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別添2
 
プログラム概要
I 1日目
1 コース概要説明
(1)本コースの目的
イ 船舶保安要員の責務の洗い出しと確認
ロ 関連のSOLAS条約ISPSコードに関する深い知識を得る
ハ 条約で定めるセキュリティ措置の本船への適用
ニ セキュリティ確保のための実践的なアプローチを解説
(2)具体的な成果
イ 船舶保安アセスメントの実施
ロ 船舶保安計画の策定
ハ 保安措置の手続き
ニ SSOとして、船内におけるセキュリティ確保の実施の監督の方策(右は会社による監査業務は含まない旨指摘)
(3)セキュリティに関する基本的な考え方
イ 「実在するリスクに対する効果的な措置」を検討する必要がある。
ロ 海上セキュリティの位置付け
 海上セキュリティは、船舶の運航管理及び包括的な危機管理のシステムを基礎において考慮・整備されるべき。
 
 
ハ 船舶に対する脅威の比較
 「テロリズム」、海賊及び武装窃盗をイメージした「犯罪行為」及び「PSCによる遅延」を脅威の対象とし、人命、財産、船舶の運航、海運ビジネス一般に与える影響を比較。いずれの脅威に対しても、政府(主管庁)、船社、乗組員相互がバランスを取った行動が求められる。
 
2 SOLAS条約改正部分及びISPSコードの解説(説明項目とポイント)
 講師は、適宜条約本文を参照しながら、基本的にはパワーポイントで要約を見せながら説明した。
 
(1)改正SOLAS
イ 規則1(定義)
 次の項目の定義を確認
.7 会社
.8 船舶と港湾のインターフェイス
.11 指定当局
.13 保安事件
.14 保安レベル
.15 保安宣言
.16 認定保安団体
ロ 規則2(適用)
 適用港については締約国が決定する点を指摘。
ハ 規則3(保安に関する締約国政府の義務)
 関係官庁、締約国がセキュリティレベルを設定し、船舶は勝手にセキュリティレベルを設定できない。また。セキュリティレベルの設定に関する情報を、当該国籍を有する船舶並びに管轄権のある港及び入港する船舶に提供する義務がある。
ニ 規則4(会社と船舶の義務)
A 船舶は条約・コードを履行し、適切なセキュリティ措置が取られていることの承認を得る必要がある。(パラ2)
*船舶の条約・コードの履行に際してのパートBの取扱いにつき、次のとおり説明。
・米国は、全ての米国船籍の船及び米国の港に入港する全ての他国船籍の船に対しパートBを強制要件とする。
・EUも、同様の措置を取る。
・IACSのメンバーである各船級協会は、パートBを強制要件と位置付け、承認作業、トレーニング等を行うことを決定。よってパートBの規定で“should”は“shall”に変えて読むが、“may”はそのまま“may”とする。右は、船舶の一生の内に米、欧州に入港する機会が一度はあることからの便宜的な措置。
B 船舶は現在のレベルよりも高いレベルに入港する場合には、速やかにレベルを上げる必要がある。(パラ3、4)
C 船舶は入港或いはシップインターフェースに際し、本条約の履行又は締約国の要求に対応できない場合には、適切な関係官庁に対し事前に通知しなければならない(パラ5)
ホ 規則6(船舶保安警報装置)
 通報先について、会社とすることができる(パラ2.1)
 これについて講師は、通報先を米国国土防衛省とした船舶と、対テロの能力を持たない途上国の会社にした場合には、有事の際の対応に雲泥の差があることを指摘した。
ヘ 規則7(船舶への脅威)
 俗にリンバーグ規則とよばれるもので、締約国政府の船舶に対する保安情報の提供を規定している。
ト 規則8(船長の裁量)
 ISMコードでいう(overriding)の概念と同じだが、本規則に基づき船長は自らの判断で一時的なセキュリティ措置を講じた場合に、主管庁及び適切な場合には入港予定港の締約国に対しその旨を通報すべきと規定しているところがISMとは異なる。
チ 規則9(監督及び適合措置)
A PSC官によるコントロールが、基本的には証書の確認に制限されていること、さらに保安計画についてはパートAセクション9.8.1の規定により、PSC官からの提示の要求に対しても、締約国の同意がなければ開示する必要がない秘密の部分がある点を指摘。
B 入港に際し、締約国が船舶に対し情報提供を要求でき、船舶は情報提供義務があること、情報提供を拒む場合には入港拒否を受ける可能性があること、clear groundがある場合には入港予定国からステップが取られることなどを、パラに沿って説明。
C 更に、入港拒否等は、3.3に該当すると考えられるclear groundがある場合にのみ行える点、及び不当な拘束等に対する補償(3.5.1)について説明。
リ 規則10(港湾施設の要件)
 パートBの前文を引用し、各自で読み理解しておくことと勧め詳細な説明は割愛。
ヌ 規則11-13
 適宜、概要説明にとどめた。
 
(2)グループ・ディスカッション:エクササイズ1を実施
設問:ISPSコードとISMコードは共に業務管理システムのモデルであるが、両方の類似点を「計画−実施−評価−改善サイクル」の観点から検討せよ。
(3)ISPSコード・パートA(説明のポイント)
イ セクション1.2 目的
 目的の一つとしてセクション1.2.5で、to ensure confidenceとされている点について、セキュリティが確保されているということが、従来からの安全に対するクオリティ・シッピンングと同様、今後、ビジネスに不可欠な要件となる点を指摘。
ロ セクション2 定義
 次の項目の定義を確認
2.1.4 船舶の保安計画
2.1.6 船舶の保安職員
2.1.7 会社の保安職員
2.1.9 保安レベル1
2.1.10 保安レベル2
2.1.11 保安レベル3
ハ セクション3 適用
A 適用港は締約国の決定(3.2)
B 締約国はRSO代行させれない事項(4.3)
C 締約国は、適切と認める場合に、承認した計画の有効性を確認するためテストできる(4.4)
ニ セクション5 保安宣言
 船舶が保安宣言の完遂を要求できる場合(5.2)
ホ セクション6 会社の義務
 船長がoverriding authority と責務を有する点を確保する点、及び船長、SSO等がセキュリティ措置の実施に必要な援助を得るよう会社に義務付けている点。一例として、質の悪い下級船員でセキュリティに対する意識が低い場合の懸念を指摘。
ヘ セクション7 船舶の保安
 各パラを順に説明。特に、主管庁から入港予定港よりも高いレベルに設定するよう指示があった場合には、船舶はその旨を入港国に遅滞なく情報提供すべき点(7.7)
ト セクション8 船舶保安評価
 CSOが評価の実施に責任を有する点、及び評価は会社が書類化しレビューし、承認され保管されること(8.5)
チ セクション9 船舶保安計画
 次の点を説明。
・計画が主管庁により承認される点(9.1)
・計画が網羅する項目(9.4)
・承認された計画の変更の中で新たに承認されるまで実施できない事項があること(9.5)
・計画の保秘(9.7)
・PSC官の検査に締約国の承認を必要とする項目(9.8、9.8.1)
・CLEA GROUNDの例示がパートBの4.33に示されていること。
リ セクション10 記録
A 許可されていない者のアクセス及び開示から保護すること(10.4)アクセスを誰に許可するかは、計画の中で記述される。どのような者かについては条約、コードには規定がないと説明。
B PSC官からの記録の提示要求については応えなくてはならないこと(パートB10.1: IACSではshouldをshallに読替え)
C 保管期限は過去10港(規則9の2.3)を考慮する点
ヌ セクション11 CSO
 読んで理解するよう勧めた。
ル セクション12 SSO
A グループ・ディスカッション:エクササイズ2を実施
B 設問:SSOとして、12.2に規定されるSSOの義務を履行する上でどのような困難があるか。またそれを乗り越えるためにはどのようなことを実施すべきか。
C 受講者から次の点が指摘された。
・金:SSOの業務に対する特別な手当の必要性。
・人:現状においてマンパワーの不足。一等航海士の負担の増大。セキュリティを担当する専門の者の増員の必要性。SSOとして一方的に進めれず、船長の名の下で実施すべき。
・ 監視カメラなど、資機材を活用して業務の能率化・効率化の促進の必要性。
ヲ セクション13 訓練等
 概要を説明。
ワ セクション14-18
 各自、読んで理解するよう勧めた。
カ セクション19 認証等
 特に、会社ではなく「船舶」に対する認証である点、及び全ての点について認められない限り承認されない点(IMSとの比較)を指摘。
*ISPSコードBについては、改正SOLAS、パートAの説明において適宜引用するのみで、パラグラフ毎に順を追っての説明等は実施されなかった。
(3)グループディスカッション:エクササイズ3
イ 設問:乗船してきたPSC官と本船SSOとのやり取りを例に取り、次の点を検討する。
A 有効な証書について
・謄本は有効か?
B 監督の妥当性
・無効な証書を理由として、更なる検査のための荷揚げの中断は妥当か?
C 保安計画のPSC官による検査の妥当性
・PSC官の「誰が船橋へのアクセス権を持っているか」との問いに答える必要があるか否か。
・PSC官の「誰が舷梯で乗船者を監視する担当か」との問いに答える必要があるか否か?
D 保安宣言の実施義務−SOLAS非適用とのインターフェイスに際し保安宣言は義務か?
・当該港入港前に、別の港でバージからバンカーを取ったが保安宣言は交わしていない。PSC官は保安宣言は義務と主張するが如何?
E 監督措置の妥当性
・PSC官は、右を重大なセキュリティ上の問題として本船の出港差し止めを支持したが、この行為は妥当か?
ロ 結果
 実際に起こりうる現実の問題として、受講者は緊張感を持って取り組んだ。最後に答えを配布したが、その多くは「PSC官がCLEAR GROUNDを持っている場合、或いはPROFESSINAL JUDGEMENTから不履行を信ずるに足りる場合には」の条件付きで答えに幅を持たせているのは妥当な回答との印象。
 
II 2日目
1 テロリズム(総論)
(1)海上テロの特質
イ 海賊がテロに変質する可能性
ロ 政治的駆け引きに使われ得る
ハ 物理的或いは心理的な手段を持って脅威を与える
ニ 世界規模の非常事態となる
(2)テロの目的
 注目、認知、認識、権力、及び統治
(3)海上テロ等の事例
イ 船舶への攻撃
A イエメン沖のリンバーグ号事件
B 米海軍COLEの爆破事件(米兵17名が死亡、42名が負傷)
ロ 船舶を武器等の輸送手段として使用
A 2001年6月6日イスラエル海軍が、武器・爆発物を満載したギリシャ・テラの漁船を拿捕
B 2003年1月3日イスラエル義勇軍が4,000トンの軍事貨物を摘発
(4)海上テロに対応した組織
 英国SBS(Special Boat Service)、オランダSBS、米国SEALS、香港警察
(5)海上での活動能力を持ったテロ組織
 Abu Nidal、PLO、IRA、ETA(Enzkadi Ta Askatasuna)、Abu Abas、Achille Lauro、Al-Qa'da、Hizbollah、Liberation tigers of Tamil Eelam
(6)結論
イ 海上での活動能力を持ったテロ組織はかなり数存在し、現実にテロによる被害等が発生している。
ロ 彼らの手口を研究・理解し適切な情報を得た上で対応することのみが脅威を軽減できる唯一の方策である。
2 セキュリティ上の脅威に関する要素
(1)誰か
 船舶に乗り込んで来る乗組員、乗客、商売人、契約業者、港湾関係者、訪問者、会社関係者の誰でも脅威を与える存在たる。
(2)どこで発生するか
・世界的に注目されている場所
・テロリストが成功確立の高いと考えるどこでも
・セキュリティに対する備えのない所、或いはお粗末な所
(3)テロ攻撃を起こす考えられるきっかけ
 政治的、イデオロギー的、宗教的、経済的な背景
3 海賊行為
4 船舶セキュリティのための資機材
5 武器・危険物の探知と予防
6 群集の管理
7 秘匿情報の取扱い
8 船舶セキュリティ・アセスメント
・USCGがNVIC10-02で示した「脅威に基づくセキュリティ・アセスメント法」を演習した。
 
*事例1
*事例2
 
・テキストを拾い読みしながら、具体的な評価の方法などを検討した。
 
III 3日目
1 現場保安調査
 テキストを拾い読みし、立入り制限区域等の設定を一般配置図に書き分ける作業を通じ、船舶のセキュリティの考え方を演習した。
 
2 船舶保安計画
 テキストを拾い読みしながら、セキュリティ・アセスメントから保安計画を作る流れの説明を受けた。
 
3 理解度評価テスト
(1)2時間もののテストを受けた。90問で52点を取れば合格。
(2)問題
イ 5択、記述
 SOLAS条約及びISPSコードの内容について
A クリアーグラウンドの例示
B PSC官の措置
C 保安計画
ロ 応用問題







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