日本財団 図書館


むすびにかえて
 本研究は、上位関連計画に整合したまちづくりの方向性を検討するとともに、これを実現するための用途地域等の法制度の適用について見直したものである。
 結論としては、低層戸建住宅が少なくない立地条件から、建物用途制限・建築形態制限とも緩やかな研究対象区域にあっては、緩和的な措置によるものではなく、需要に応じて迅速に必要な機能を確保できる制度(建築確認型総合設計制度)の導入が適切と判断したものである。
 ここでは、中心市街地の活性化という視点から、用途地域等の法制度の適用についての課題を整理する。
 
○社会経済環境の変化をとらえた適時適切な見直し
 用途地域等の見直しは、法律で実施が義務づけられている都市計画基礎調査を踏まえ、5年に一度行われることとなっている。しかしながら、社会経済環境の変化の速度は速く、また商業店舗の撤退に伴う未利用地の発生など、中心市街地の都市づくりに影響の大きい環境変化も想定される。
 このため、定例の見直しにとどまらず、こうした事態をとらえた適時・適切な見直しを行うことが必要である。
 
○中心市街地活性化に関わる都市づくりの方向の明確化
 中心市街地の活性化に関わる諸計画(総合計画をはじめ、都市計画マスタープラン、中心市街地活性化基本計画など)については、社会経済環境の変化などを受け、必要に応じて適切に見直す必要がある。特に、郊外部を中心とした幹線道路沿道等への商業立地の顕在化など、都市全体を俯瞰した商業・業務機能の配置・誘導を検討すべき時期に移行しつつある中で、「駅周辺=中心市街地」に代わる概念を模索する必要も生じている。
 わが国総人口が減少局面へ入りつつある現在、これまでのような都市基盤、都市開発等への資本投下は多くを望めないことから、今後とも、事業実現性等を十分に勘案しながら中心市街地のあり方を明確化していくことが求められる。
 
○都市づくりの方向を踏まえた戦略的な法制度の適用
 十分な検討を重ねた中心市街地における都市づくりの方向性をとらえ、この実現に対応した法制度を導入することが不可欠である。特に、配置することとした機能が現行の用途地域等で制限される場合は、適切な緩和によりその機能配置を誘導するなど、法制度等の適用が後追いとならないよう、戦略的に見直しを行うことが求められる。
 また「地域の住民に最も身近な行政団体」である市町村が、地域の特性や実状にあった都市づくりが展開できるよう、都市計画法等が改正されたことも踏まえ、条例の制定など市独自の都市づくりの展開についても情報収集・研究・検討を行っていくことが望まれる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION