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6.5 モーダルシフトの可能性の検討
(1)設定条件下における推計結果のまとめ
 「6.4 輸送時間、輸送コスト(運賃)、ガス排出量(CO2排出量)の推計」の検討結果をまとめると、表−6.5.1に示すとおりとなる。
 輸送時間、輸送コスト、ガス排出量ともに、トラック1台あたりについては船舶1隻あたりよりも少ないが、今回設定した220tの貨物量を輸送する場合を想定すると、陸上輸送においてはトラック11台を必要とし、各ケースともに全ての評価項目において水上輸送の優位性を得る結果となった。このように、ある一定の貨物量が見込め、より長距離の輸送を行う場合、水上輸送の優位性から、モーダルシフトの可能性について検討を行うことが、物流効率面、環境面において意義のあることと思慮される。
 
表−6.5.1 水上輸送と陸上輸送の評価結果のまとめ
ルート 陸上輸送/水上輸送
輸送時間 輸送コスト ガス排出量
川崎→住商浮間 3.4 1.1 4.2
川崎→三愛石油 4.3 1.2 5.6
君津→東京製造所 4.2 2.4 6.4
 
(2)水上輸送の優位性が発現する輸送貨物量の閾値の検討
 上記のとおり、ある一定の貨物量が見込める場合に水上輸送の優位性が発現することとなるが、今回の検討における設定条件下において、どの程度の貨物量を輸送すると水上輸送の優位性が発現するか、その閾値について各ケースに対して試算を行った。その結果を表−6.5.2(1)〜(3)に示す。
 試算結果から、「川崎→住商浮間」及び「川崎→三愛石油」のケースについては、貨物量200t以上で、輸送距離の長い「君津→東京製造所」のケースについては、貨物量100t以上で全ての評価項目について水上輸送の優位性が発現する結果となった。
 
表−6.5.2(1)
 
水上輸送の優位性が発現する輸送貨物量の閾値「川崎→住商浮間」
(拡大画面:45KB)
 
表−6.5.2(2)
 
水上輸送の優位性が発現する輸送貨物量の閾値「川崎→三愛石油」
(拡大画面:47KB)
 
表−6.5.2(3)
 
水上輸送の優位性が発現する輸送貨物量の閾値「君津→東京製造所」
(拡大画面:50KB)
 
(3)水上輸送と陸上輸送のメリット・デメリット
 以上の検討・整理から、ある一定の貨物量が見込め、より長距離の輸送を行う場合に水上輸送の優位性が得られることとなるが、水上輸送と陸上輸送には、それぞれ輸送形態の特色に伴うメリット・デメリットがあり、荷主においては総合的な判断によって輸送手段を選択することとなる。「6.4 輸送時間、輸送コスト(運賃)、ガス排出量(CO2排出量)の推計」の検討結果やヒアリング調査結果等から水上輸送と陸上輸送のメリット・デメリットを整理すると、表−6.5.3に示すとおりである。
 
表−6.5.3 水上輸送及び陸上交通のメリット・デメリット
水上輸送 陸上輸送
メリット デメリット メリット デメリット
・重量物、大口貨物もしくは長距離輸送の場合、輸送時間、輸送コスト、ガス排出量において優位性を得る。 ・小口貨物もしくは短距離輸送の場合、輸送時間、輸送コスト、ガス排出量において優位性を得にくい。 ・小口貨物もしくは短距離輸送の場合、輸送時間、輸送コスト、ガス排出量において優位性を得る。 ・重量物、大口貨物もしくは長距離輸送の場合、輸送時間、輸送コスト、ガス排出量において優位性を得にくい。
・陸上輸送にみられる道路工事、渋滞等による遅れがなく、比較的定時性を確保しやすい。 ・気象(大雨、強風、波浪、大水等)の影響により、運航不可能となる場合もある。 ・気象(大雨、強風、波浪、大水等)の影響を比較的受けにくい。 ・道路工事、渋滞等による遅れを生じる可能性があり、比較的定時性を確保しにくい。
・岸壁、係船施設等、貨物輸送において特殊な施設を必要とする。 ・道路があれば、比較的どのような場所にでも輸送が可能。  
 
(4)モーダルシフトの可能性検討のまとめ
 以上のことから、ある一定の貨物量が見込め、より長距離の輸送を行い、出発地と目的地の近傍に岸壁等の係船・荷役設備が整備されている条件下において、水上輸送は陸上輸送より物流効率面、環境面の優位性が高くなり、“モーダルシフト”が荷主企業にメリットをもたらせる可能性を生じ、“モーダルシフト”の今後の発展の可能性が期待される。







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