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はじめに
 低迷が続く経済情勢に加え、地方分権、構造改革の進行など、近年、自治体を取り巻く環境は大きく変化し、厳しさを増してきている。したがって、都道府県、市区町村、広域市町村圏などは、新たな施策づくりにおいてはアウトソーシングや広域的共同処理などを従来以上に追求せざるをえなくなっており、既存の施策についてもたえず見直し、行財政のスリム化に努めることを求められている。また、ここ数年、全国各地で、合併への模索がなされているところであるが、市町村合併特例法の期限切れまで一年を残すだけとなっている。以上のような状況のもと、自治体は、個性豊かで活力あふれる地域形成に向け、地域資源の活用や住民とのパートナーシップを基本理念とし、地域づくり・まちづくりに懸命に取り組んでいるところである。
 当機構では、自治体が直面している諸課題の解決に資するため、全国的な視点と個々の地域の実情に即した視点の双方から、できるだけ多角的・総合的に課題を取り上げ、研究を実施している。本年度は、7つのテーマを具体的に設定し、取り組んだ。本報告書は、このうちの一つの成果を取りまとめたものである。
 本研究は、地方分権の本格的な進展による地方の自立性の向上に伴い、国で進められている地方税財政制度に関する三位一体(国庫補助金、税源委譲、地方交付税)の改革を踏まえた地方公共団体の役割について、具体的事例に即しつつ問題点・課題の把握、分析を行ったものである。
 本研究の企画及び実施にあたっては、研究委員会の委員長、委員及び幹事各位をはじめ、関係者の方々から多くのご指導とご協力をいただいた。
 また、本研究は、競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて、総務省自治財政局調整課と当機構とが共同で行ったものである。ここに謝意を表する次第である。
 本報告書がひろく自治体及び国の施策展開の一助となれば幸いである。
 
平成16年3月
 
財団法人 地方自治研究機構
理事長 石原 信雄
 
はじめに
 平成12年4月の「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(地方分権一括法)施行以来、地方分権の推進に向けて、国と地方の在り方をめぐるさまざまな議論がなされてきた。経済財政諮問会議では、国と地方の関係について、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で改革するべきであるとの方針を打ち出し、平成14年6月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」が閣議決定され、さらに、平成15年6月には、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」が閣議決定された。
 これらは、地方の権限と責任を大幅に拡大し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の社会からなる地方分権型の新しい行政システムを構築していくものであり、今後、地域における行政を自主的かつ総合的に担うべき地方公共団体の役割はますます重要なものとなっていく。
 一方、我が国においては、急速な少子・高齢化の進行への対応、「心の教育」をはじめとする教育改革など様々な分野で構造的な変化が進行している。こうした変化に伴い、地方公共団体の子育て支援対策、地域における教育改革など、地方公共団体が対応すべき政策課題は山積し、年々複雑化している。
 そこで、本調査研究は、このような社会の動きを踏まえ、構造改革、とりわけ三位一体の改革に対応した地方公共団体が果たすべき役割について考察を行うものである。
 なお、本研究会では、委員長のご発案で委員の役職や肩書きに関係なく、個人的見解を基に自由闊達に議論するという運営を行っており、本報告書も委員会でのこの自由な議論の結果を出来るだけ尊重し、反映した形でまとめるよう努力している。
 
 本報告書では、構造改革、とりわけ三位一体の改革に対応した国と地方の役割分担や、地方財政制度の在り方について考察する。
 まず、第1部において、地方団体が主体的に行う構造改革への対応として、地方団体のアイデアや地域の特性を生かした取組事例を取り上げ、施策の分析を行う。
 第1章では、「住民主体のまちづくり」について、先進的な取組を実施してきた北海道ニセコ町の事例について現状と課題を考察する。
 第2章では、地域における新たな取組として地域通貨について考察するとともに、地域通貨を活用した子育て支援、教育改革について考察する。
 第2部においては、国と地方公共団体の在り方について分析する。
 第1章では、歴史的観点から、財政危機下における分権と地方財政について考察する。
 第2章では、ドイツの財政調整制度との比較から我が国における地方財政制度について考察する。
 第3章では、構造改革に対応した国と地方の役割分担や、地方財政制度の今後の方向について考察する。







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