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小規模自治体における自治の拡充に関する研究

 事業名 小規模自治体における自治の拡充に関する研究
 団体名 地方自治研究機構 注目度注目度5


3 衣川村のむらづくりの課題
(1)衣川村の評価
ア 広域と連携せざるえない小規模自治体
 本村は、人口約5千人強、財政規模約40億円の小規模自治体である。
 豊かな自然と誇るべき歴史をもつ村であり、生活面では排水処理や道路は周辺の市町に比べても整い、かなり満足できる高齢者福祉サービスなどが享受できる村ということができる。
 その一方、救急消防、ごみ処理などの行政サービス、働く場、買い物といった生活面、高等教育など教育の面などでは、村単独、域内の資源だけで多くの生活需要をまかない、サービスを提供することなどは難しい。他の地域に出やすく自家用車交通の発達している点では山間地域の小規模自治体よりも強く、他のまち・自治体と連携しないと成り立たない自治体といえよう。
 
イ 一般的な魅力の地域資源
 様々な自然・景観、食などの資源のほか、15年間7千人を超える「農業体験修学旅行」の受け入れ実績、20万人近くの年間入り込み客のある「東北ニュージーランド村」に代表されるような観光施設などがある。
 しかし、あえて遠方から訪れる、平泉町のついでに立ち寄るといった魅力ある資源には乏しく、地域資源の連携不足なども手伝い、村の経済や働く場がそれだけで十分というほど、多くの人を呼び込むことは難しい状況にある。
 
ウ 地域活力の低下への危惧
 人口減少、高齢化の進展が直ちに地域の活力に低下につながるとはいえないが、集落や農地、森林等の維持・管理には一定のマンパワーも必要である。また、地域活性化の活動的な担い手は、若い世代であることも疑いがない。
 人口減少、少子・高齢化傾向や若年層の移動の動き、アンケート結果などを考えると、人口の空洞化が本村の地域空洞化につながることが危惧される。
 
エ 発展の芽11
 村内には様々な住民団体の活躍の芽が生まれている。下のような団体とその活動である。これらの活動は、村の生活の不便さを嘆くだけではなく、村の特色に磨きをかけ、それを活かして豊かな生活を築こうという新しい感性による新しい活動である。
 こうした芽を潰さないよう大切に、そして時には厳しく育てることで、村の将来が開けてくるという期待を持つことができよう。
 
1. 自然塾
2. キラッと輝く星の会
3. 頑張りかあちゃんの会
4. フレッシュアグリの会
5. 衣川青史会
6. 川西大念仏剣舞同好会
7. 太鼓同好会
8. はとむぎ・りんどう・ガルギールなどの新作目生産組合
9. 食生活改善推進委員会
10. 小規模作業精神障害者小規模作業所「衣川工房」
11. 公衆衛生組合連合会による「山と川のクリーン作戦」
 
(2)衣川村のむらづくりの基本課題
ア 基本的な認識
 平成の合併が叫ばれるなかで、小規模自治体である本村の合併問題も決断待ったなしの状況を迎えている。
 ところで本村はこれまでも行政サービスでは広域連携による提供、生活面では一部ながら就業・消費という重要な面で、他の地域に大きく依存してきた。つまり、小規模自治体であるがゆえに、いわゆる「団体自治」の一部と生活の主要面は行政枠を越えていたのである。
 この観点からすれば、単独の自治体であろうと、あるいは大きな都市のなかの1地域になろうと、名前や「住民自治」の点は別として(重要であるが)、特に生活面では従来の状況と大きく変わることは少ないところがある。
 <衣川という地域(あるいは村)>が存続し、そこに住む人が安心して、快適に、生き生き暮らす環境をつくることが重要であるといえよう。
 
イ 基本課題
 人口の空洞化による地域崩壊を避けることが必要であり、地域活力の維持・向上には人口の数−力も大きな働きをする。したがって、人口の増加、維持、悪くても予測よりもゆるやかな減少が必要と考える。
 また、例えば大分県湯布院町12や自然生態系農業で有名な宮崎県綾町13など、全国の多くの小規模自治体の地域づくりの例からわかるように、外の力・資源ではなく自らの資源を生かし、自らが努力することが小規模自治体−本村の真の地域発展には必要である。
 このことから主な基本課題として「人口の定着・増加」と地域資源と人を生かした「内発的発展」をあげることができる。
 これら基本課題の具体的内容として、「地域の維持可能な発展」と「生活質の向上」というふたつの視点から、次の4項目をあげることができよう。
 
(1)良いところに磨きをかけて、村民の地域に対する愛着と誇りを育み定住促進を図ること(「地域の維持可能な発展」)
(2)定住するかどうか決めかねている若年層が住み続けられる環境を整えること(「生活質の向上」)
(3)磨きをかけた資源を活かして村内外の人との交流による経済活性化、地域活性化を図ること(「地域の維持可能な発展」)
(4)地域の特性を生かし、魅力ある生活環境の充実、提供するなどにより人口の移入などを進めること(「生活質の向上」)
 
(3)むらづくりの4つの課題
 以上の、本村を取り巻く地域問題、村の現状評価、基本課題の認識から、今後の本村が取り組むべきむらづくりの課題として、次の4項目を掲げる。
 
(1)地域経済の振興と就業の場の確保
(2)生活利便性の確保・向上
(3)地域の特色を活かす定住・交流環境の整備
(4)行財政の効率化と合併問題への対処
 
ア 地域経済の振興と就業の場の確保
 若者をはじめ村で暮らすためには働く場が必要である。
 ところで1章で示したように、本村への工場誘致は厳しく、また若年層に魅力がある第3次産業の職場は少ない。さらに全国的な地方経済の低迷、特に地方の主幹産業になっている土木建設業を支えてきた公共土木建設事業の減少している。この影響は、当該産業のみならず商業、サービス業にも及び、地域経済全体が冷え込むという状況にある。今後、就業環境は低下することはあっても向上することは考えにくい。
 村の資源を活用するなど内発型の産業開発を行い、産業開発が同時に地域の経済の活性化につながり、さらにそれが新たな産業を生む・・・といった連鎖的な発展を図ることが必要である。
 
イ 生活利便性の確保・向上
 人の定住や移入を促すためには、安全で快適、便利で健康的な生活を送ることのできる環境を整えることが必要である。
 アンケートをみると世代別にニーズは異なるが、「交通」「買い物」の便利さを確保することが不可欠であるとともに、心豊かな文化的な環境づくりも必要である。
 なお、現状で村民に評価されている行政サービス水準の維持、向上が必要であるとともに、市町村合併の場合はサービスが低下しないことが求められよう。
 
ウ 地域の特色を活かす定住・交流環境の整備
 定住の契機となる、本村を訪ね・知る機会・場を設けることが必要である。この機会・場の提供は、無償やそれに近い住民の負担だけが重い状況で行い続けることは難しい。長続きさせるためには、地域の環境整備や活性化、経済振興に繋がることなど、メリットが必要である。
 また、定住人口に加えて交流人口を確保することを通して、地域のにぎわい、衣川応援団などの結成による活性化などを進めることも考えられる。
 
エ 行財政の効率化と合併問題への対処
 自らの手で地域をつくれる場が用意されることが、住民の手による地域の活性化には重要であり、また先駆的で地域活性化を担う人材の集積、育成にもつながる。それに誘発され、さらに多くの人材が集まってくることが予想される。
 そこで、行財政を取り巻く環境が厳しいことを考えれば、脆弱な財政基盤を立て直すための行政のスリム化など、「小さな政府」に向けた諸政策を進めることが必要である。しかし一方、それが「むらづくりのスリム化」につながらないよう、積極的な対策も必要である。すなわち、住民の力を信頼することに基づく、住民の参画による住民のための行政を進めることが、今後の本村が取り組むべき重要な課題である。
 
4 住民の市町村合併に対する意向
(1)合併の影響について
 合併による住民生活への影響に関しては、33.2%が影響在り、12.9%が影響なし、どちらともいえないが46.7%になった。
 
図表2-13 アンケート結果−合併による住民生活への影響
影響がある 影響がない どちらともいえない 無回答
33.2% 12.9% 46.7% 7.2%
 
(2)合併規模について
 合併の規模について、広域的規模の合併、小規模な合併の2つのケースについて意向を調査した。
 「広域的規模で合併を考える方がよいと思うか」という問いに対して、13.8%がそう思う、28.6%がそうは思わない、どちらともいえないが38.8%となった。
 逆に「小規模な合併を考える方がよいと思うか」との問い対して、32.7%がそう思う、13%がそうは思わない、どちらともいえないが35.4%となった。
 両者を平均すると、広域的規模合併13.4%、小規模合併30.7%、どちらともいえないが37.1%となる。
 
図表2-14 アンケート結果−広域的規模で考えた方が良い
そう思う そうは思わない どちらともいえない 無回答
13.8% 28.6% 38.8% 19%
 
 
図表2-15 アンケート結果一小規模な合併を考える方が良い
そう思う そうは思わない どちらともいえない 無回答
32.7% 13% 35.4% 19%
 
(3)合併の是非について
 「できるだけ合併しないで、村単独で言ったほうが良いと思いますか」との問いに対して、そう思う24.6%、そうは思わない27.2%、どちらともいえない30.5%、との回答があった。
 年齢層別、性別に見ると、30代40代50代及び男性は「村単独が良いとは思わない」割合が高く、10代20代60代以上及び女性では「単独の方が良い」との割合が高くなっており、世代間、性別での意識の違いが見られる。
 
図表2-16 アンケート結果−合併しないで村単独の方が良い
そう思う そうは思わない どちらともいえない 無回答
24.6% 27.2% 30.5% 17.7%
 
(4)全体傾向について
 以上の結果から、
(1)広域的規模での合併よりは小規模での合併を望んでいる。
(2)村単独が良いか否かに関してはほぼ意見が同数である。
(3)いずれの問いに対しても、「どちらともいえない」と「無回答」の合計が半数近くあり、まだ村民は全体としては合併について、明確な意向をもつにいたってはいない。
との傾向が読み取れる。
 

11地域の良い点を村民が評価し、伸ばしていこうというという心を持ってもらうのがむらづくりの出発点になる。アンケートで、世代、性別、地区などを問わず肯定的に村を評価していることが心強く、これも発展の芽といえよう。
12湯布院のまちづくりは、町に進出しようとした企業が壊そうとした自然を守る運動から始まる。企業進出を断念させた段階で、企業が描いた以上のビジョンを自らがつくろうとはじめたのが出発点である。
13綾町の「自然生態系との共生」を基本とするまちづくりは、照葉樹林の豊かな国有林を営林署が伐採し、大手製紙会社に売り払う計画を「綾町が誇るべき資源は日本文化のルーツである照葉樹林しかない」という思いからやめさせたところに出発点がある。







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更新日: 2019年10月19日

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