と若い世帯にとって魅力的な町であることから、周辺地域にこの年齢層のかなりの部分が居住することになるであろう。さらに、意欲的な人々と雇用の調和がこの傾向を追うことになる。
5. 交通需要
5.1 1971年と1998年の間のトリップの特性の変遷
1998年における、GCMA居住者992万人(6年以上居住)の1日当たりのトリップ数の合計は、約1400万トリップであった。この移動量は、1日1人当たり1.41トリップとして計算されたものである。歩行を除き、自動車によるトリップ数は900万に達した(全トリップ数の64%)。このことは、自動車による移動が1日1人当たり0.91トリップに達したことを意味する。
1971年の調査と比較して、この移動量は約78%増加したが、自動車による総トリップ数は250%増加し(560万トリップから1410万トリップ)、平均増加率は4.3%であった。この期間に、自家用車の交通量は年5%増加したが、公共の交通量の年間増加率は3.5%であった。
Trip purpose
The evolution of the person trip characteristics is presented in the following table
Characteristic |
Unit |
1971 |
1998 |
Population (6 years or older) |
Million |
5.67 |
9.92 |
Total number of daily trips |
Million |
4.5 |
14.1 |
Total Mobility |
Trip/person/day |
0.6 |
0.91 |
Modal split (motorized) |
|
|
|
Public transport modes |
% |
80 |
73 |
Private cars |
% |
20 |
27 |
Rate of interchange |
% |
1.25 |
1.28 |
Average trip length |
Km |
7 |
5 |
Trip composition by purpose |
|
|
|
To work |
% |
26 |
24 |
To school |
% |
14 |
18 |
To other |
% |
14 |
9 |
To home |
% |
42 |
48 |
Non-based home |
% |
4 |
1 |
Peak hour Traffic |
|
|
|
Time interval |
|
8h00-9h00 |
6h30-7h30 |
Percentage of total traffic |
% |
13.4 |
21 |
|
5.2 公共交通のモーダルシェア
各公共交通モードのシェアは次のとおりである。
Mode in 1998
The underground metro network 20%
The suburban railways 1%
Tramway 0.8%
Heliopolis metro 2%
Bus 24%
Minibus 3%
Ferry 0.2%
Shared taxi 50%
*Source: the 1998 household survey on GCMA
Modal split among the principal modes in GCMA
6. 交通供給
6.1 道路網
GCMAでは、以下の4つのカテゴリーの道路網が交通ルートとして利用されている。1)首都と他の主要都市とを結ぶ全国的な道路網、2)都市内の主要地区を結ぶ地域の道路網、3)人口集中地域の中長距離交通を支える主要な道路網、4)各種部内の交通を集め、それを主要な道路網へ分配する補助的な道路網である。
様々な幹線道路に立体交差点、橋、地下道が組み込まれ、交差点の処理能力を増大している。しかし一方では、道路網の拡大は必ずしも移動性を高めているとは言えず、さらに交通渋滞を引き起こしている可能性もある。
6.2 公共交通網
GCMA内には8つの公共交通モードがあり、毎日590万の旅客が輸送されている。利用が多いのは相乗りタクシーとバスの方であるが、メトロ(地下鉄網)は非常に高水準のサービスで、正確さ、短い運転間隔、安全性、快適性を提供している。1号線および2号線の旅客輸送能力は、現在、1日当たり200万人に近づいている。
6.3 軽便鉄道網(路面軌道とヘリオポリス・メトロ)
従来、この交通網は重要な交通モードと考えられていたが、公共交通に占める市場シェアは、過去20年間にわたり確実に減少しており、残念ながら、この傾向が継続するように思われる(1973年の18%から1998年の5%へと減少)。
この減少傾向の原因は、主に保守の欠落(低速と快適性の減少、人口密度の高い地域の交差点管理などが原因)にあり、さらに、不適切な運用上の規制によるものと思われる。
ただし、既存のインフラは新しいインフラと比較して、コスト面では将来性があると言える。
6.4 バスとミニバスの交通網
1973年から1998年の間に、バス路線は数も平均路線距離も2倍になった。その結果、需要が44%増加し、バス供給の総額が約100%増加した。バスの車両数がこの展開に追い付かなかったため、1987年から1998年にかけて、バスターミナルとバス停での待ち時間が平均17分から25分に増加した。
相乗りタクシーと地下鉄の開発により、利用者の多くは新しい魅力的な交通モードに移っていった。
その結果、バス網の交通モード内のシェアは、1971年から1998年の間に73%から21%へと減少した。しかし、バス網は第2位の交通モードであり、1998年の旅客トリップ数は13億400万人であった。
他方、ミニバス網は1985年にサービスを開始し、快適性ではより良質のサービスを提供している。1998年にミニバス網が輸送した旅客トリップ数は、約1億6000万であった。
相乗りタクシーは、今日、最も人気のあるGCMAの交通モードで、公共交通市場シェアの50%を占めている。「マイクロバス」とも呼ばれ、民間ベースで運営されている。その特長としては、需要への弾力性と適合性で、決まった出発地と目的地があるものの、ルートはいつも利用者のニーズに合わせ、料金もカイロ交通局(CTA)のバス料金と同等である。
しかし、相乗りタクシーには、対処すべき欠点がある。相乗りタクシーは、輸送旅客数に対し場所を取り、交通渋滞の原因となり、他の交通モードよりも公害を引き起こしている。最近、政令により相乗りタクシーは、CTAの完全な監督下に置かれている。
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