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24. 運輸国際協力推進調査
 平成13年度に実施したこの調査は、ODAをめぐる内外の変化に対応して、運輸分野の国際協力をより推進するため、民間コンサルタントが行う案件発掘・形成促進事業の拡大及び効率的効果的な方策を検討するとともにその事業の促進のため、(社)海外運輸協力協会の役割または事業のあり方を検討することを目的とした。
 調査内容は以下のとおりである。
 
・わが国のODA事業予算は、減少の傾向にあった。
・JICA開発調査のうち運輸関係案件は、毎年20件程度実施された。
・国際協力銀行が承諾した運輸関係プロジェクト借款は、平成11年度は10件(8ヶ国)、12年度12件(4ヶ国)であった。
・JICA案件発掘・形成関係事業は、情報収集事業、平成11年度20件、12年度15件、13年度13件、案件形成促進事業、11年度8件、12年度10件、13年度11件であった。
・国土交通省委託事業として、総合物流体系整備調査、エコ・トランスポート協力支援事業、援助方針策定調査等を実施した。
・ODA改革の動きとして、外務省は、「第2次ODA改革懇談会最終報告書」を作成。JICAは、組織改革、「国別事業実施計画」の策定、在外事務所の強化等を行った。
・運輸アタッシェ及びJICA専門家を対象に当協会の事業についてアンケート調査を行った。
・ESCAP事務局を訪問したほか、ESCAPが開催したインフラ大臣会議準備の専門家会合、高級事務官会議等に出席した。またアジア開発銀行を訪問し運輸関係プロジェクト等に係る情報収集を行った。
 
 インターモーダル輸送(複合一貫輸送)はトラック輸送の特性である戸口から戸口までの輸送と鉄道・海運の持つ低廉・大量輸送という特性の双方を組み合わせ、ドア・ツー・ドア輸送を完結し、輸送の効率化、低廉化を図るというものである。
 平成13年度に実施したこの調査は、国内外の国際海上コンテナ輸送を含むインターモーダル輸送の実態を把握するとともに、当該輸送全体の中での港湾の役割について分析するものであった。
 また、主に輸送モード結節点に係る課題を抽出し、更なる国際海上コンテナ輸送の効率化、低廉化、迅速化を図るための実例調査を行うとともに、開発途上国にける効率的な物流体系の整備を支援をするための基礎資料を得ることを目的として実施したものである。
 
25-1 わが国の国際海上コンテナ輸送の概要
 昭和42年10月に外貿埠頭公団を設立し、東京港及び神戸港にそれぞれ埠頭を建設したのを初め、横浜港、大阪港等で順次埠頭の建設が進められ海上コンテナ輸送が行われていた。鉄道による海上コンテナ輸送については、ソフト・ハードの両面においてさまざまな問題があり、鉄道による複合一貫輸送が伸び悩む大きなネックとなっていた。
 
25-2 米国現地調査
 ロスアンゼルス、シアトル等5港湾における海上及び鉄道によるインターモーダル輸送の実態について、港湾管理者、鉄道会社、フォワーダー等へのヒヤリングを行うとともに、施設を含むインターモーダル輸送方式についての視察を行い、わが国との差異について調査検討を行った。
 
25-3 わが国複合一貫輸送への提言
 今回の調査結果から、わが国の複合一貫輸送のさらなる高度化と効率化を図るために、米国の複合一貫輸送の実態とわが国とを比較しつつわが国の改善点や提案を検討した。
 これらの改善点や提案については、ただちにわが国が適用できるものばかりではないが、長期的視点からみて参考にすべきものであると考えられた。
 
 開発途上国における事故の状況をみると、1996年、1997年と民間航空機による死亡事故が目立って増加した。中でも注目すべきは、「アジア地域」で事故が多発していることであった。このような背景には、経済の成長に伴い急拡大した航空機輸送量に対して、航空会社や航空当局の安全管理体制が追いついていない、との専門家の指摘があるとともに、当時のアジア経済の失速が、その後も空の安全に対する投資に影響を及ぼすのではないかとの懸念が出されていた。
 開発途上国における航空事故は、過去の例から大きく2つのパターンに分けることができた。
 一つは、人的ファクター及び航空機の整備不良等により事故に至るパターン、もう一つは、航空保安施設等の整備・維持管理体制の不備等に起因するパターンであった。
 平成14年度から3ヶ年計画により調査団を開発途上国に派遣し、事故情報の収集及び報告内容の調査を行うとともに、開発途上国における地方幹線空港の施設等の状況を調査し、これらの調査結果に基づき、わが国の国際協力の可能性を検討することとした。
 初年度の平成14年度は、インドネシア及びフィリピンの2ケ国を調査対象国とし、以下の事項について調査を行った。
 
26-1 航空事故調査
 航空事故調査手法、航空事故調査官の人材育成及び事故データ解析、機材整備に関する現地調査を行い、調査結果をふまえ航空事故調査に係わる支援の方向性についての素案を作成した。
 
26-2 空港整備
 開発途上国の地方幹線空港施設の現地調査を行い、空港整備及び維持管理に係る問題点等について検討を行い、空港施設等の安全に関する安全性向上ガイドラインの骨子を作成した。
 これらの調査・検討結果をふまえて試行・評価を経て、開発途上国に対する支援への実現に向け継続的に努力を行こととした。
 
 平成14年度に、パナマ国、フィリピン国及びカリブ諸国(トリニダード・トバゴ、ジャマイカ)を対象に調査を行った。
 
(パナマ)
 国土も狭小、人口も少なく、国内資本の蓄積も不十分なパナマは、大西洋と大平洋を結ぶ交通の要衝に位置する地理的特徴及びそこに建設されたパナマ運河の存在を積極的に活用し、コロンフリーゾーンや国際金融センターとして大きく発展してきた。しかし、このフリーゾーン、国際金融センターともやや陰りの見える中で、世界的に知名度の高い運河、コロニアル時代の建築物、先住民族の文化など豊かな観光資源を生かし、観光に一層注力してきた。このように同国は、観光振興に対し以前にも増して注力の度合いを強めていた。このような状況の変化を直に把握するとともに、1994年〜95年に実施された沿岸域観光開発計画調査が同国の観光振興にどのように寄与しているかを調査し、その後のパナマ国の観光振興と発展に関わるわが国からの協力のあり方を検討、提案することを目的とした。
 この調査では、パナマ市、コロン市等の都市、アマドール、ガンボア等の運河返還地域、その他の地域を調査対象とした。同国は観光の重要性を認識し、基礎となるインフラ整備、観光への投資環境の整備に注力してきた結果、観光産業はGDPの7.5%を占め、パナマの主要サービス業の柱の一つであるコロンフリーゾーン及び運河運営に匹敵する重要な産業と位置づけられていた。特にこの数年、幹線道路であるアメリカンハイウェイの拡張、両大平洋側でのクルーズ港の整備、また、パナマ運河返還地でのリゾートホテル建設などアトラクションの多様化とも相侯ってパナマの観光は大きく変貌しつつあった。
 JICA沿岸域観光開発計画調査においては、パナマ政府の策定した長期計画(1993年〜2002年)を参考にしつつも独自の調査結果をふまえ、設定した目標を達成するための戦略を練り、1995年〜2010年を対象とする長期計画を策定した。
 また、この調査で判明した観光事情、政府側の観光への取り組み姿勢、方針、また協力の要請内容などを検討し、日本側として取り組み方針を定め、具体案を策定することとした。
 
(フィリピン)
 フィリピンは、外貨収入、雇用促進、多産業への波及効果を促すものとして、観光開発・振興を政府政策の優先課題の一つとして位置づけてきた。その結果、GDPに占める観光の貢献度は8%強となっていたが、タイ等東南アジア諸国と比べて立ち遅れも目立っていた。同国政府は、観光の促進を重点政策の一つに取り上げ、また、2003年を「ビジット・フィリピン2003」として外国からの来訪客増加のキャンペーンを実施した。
 
 この事業は、このような時期において、フィリピン観光省が優先開発地域としている「ルソン・クラスター」のうちパラワン北部、ルソン島北部山岳地帯、「ビサヤ・クラスター」のうちセブ島、ボホール島などで調査し、以後のフィリピン国の観光振興と発展に関するわが国の協力のあり方を検討、提案することを目的とした。
 フィリピン政府は、1991年に策定した観光マスタープランに基づき観光政策を実施していた。このマスタープランは、国連開発計画(UNDP)と世界観光機関(WTO)の協力によって作成されたもので、1991年から2010年までの20年にわたる長期計画である。今回調査した地域は、このマスタープランでも、最近のフィリピン観光省の計画でも開発優先地域とされているところであった。
 マスタープランでは、2010年までの開発計画を短期、中期、長期の3段階にわけて施策の重点目標を設定している。このうち中期目標はセブ等の開発により達成していたが、2010年の目標に達するのは難しく、状況を見据えた実現可能な計画の練り直しが必要と考えられた。
 その後の協力の方向として、この調査に基づき、ボホール島及びルソン島北部の2つの地域についての「開発調査」の必要性をフィリピン観光省に提案した。
 
(カリブ諸国)
 カリブ諸国の島喚国の多くの国の経済は農業を基盤として、一次産品の輸出などに依存していた。1989年にはカリブ観光機構が創立されて、メキシコ、ベネズエラなどの地域周辺の国も加わって地域全体の観光の活性化に取り組んできた。一方、それぞれの島嶼国は良好な気候、ビーチなどの恵まれた地勢や自然などを活かして観光産業を発展させ、外貨獲得、雇用機会の創出を図っていた。
 このような背景の下、この調査では、トリニダード・トバゴ及びジャマイカにおける観光開発・振興の各情報を収集するとともに、観光開発・振興の課題を検討し、わが国による協力の方向性について検討を行った。
 
トリニダード・トバゴ
 政府は、雇用促進の面から観光産業の発展を重要施策の一つとしていた。観光については、文化・観光省が国レベルの観光政策を策定し、その傘下の観光・工業開発公社(TIDCO)の観光部がその実施に当たっていた。トリニダード・トバゴについては、議会とその中にある観光部が文化・観光省とTIDCOの支援・協調のもと同国独自の観光開発と振興の取り組みをしていた。
 観光関連のインフラでは、ポート・オブ・スペイン空港とトバゴの空港は双方とも欧州や北米からの旅客機が発着出来る充分な滑走路を有していた。道路も鋪装が良くなされ、トリニダード島を縦貫する高速道路がほぼ完成していた。従って、トリニダード・トバゴに関しては、空港施設、宿泊施設、道路、通信などの観光関連インフラ面や衛生面で特に問題はなかった。
 その後の協力のあり方として、観光分野の技術協力では継続して、研修員の受け入れが望まれた。
 
ジャマイカ
 ジャマイカヘの訪問者は、堅調に増加していた。経済面でも2001年には農産物の輸出を上回る外貨を獲得していた。
 工業・観光省の観光部が国レベルの観光政策、観光開発に関して他の関連省庁との折衝・調整を行っていた。自然観光資源としては、オーチョリス、モンテゴベイやネグリルの白砂のビーチ等があった。歴史・文化資源としては、海賊の本拠地であったポート・ロイヤル、スペイン統治時代のスパニッシュ・タウンなどがあった。北部海岸地帯のリゾート開発は進展していたが、南部海岸地帯の観光開発は遅れていた。
 キングストンとモンテゴベイの空港施設、宿泊施設、道路、通信などの観光関連インフラ面や衛生面で特に問題はなかった。一方課題としては、日本からの距離が遠いこと、キングストンとその周辺の首都圏の治安が悪化していることであった。
 その後の協力のあり方としては、観光分野の技術協力では、研修員の受け入れ、ジャマイカヘの観光客は欧米諸国からが大半であることから、日本をはじめ東アジアを対象とする観光振興マーケティング戦略を策定する観光振興計画調査が考えられた。







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