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第6章 知的障害者の居住環境の確保に係る社会的ニーズの現況
 知的障害者の居住環境の具体的な内容を検討する上で、知的障害者がどのようなニーズを有するのか、また、それに対して社会的な供給体制はどのようになっているのかについて把握する必要がある。本章では、社会的ニーズの現況等について、在宅者や施設入所者のアンケート調査結果及び市町村に対して実施した知的障害者施策調査の結果からとりまとめる。
1 在宅者の社会的自立
(1)今後の自立意向
 在宅の知的障害者の今後の生活については、在宅者本人とその家族との間で考え方が大きく異なっている。
 在宅者本人は、50%の人が「今後もずっと自宅で家族との同居生活を希望」している。これに対して、「自宅から独立してアパートやマンションでの生活を希望」する人は6%、「入所型の福祉施設(更生施設、授産施設)への入居を希望」する人は9%にとどまっている。
 一方、家族についてみると、「家族との同居生活を希望」する家族は35%にとどまり、「入所型の福祉施設への入所」を希望する家族が29%、「自宅から独立」を希望する家族が11%となっている。
 在宅者本人は、在宅生活の継続を強く望み、家族は在宅生活の継続と入所施設の2つの意向に二分されている。また、在宅者本人、家族ともアパート・マンションでの生活意向は希薄な状況にある。
 
図表6-1 在宅者・家族の自立意向
 
(2)将来的な自立意向
 父母などの家族が高齢、退職、死亡などの理由で在宅者本人の生活の支援ができなくなった場合にどのような生活を希望するかについては、現在の在宅生活を継続することを考える世帯は4%にとどまり、半数以上の世帯が福祉施設への入所を希望している。独立した生活を希望する世帯は9%となっている。
 
図表6-2 将来的な自立意向
2 自立支援制度等の周知状況と利用
 知的障害者の社会的自立を果たすためには、公私のさまざまな支援・援助が不可欠になるが、ここでは、成年後見制度と生活ホーム・グループホーム制度の周知状況と利用意向についてとりまとめた。
 
(1)成年後見制度
ア 周知状況
 成年後見制度は、痴呆症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分になった人の社会生活を支援する仕組みで、従来の禁治産、準禁治産の用語を廃止して後見、保佐とし、さらに新たに補助という類型を設けて、今までの準禁治産者よりも軽度の知的障害にも対応できるようにしている。後見人らには本人の身上に配慮する義務を加え、従来から批判の強かった戸籍への記載や配偶者後見人制度を廃止した。
 成年後見制度については、在宅者のいる家庭のうち「詳しく知っている」家庭は2%で、「知っている」17%、「あらましについて知っている」42%と、一定の情報・知識がある家庭は59%となっている。これに対して、「ほとんど知らない」26%、「まったく知らない」12%となっており、約4割の家庭は十分な情報・知識を有していない。
 
図表6-3 成年後見制度の周知度
 
イ 利用意向
 成年後見制度の利用については、「既に利用している」家庭は2%で、それ以外の家庭では利用していない。このうち「利用しない」と回答した世帯は4%で、「利用を検討中」が11%、「必要になれば利用」が61%となっている。
 
図表6-4 成年後見制度の利用意向







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