第2章 関連情報(新聞記事)
第1節 海賊
ハイジャックされた貨物船Inabukwa号を船主が確認
フィリピン沿岸警備隊によると、現在フィリピン当局によって取り押さえられている貨物船Inabukwa号がインドネシア船主によって確認された。
インドネシア国営会社Pelayaran Nasionalの代表が、I号を確認したほか、貨物所有者も現場を訪れ、貨物が無傷だったことを喜んでいたと沿岸警備隊関係者は述べている。
インドネシア大使館は外務省と調整し、海賊と船を同国の監視下に置くため解放するようフィリピンに求めている。これに対し、フィリピン政府は原則としてインドネシアへの国外退去に合意している。
沿岸警備隊による当初の貨物の調査記録では、12,800枚の錫インゴット、亜鉛の入ったドラム缶105本、529袋のMuntok紙がI号に積まれていたとされた。I号は432トンの錫インゴット及び濃縮物を運んでいたと報告されていた。
沿岸警備隊は、船の身元確認と貨物の証明を行うため、船主と貨物所有者、I号の当初の船長にI号の書類の原文と貨物証明書を持ってマニラに来るよう求めている。
フィリピン当局は、I号の航海士2名と船員5名に対する処置について、静観している状態である。当局は、地方裁判所で彼等を不法入国の罪で訴えることを考えている。しかし現在、フィリピン政府が、インドネシアへの海賊の国外退去に合意した理由はわかっていない。インドネシアでは彼等はハイジャックの罪に問われる可能性もある。事件が発生したのは、インドネシア領海内であった。
I号はシンガポールに向けインドネシア・バタム島を出発した後、1日も経たないうちに13人の武装した海賊に襲われた。
その後、3月25日フィリピン沿岸警備隊が、北ルソンのSalomague沖でポートステートコントロールの調査のため、貨物船Chugsin号に乗り込んで調べたところ、溶接されていたInabukwaという名前の上にChugsinと書かれているのを発見した。
船長は船の書類を提出しなかったが、船員は船員手帳とパスポートを持っており、I号にはシンガポール港沖に停泊していたところを乗船しただけであると話している。
(2001年4月12日シッピングタイムズ)
IMB「Inabukwa」の海賊は起訴されるべき
インドネシア船籍のInabukwa号をハイジャックした海賊が逮捕されたことについて、海賊がインドネシアに引き渡され、同国で起訴されるべきだとIMBのムクンダン局長は述べている。
同局長は、インドネシアへの海賊の引渡しがなされたのに、もし起訴されないということになれば、それは悲劇的だとも述べている。
事件が起こったのはインドネシア領海内で、インドネシア船籍の船がインドネシア人海賊に襲われたということから、インドネシア政府が海賊を起訴する司法権を持たないということはないだろうと同局長は語っている。
フィリピンとインドネシアが海賊のインドネシアへの送還に相互合意すれば、法的障害はなくなるとも同局長は述べている。
インドネシアとフィリピンの両国は、SUA条約を批准していない。
(2001年4月16日スター)
アロンドラ・レインボー号裁判に日本人船長が証人として出頭
インドのムンバイで行われているアロンドラ・レインボー号裁判に日本人船長が証人として出頭した。また、インドネシア人海賊が英語を理解しないことから、インドネシア語の通訳の手配を許可し、これにかかる費用についてはインドネシア領事館が負担することになった。
(2001年4月27日Press Trust of India)
IMB、第一四半期海賊報告書を発表
IMBの発表によると、今年第一四半期に発生した海賊事件及び未遂事件は68件あった(昨年同時期は56件)。このうち半数近くがインドネシアとマラッカ海峡で発生している。その数はインドネシアが23件、マラッカ海峡が9件になっており、昨年同時期より被害が増えた(昨年同時期にはインドネシア19件、マラッカ海峡7件)。世界でも有数の輻輳した航路であるマラッカ海峡は、マレーシア海上警察がパトロールを強化しているのにもかかわらず、引き続き海賊多発地帯として注目されている。IMBの報告書によると、「最も危険な海域は、北緯2度、東経102度の地点の半径25海里以内で、武装した海賊が繰り返し船を襲っている」という。また、「インドネシアの海賊は地元の貧民に戦利品を分け与えており、村の住民からは『現代のロビン・フッド』という扱いを受けている。自分達のヒーローを海賊呼ばわりされた村民が暴動を起こすのを恐れて、当局は手が出せないでいる」という。
(2001年5月2日マリタイムアジア、ストレートタイムズ)
東南アジアで海賊被害が増加
海賊撲滅の努力にもかかわらず、東南アジアでの発生件数が増加している。
国際海事局(IMB)がこのほど発表した海賊被害調査報告によると、今年第一四半期に世界中で報告された68件のうち、63%が東南アジアで発生している。
過去2年間の調査では、同地域が占める割合は50%程度だった。
国・地域別では、最も多いインドネシア海域が23件、続いてマラッカ海峡が9件となっている。シンガポールとマレーシアの近海はそれぞれ2件、4件だった。
当局によると、マラッカ海峡を縄張りとするインドネシアの海賊は、略奪品を沿岸地域の村落に分配し、同地域では「義賊」と見なされているという。
海賊が逮捕された場合、村民らは恩人のために蜂起する可能性もあり、海賊一掃の実現は困難なものとなっている。
国際海事機関(IMO)では、各国からの協力を取り付け、沿岸警備の強化を図る方針である。
(2001年5月2日シッピングタイムズ)
国連総会で海賊問題が話し合われる
先週シンガポールで開催された海洋法セミナーによると、5月10日の国連総会で海賊及び海上強盗対策に関する協力について話し合いが持たれる予定である。
これについて、シンガポール大学のロバート・ベックマン助教授は、最近の国連の進展で最も興味深いものの一つであると述べている。
(2001年5月7日マリタイムアジア)
シンガポール 大統領が警察沿岸警備隊を訪問
5月10日、ナザン大統領が警察沿岸警備隊本部を訪問した。
ナザン大統領が警察沿岸警備隊を訪問するのは、大統領就任後初めてのことである。
施設の視察には、ウォン・カンセン内相が同行し、大統領は警察沿岸警備隊が日常の業務で用いている武器等を視察した。
沿岸警備隊は、大統領のために11隻のボートを出動させ、Sail-pastを披露した。
このほかにも、不法入国者を逮捕する現場を再現してみせた。
大統領は沿岸警備隊の能力に感銘を受け、最新の技術を取り入れようとする職員の意欲を賞賛した。
(2001年5月11日ストレートタイムズ)
マレーシアが海賊対策を強化
この日、マレーシア海上警察巡視船「KPD Balong」は、マシンガンで武装し、シンガポールからペナンまで約300メートルにわたる徹夜のパトロールを実施した。船長は、武装は警告であると話す。
43メートルのこの巡視船は、マレーシアの海賊対策パトロールの指揮船として機能する。傘下には、黒色に塗装され海賊取締のために特別に訓練された特殊部隊の乗る4隻の高速艇を従える。
取材中、武装乗組員により2隻のボートが立ち入り検査された。
インドネシア・スマトラ島とマレーシア、シンガポールに挟まれた狭い海峡は、貧困を原因とする海賊行為に病んでいる。
今年第一四半期に報告された68件の海賊事件のうち、その3分の1がインドネシア海域で発生している。
経済状態の悪化が、海賊行為を助長させていることは明らかである。近隣国はさまざまな対策を検討し、実行に移している。
(2001年5月15日シッピングタイムズ)
インドネシアの貧困が海賊を助長
インドネシアにおける慢性的な政情及び経済の不安定が、地方地域における政府の管理機能と治安維持を損ないつつあり、一方で海賊を助長する貧困を発生させている。
各国政府は、海賊は国際貿易に対する重大な脅威であるとし、必要とされる地位間協力について合意しているものの、1997年におけるアジア経済危機、政治腐敗等により、事態は困難な状況に陥っている。
1997年には海賊事件は0件であったこの海峡は、2000年には73件の海賊事件を記録した。
マレーシア警察幹部は、海賊はインドネシアから来て、現金は勿論、係留策に至るまで彼らが売ることができそうなものを何もかも奪い去っていく」と述べている。
IMBレポートには、奪った金品を貧しい村へ配分する代わりに、村人に匿って貰うロビンフッド型海賊について記載されている。
マレーシア海上警察幹部は、例え追跡中であっても、海賊がインドネシアとの領海線を越えてしまえば、できることは限られている、それでもインドネシアに対する警告は必要であるし、仮に海賊がマレーシア海域に入れば直ちにそれを食い止めると述べる。
インドネシア政府は、インドネシアから多くの海賊がマラッカ海峡に来ていることは事実として認めているが、一方で、国家予算の欠如を訴える。
インドネシア外務省は、次のように述べている。
「我々はこの問題に取り組んでいるが、適切に対応するための予算、施設が不足している。問題の一つは、それぞれの国の海軍が海賊追跡のため他国の領海内に入れないということである。我々はマレーシア、シンガポールとこの点についての合意事項が必要だと考えている。これはインドネシアだけの問題ではない、国際的な問題である」
(2001年5月15日シッピングタイムズ)
武器を搭載した日本船が地域の海賊対策を援助
日本からの報道によると、武器を搭載した日本海上保安庁(JCG)の船が、近々東南アジア海域で海賊及び海上強盗の抑制援助活動を始める予定である。昨日(6日)のAP通信の報道によると、JCGから派遣される初の巡視艇は、早ければ来月にもシンガポールに送られる予定で、地域各国と共同訓練及びパトロールの面で協力する予定である。武器を搭載した船は、年に4回この地域に派遣される予定で、2機のヘリコプターを輸送することができるという。
JCGのスポークスマンは以下のように発言している。
「多くの日本のタンカーがこの海域を通航しており、彼らを守るために対策を講じなければならない。また、我々は地域各国と政策・調整面を強化していきたいと考えている」
また、パトロールの日程、活動、ルートの詳細については、現在作成が進められているところだとスポークスマンは付け加えた。
シッピングタイムズが東京のスポークスマンに連絡をとったところ、JCGが地域当局の海賊及び海上強盗対策を援助することは確認できたが、詳細については明らかにされなかった。
しかし、この報道について海運団体や現地当局に確認を取ったところ、共同訓練及び(または)共同パトロール計画について知らされていないということがわかり、この報道に対して驚いていたようである。
日本はここ一年以上共同パトロール案を積極的に奨励しており、昨年11月にはJCGがインドとマレーシアと訓練を行っている。しかし、マレーシアは自国に十分な対応能力があるため不要だとして、共同パトロール案を拒否している。
(2001年6月7日シッピングタイムズ)
日本海上保安庁「東南アジアでの海賊対策パトロールはしない」
日本海上保安庁は昨日、日本は今後も東南アジア地域との協力を訴えていくが、東南アジア海域で海賊対策パトロールを実施する予定はないと述べた。
日本海上保安庁(JCG)国際刑事課の大根潔課長補佐は、シッピングタイムズに対し、JCGが東南アジア地域で「共同パトロール(joint patrol)」を実施する予定だという報道に驚いたと述べている。「共同パトロール(joint patrol)に関して、我々は話し合いを持っていない。このため、共同パトロール(joint patrol)を実施するつもりはない」と大根課長補佐は語っている。
大根課長補佐は、海賊及び武装強盗の問題に対応するため、JCGが武器を搭載した巡視艇を東南アジア海域に派遣するという東京から発信された報道について、シッピングタイムズに回答した。
「今年度は、東南アジアの国々の沿岸警備隊との合同訓練を未だ計画中である」と述べてはいるものの、「このような訓練は、二国間またはそれ以上の国々の合意を経て計画されるものであり、まだどの国にも連絡をとっていないため、どこの当局といつ、どのように行うのかについてはまだわかっていない」としている。
「今のところ、シンガポール当局と訓練を実施する予定は全くない」と大根課長補佐は付け加えた。
シッピングタイムズが理解したところでは、マラッカ・シンガポール海峡を通航する沿岸警備隊や海軍の船と同様に、JCGの巡視艇が1年に数回シンガポールに寄港するということである。
一部問題とされるのが定義についてである。調整パトロール(coordinated patrol)というのは自国の海域内のみで行われるもので、一方共同パトロール(joint patrol)というのはある国の巡視艇が別の国の海域に入って行うものである。
これについては、国家の統治権問題のため、支持が得られなかった。戦争時の日本による占領時の記憶が消えていないことが障害になったものとみられる。
大根課長補佐は、JCGが多くの武器を備えた船を派遣するという報道とは逆に、巡視艇は武器を備えているものの、それらは「いわば基本的なものであり、数も少なく」、法の執行時においてのみ使用されると述べている。
アジアの集合的な海賊問題への取り組みは、日本が起こしたもので、昨年3月のシンガポールでの準備会議から始まったものである。
続いて2000年4月に東京で地域会議が開かれ、これにアジア15カ国の代表が出席した。
この会議で持ち上がった5つの主要な提案は、以下のとおりである。(1)専門家会議開催続行 (2)各国の巡視艇の相互訪問 (3)合同訓練 (4)日本海上保安大学校または訓練学校での訓練を提供 (5)海事法律執行強化のためのセミナー
第1回専門家会議は昨年11月にクアラルンプールで開催され、同時にJCGとマレーシアが共同訓練を行った。この一週間前にはJCGとインド沿岸警備隊が同様の訓練を実施している。
(2001年6月8日シッピングタイムズ)
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