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(4)災害時の運用手法の検討
a. 防災拠点からの人流・物流イメージ
 設定条件における橋梁が全て倒壊した場合は、図−3.2.6に示すように、人流・物流の起終点について、直接のアクセスは不可能であり、迂回を余儀なくされる。ここでは、防災拠点を基準として、人流・物流のイメージを検討した。
 
図−3.2.6 設定条件における橋梁が全て倒壊した場合の人流・物流イメージ
 
表−3.2.3 設定条件における橋梁が全て倒壊した場合の人流・物流
ルート ルートの状況 評価
A〜B 特に問題なく、移動・輸送が可能である。
A〜C 直線的には行けず、南側または北側から大きく迂回する必要がある。 ×
A〜E 隅田川を渡るための橋梁に制限ができるため、迂回することとなる。
A〜D 西側から大きく迂回しなくてはならない。 ×
A〜F 概ね問題なくアクセス可能だが、「D」の南側を通れないため、迂回することとなる。
 
 上記のように設定条件における橋梁が全て倒壊すると、防災拠点「A」からの移動は非常に困難となる。問題なく移動・輸送が行えるのは、「A〜B」間のみである。
 
b. 河川横断の可能性
 防災拠点からの人流・物流イメージに示すようなルートしか利用できないと想定すると、人員及び物資等を輸送するための交通渋滞が発生し、交通事故や特定の橋梁に過度の負担を掛けることとなるため、さらなる橋梁の倒壊といった二次災害を起こしかねない。
 設定条件における橋梁が全て倒壊した場合、最も問題となるのは、先の図−3.2.6にあるように、荒川の東西方向への横断である。ここでは、倒壊すると想定した橋梁が含まれるエリアを対象とし、当該エリアにおいて、どのような施設が利用可能であるか検討・整理した。
 
(1)「荒川エリア(2)」における河川横断の可能性
 荒川エリア(2)における河川横断の可能性は、図−3.2.7に示すとおり、河川の両側にリバーステーションはあるものの、右岸側の臨海リバーステーション(計画)が河川上に孤立するように存在するため、陸上との結節状況が良くない。
 また、葛西橋近傍に小松川リバーステーションや荒川ロックゲートがあるが、右岸側に船着場等が存在しない。
 以上より、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて当該エリアを横断するのは困難であると考えられる。
 
図−3.2.7
 
設定条件における橋梁が全て倒壊した際の河川横断の可能性(荒川エリア(2))
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(2)「荒川エリア(3)」における河川横断の可能性
 荒川エリア(3)における河川横断の可能性は、図−3.2.8に示すとおり、船堀橋〜平井大橋間はリバーステーション等がなく、船舶を用いても対岸への移動が困難となる。また、当該区間は船舶が機能しなくなると考えられる。
 平井大橋の近傍(約500m)に船着場(平井水上ステーション)があり、陸上との結節状況が良いため、当該船着場は有効に機能すると想定される。しかし、対岸に船着場等がないため、スムーズな人員・物資等の輸送ができず、河川横断の可能性は低い。
 平井大橋の倒壊により、首都高速道路への出入りが不可能となり、蔵前橋通りの緊急輸送道路としての機能を有効に活用できない。
 当エリアにおいては、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて横断することは困難であると考えられる。
 
図−3.2.8
 
設定条件における橋梁が全て倒壊した際の河川横断の可能性(荒川エリア(3))
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(3)「隅田川エリア(2)」における河川横断の可能性
 隅田川エリア(2)における河川横断の可能性は、図−3.2.9に示すとおり、駒形橋が倒壊しても他の橋梁が近傍にあることや、船着場が両岸にあるため、大きな制約を受けないと想定される。
 当エリアにおいては、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて横断することが可能であると考えられる。
 
図−3.2.9
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川横断の可能性(隅田川エリア(2))
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(4)「隅田川エリア(3)」における河川横断の可能性
 隅田川エリア(3)における河川横断の可能性は、図−3.2.10に示すとおり、4カ所の橋梁が倒壊したことによって、図中の黄色いエリア同士のアクセスが非常に困難となる。
 橋梁が倒壊していない区間においては、係留可能な施設があり、船舶による河川の横断は可能である。
 また、船舶を用いて、国道4号よりも隅田川上流方向から黄色いエリアに回り込むようにアクセスすることも可能であり、緊急物資等の輸送において、船舶が非常に重要となる可能性がある。
 当エリアにおいては、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて横断するのは、一部区間を除いては可能であると思われる。
 
図−3.2.10
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川横断の可能性(隅田川エリア(3))
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