「三位一体の改革についての意見」のポイント
平成15年6月6日
地方分権改革推進会議
I 本意見の位置付け
(1)国と地方の役割分担に応じた税財源配分の在り方についての意見。
(2)国庫補助負担金、地方交付税及び税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で検討し、基本方針2002に示された課題に応える具体的改革方策を提言。
II 三位一体の改革の基本的考え方
(1)地方の歳出・歳入両面での国による関与を縮減し、住民が行政サービスの受益と負担の関係を選択することが可能な地方財政制度の構築が改革の目標。
(2)このためには、地方公共団体における受益と負担の関係の明確化、地方歳出と地方税収の乖離のできる限りの縮小、国と地方の財政責任の明確化が必要。
(3)地方公共団体の自立性の向上、国及び地方公共団体の財政の持続可能性の向上、地方公共団体間の格差への配慮が、改革の基本的方向。
(4)三位一体の改革は、完結に長期間を要する改革であり、現状において国の関与の存在など種々の制約があっても、改革の目標・方向性は明確に示すとともに、その実施に当たっては均衡を失することなく段階的に行うことが必要。
III 三位一体の改革の具体的内容
1. 国庫補助負担金
(1)基本的考え方
・国の関与を廃止・縮減し、地方公共団体の裁量を拡大するとともに、国と地方を通じたスリム化を実現。
(2)国庫補助負担金の廃止・縮減
・「事務・事業の在り方に関する意見」のフォローアップ(本年5月7日、内閣総理大臣に提出)で示した重点事項に関連する国庫補助負担金については、中長期的に廃止・縮減等を行うべき。
・政府部内の検討の中で、基本方針2002に示されたように「改革と展望」の期間中に国庫補助負担金の数兆円の削減が実現することを強く期待。
・廃止される国庫補助負担金の対象事業で、引き続き地方公共団体が主体となって実施する必要があるものについては、移譲の所要額を精査の上、地方に税源移譲することが必要。
(3)国庫補助負担金の交付金化・統合補助金化
・残存する国庫補助負担金については、その交付金化・統合補助金化を推進。
(4)社会保障関係の国庫補助負担金の抑制
・現在検討が行われている社会保障制度の改革を進めることにより、社会保障関係の国と地方の公的負担の増加の抑制を図ることが必要。
2. 地方交付税
(1)基本的考え方
・基本方針2002に示された地方交付税改革の方向性(9割以上が交付団体の状況の大胆な是正、財源保障機能全般について見直し縮小していく、財政力格差是正の在り方を検討、地方の財源不足の早期解消と財源保障への依存体質からの脱却)と整合性を確保し、将来にわたり持続可能な財政調整制度を構築。
(2)当面の改革
・地方歳出の徹底的な見直しを行い、地方財政計画の規模の縮減を図り、地方交付税の総額を抑制。
・地方交付税の仕組みについても、地方公共団体の自主的・自立的な財政運営を促進するため、留保財源率の引き上げ、算定の簡素化、事業費補正・段階補正の見直しを実施。
(3)中長期的な改革の方向
・国の法令による義務付けや国庫補助負担金による関与の廃止・縮減の状況も勘案しつつ、国が地方の歳出を規定してそれを保障するという側面を極力少なくするとともに、税源移譲を含む税源配分の見直し等により地方税の充実が進むことを踏まえ、地方公共団体間の財政力格差を調整する機能を強く前面に出す方向で検討。
・地方交付税改革の議論を深めるためには、地方交付税の法定率分と法定率以外の部分を明確に区分するなど、国民にも分かりやすい形で議論することが重要。
・法定率分は、客観的、透明な方法で配分することにより、原則として水平的な財政調整のための財源と位置づけ。
・法定率以外の部分は、国による政策的な経費配分であることを明確化し、毎年の予算編成過程において内閣総理大臣の主導の下その取り扱いを検討。
・中長期的な地方交付税改革の在り方については、当会議のこのような議論を踏まえ、今後政府において積極的に検討が行われることを期待。
・なお、審議の過程では、(1)交付税率引き上げの代償措置としての赤字地方債や地方交付税特別会計の借入金は、その財源の性格は地方交付税と見なされるべきものであり、法定率分とそれ以外を区別する理由は全くない、(2)国は地方公共団体が標準的な行政水準を確保できるよう地方交付税制度を通じて財源保障を行う責務がある、などの異なる意見が出された。
(4)水平的財政調整制度について
・地方分権改革がさらに進展した後の財政調整制度の将来像として、地方公共団体間の水平的財政調整制度があり、今後の地方行政体制の見直しも視野に入れ、国の関与の廃止・縮減の状況も見極めつつ、地方共同税(仮称)も含め専門的な検討が進められることを期待。
3. 税源移譲を含む税源配分の見直し
(1)基本的考え方
・地方財政の自立と地方公共団体における受益と負担の関係の明確化を実現する上で、その中核をなすもの。
・地方公共団体は、配分された税源の下で必要となる税収を住民に向き合って確保することが求められる前提に立ち、税源移譲を含む税源配分の見直しに当たっては、個人住民税を重視しその充実を図るとともに、課税自主権が活用されやすい制度改革が検討されるべき。
(2)国庫補助負担金の廃止と税源移譲
・廃止される国庫補助負担金の対象事業で、引き続き地方公共団体が主体となって実施する必要があるものについては、移譲の所要額を精査の上、地方に税源移譲することが必要。
・国庫補助負担金の廃止・縮減と具体的な税源配分の見直しのタイミングがずれる場合には、経過的な財源措置が必要。
(3)地方分権改革の観点からの税源配分の見直し
・地方の基幹税たる個人住民税の応益性を徹底し広く負担を分かち合うとの観点から、均等割の課税対象の拡大とその税額の引き上げ、所得割の諸控除の見直しと課税ベースの拡大、税率のフラット化とそれに伴う所得税との調整を行うべき。
・地方消費税については、清算を行うことにより税収の偏在性が少なく、安定的な基幹税目の一つとして、今後とも大きな役割を果たすことを期待。
・地方公共団体が、自らの責任において実際に地方税の増減税が可能となるよう、それを妨げている制度の見直しなど課税自主権が活用されやすい制度改革が検討されるべき。
(4)国・地方を通じた安定的な歳入構造の構築に向けて
・国・地方の危機的な財政状況を踏まえれば、国・地方を通じた歳出の徹底的な見直しが必要。この努力を踏まえても、国税、地方税とも増税を伴う税制改革が必要。
・この税制改革においては、国と地方の税源配分についてもその役割分担に応じた見直しが行われるべき。
4. 地方債・その他
・市場公募の促進、発行条件の決定方式の見直しを進めるとともに、地方債を市場が適切に評価するため公会計制度の整備が必要。
・新発地方債の元利償還に対する交付税措置は、合併特例債等の真にやむを得ないものを除き廃止・縮減の方向で検討すべき。
・地方公共団体による償還計画の適切な管理が重要。また、事前協議制への移行に伴い、地方債の償還に係るセーフティ・ネットの有効性を検証し、必要があれば在り方を見直すべき。
・地方交付税特別会計における新規借り入れをできる限り抑制するとともに、平成15年度末で約48.5兆円と見込まれる借入残高の抜本的処理について検討に着手すべき。
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