日本財団 図書館


3 港湾を利用する事業者等の状況
 ここでは、長崎県の港湾を利用して事業や活動を展開する(1)観光レクリエーション施設(回収票数5件)、(2)マリンレジャー事業者(回収票数26件、うち7件は観光協会・商工会等)、(3)観光周遊船(回収票数8件)及び、港湾を含む旅行商品の企画・提供に関わる(4)旅行代理店(回収票数4件)、港湾でのイベントの企画・実施に関わる(5)広告代理店(回収票数6件)マリンレジャー事業者や活動者が組織する(6)主要団体(回収票数13件)に対するアンケート結果を中心に、港湾との関わり実態やニーズ・意向を把握する。
 なお、本アンケートは、業種ごとに異なる設問を含む調査票を作成・配布した。配布・回収票数が小規模という条件下において、定量的分析は一部にとどめ、具体的な回答内容の定性的把握を中心に、適宜、県内先進事例調査結果も対照しつつ、質的な把握につとめることとした。
 
(1)事業・活動内容
《観光レクリエーション施設》
・ 回答のあった施設は、いずれも公設民営型の複合的なレジャー施設であり、マリーナ、商業施設、展示・見学施設、公園等など複合的な機能を持っている。
・ マリーナ施設は、マリンレジャー事業、観光周遊船事業等を含んでおり、また、小型船舶関係の団体事務局をおくなど、活動支援機能をあわせもっている。
《マリンレジャー事業者》*観光協会・商工会等を除く19件について。
・ 観光レクリエーション関連の事業は、「釣船・遊漁船」(9)とともに、「スキューバダイビング」(6)、「マリーナ・ヨットクラブ」(4)などのマリンスポーツ業が多くみられる。
・ その他の営業種目としては、「マリン機器販売」(12)、「教習研修」(7)、「活動場所の提供」(6)、「飲食」(3)などがみられる。大手のマリン機器企業と連携しているケースも少なくない。
《観光周遊船》
・ 数十分〜2時間程度の周遊観光クルーズ(西海・九十九島、長崎港、五島、壱岐等)を中心に、イルカウオッチング、チャータークルーズ等の事業もみられる。帆船やグラスボートなど船自体が売りになっているケースもみられる。
・ 基幹事業が海運業(フェリー・旅客船)であるケースと、観光事業をメインとするケースがある。
《旅行代理店・広告代理店》
・ 長崎・福岡に事務所を置く事業所を対象に調査した。長崎県の港湾や海域を対象とする旅行やイベントをメインとするケースはないものの、観光客のニーズからみた長崎県の港湾・海洋の評価等で参考になる回答が得られた。
《主要団体》*海のスポーツや安全に関わる活動団体13件に、観光協会・商工会等7件を加えた20件について。
・ マリンレジャーの振興など、港湾での観光レクリエーション活動・事業を支援する立場にある団体に活動実態や意向を聞いた。自然体験や集団活動の訓練を通じて青少年の育成や環境保全を狙う活動、海域での活動の安全を守る活動が少なくなく、社会貢献的なスタンスが豊かに含まれている。
・ 港湾でのイベントを主催する観光協会・商工会等(7件、以下「商工会等」と略称)には、マリンレジャー事業者向け調査票を配布したが、地元のまちづくりや観光振興を図る目的での活動が多く、港湾での観光レクリエーション活動・事業を支援する活動として、「主要団体」の一部門としてその実態や意向を捉えることとした。
 
(2)港湾の利用状況
 事業所・団体にとって、港湾の規模・形状・地形、周辺海域を含む気象・海象条件、観光魅力とともに・交通条件や・漁業との調整等の社会的環境が港湾利用の大きな要因となっている。
《観光レクリエーション施設》
・ マリーナや観光船の港として、レジャー艇の停泊・入出港基地、体験や飲食・休憩の拠点などに、港湾陸域及び海域を一定規模確保して利用している。
《マリンレジャー事業者》
・ 現在港湾を「利用している」と回答したのは19件中13件であった。現在利用していない事業所のうち、「利用経験あり」との回答が1件みられる。
・ 港湾の用途としては、「事業の基地を置く」(11)、「艇や機材の保管」(8)、「基地ではないが活動現場の一つ」(5)、「トイレや駐車場を利用」(4)、「情報機能や緊急時対応の連絡先として連携」(3)などがみられる。
・ 港湾内の海面・海中利用は、ヨットやダイビングで、初心者などの教習場所としての利用が若干みられるほかは、港湾外の活動への出入口としての利用に限られている。
・ メインで利用している港湾の選定理由は、「活動に適する海域が近くにある」(11)、「事業所から近い」(10)、「港湾の形状・地形・規模が活動に適する」(9)といった条件をメインに、「漁業者や住民の理解が得られている」(6)との回答も少なくない。また、「利用可能なスペースが確保できる」(5)、「気象・海象条件が適する」(5)、「近くに魅力的なところ(資源)がある」(4)、「利用者からみて交通条件がよい」(4)、「管理された海陸域で安心できる」(3)などもみられる。立地や海域・港湾の物理的な活動条件や周辺海域の魅力が大きな要因となっているとともに、社会的な関係づくりも重要な条件となっていることがわかる。
《観光周遊船》
・ 船舶の停泊及び観光客の乗降基地として港湾を活用するほか、漁港や港湾以外の湾などを併せて利用しているケースも複数ある。
・ メインの港湾の選定理由としては、「港の形状・地形・規模が利用に適する」、「気象・海象条件が適する」、「利用者からみて交通条件がよい」、「観光地との近接性が高い」、「周辺の海域に見所がある・近くに魅力的な資源がある」、「従前からここで海運業を営んでいた」(各3)などがみられる。アクセス条件、港湾の物理的な条件、周辺海域の魅力と、多面的な成立条件の上に成り立っている様子がわかる。
《旅行代理店・広告代理店》
・ 長崎県の港湾の活用は「ない」または「今はない」との回答が過半を占めている。
・ 旅行商品では、長崎港、ハウステンボス、西海パールシーなどの観光のほか、離島や島原方面へのアクセスとして船旅を組み込むなどの形がみられる。
・ イベントは、長崎での「みなとまつり」のプログラムの一部、佐世保での「全国豊かな海づくり大会」、伊王島での野外コンサートなどの企画運営を手がけたケースが挙げられ、また、長崎港の整備に期待を寄せている様子が示されたが、今回調査では港湾でのイベントを扱う事業所は限られていた。
《主要団体》
・ 活動団体・事業者団体は、港湾以外の海域・海岸や漁港を活動場所とすることも少なくなく、港湾が「メインの活動エリア」(4)、「メインではないが、大事な活動場所の一つ」(3)、「通常はあまり使わないが、時々利用する」(3)と、港湾との関わり度合いに幅がある。
・ 港湾の用途は、「競技会等の会場」(7)、「船舶の停泊及び海域への出入口」(6)、「練習・教習・研修の場」(6)、「機材の保管」(5)、「給水や休憩の基地」(5)をメインに、「他の団体・活動者との交流の場」(4)、「会員同士の情報交換の場」(3)、「船舶・機材の整備」(3)、「活動前後の食事や楽しみの場」(2)など、海域での活動を支える様々な活動に港湾が利用されている様子が示された。
・ 商工会等は(イベント会場としての利用を除き)「利用したことはない」との回答が多い。
 
■港湾を利用する理由(上位項目)【観光レクリエーション施設、マリンレジャー事業者+観光周遊船+主要団体】
選択肢 〜上位項目〜 (複数回答) 内訳
活動に適する海域が近くにある 20 マリンレジャー事業者11、団体9
港湾の形状・地形・規模が活動に適す 16 マリンレジャー事業者9、観光周遊船3、団体4
利用可能なスペースが確保できる 14 施設3、マリンレジャー事業者5、団体6
事業所から近い・従前からここで営業 13 マリンレジャー事業者10、観光周遊船3
気象・海象条件が適する 12 施設1、マリンレジャー事業者5、観光周遊船3、団体3
漁民や住民の理解が得られている 11 マリンレジャー事業者6、団体5
交通が便利・利用者からみて交通条件がいい 11 施設1、マリンレジャー事業者4、観光周遊船3、団体3
周辺の海域に見所がある・近くに魅力的資源がある 11 施設2、マリンレジャー事業者4、観光周遊船3、団体2
管理された海陸域で安心 8 施設2、マリンレジャー事業者3、団体3
集計対象票数(N=45) 施設5、マリンレジャー事業者19、観光周遊船8、団体13
*イベント事業で港湾を年1回程度利用する商工会等を除き、日頃の事業・活動の現場として港湾を活用する性格が強いマリンレジャー事業者、観光周遊船、主要団体の回答を採り上げた。
 
(3)港湾及び港湾周辺の資源性の評価
《観光レクリエーション施設・マリンレジャー事業者・観光周遊船》
・ 複合的な機能構成のマリーナ施設、周遊ツアー、大規模なイベントは、国立公園や長崎港など、観光客誘致力のある資源への依存度が高いが、観光周遊船、釣船、ダイビング等のスポーツやレジャーは、小規模でも独自性のある観光魅力、活動スポットの確保を重視しているように見受けられる(例:多島海の景観美、ハウステンボスや長崎港の夜景、イルカやサンゴ、教会や歴史スポット等)。
《旅行代理店・広告代理店》
・ 旅行代理店・広告代理店に、長崎県の港湾及び周辺環境の評価について聞いたところ、「テーマ性からみた魅力」や「港湾環境」については、「まあまあ魅力的」との評価が多いながら、「飲食・宿泊の魅力」、「気象・海象条件」などは「まだよくわからない」との回答が目立つ。「マリンレジャーの豊富さ」や「味覚・土産品の魅力」は「まあまあ魅力的」、「まだよくわからない」、「魅力的でない」など評価が分かれる傾向がみられる。
・ 「長崎の観光は海洋がキーワード」(旅行代理店)との指摘もみられるように、「海域」の資源性が地元事業者にも高く評価されている一方、「港湾」自体については「海の玄関口」、「交流拠点」との認識があるものの、観光の視点から評価したコメントはあまりみられない。これは、港湾自体に魅力が少ないというより、これまで観光レクリエーションの場として評価する枠組みがなかったことのあらわれとみたほうがよいと考えられる。
《主要団体》
・ 生物資源の豊富さは、観光レクリエーション活動にとって魅力である前に、水産業の基本資源であり、資源管理、漁場の保全、環境保全などにおいて、漁業とレジャー活動との調整問題がみられる。
 
(4)港湾での提供サービス・施設
《観光レクリエーション施設》
・ ヨットハーバー、クラブハウス、見学施設、研修やホール、飲食施設等を複合的に含む。マリンスポーツ・レジャー関連サービスには航海士等の有資格者を含む運営体制をとるほか、その他の観光飲食等の事業には、専門のテナントの誘致、地元の産業(漁業等)と連携したサービス提供体制をとっている。
・ いずれも、公設民営型の施設であり、「公有」の施設を「受託経営」している。駐車場スペースが広く確保されているのも特徴である。
《マリンレジャー事業者》
・ 港湾を基地として提供しているサービスについてみると、活動場所の提供、教習、機材の点検などのほか、機材のデモンストレーションや、安全講習などのイベントも少なくない。
・ 桟橋等の基盤施設は「公有」、収益施設・設備は「自己所有」という傾向がみられる。なお、回答のあったマリーナは、いずれもマリーナ専用の港区又は臨港地区にマリーナ専用に整備した施設で営業している(公設民営施設のほか、民設民営施設もみられる)。
・ 駐車場は、港湾又は近くの「無料駐車スペース」を利用してもらうケースが9件と約半数を占め、「専用の駐車場を所有する」のは5件にとどまっている。過不足感については、約半数が「まあまあ十分」(10)と答えているが、「とても不足感がある」(3)、「やや不足感がある」(2)との回答もみられる。
・ 「港湾及び周辺に確保したい施設」としては、まず「トイレ」、「クラブハウス・休憩施設」、「シャワー」(各9)と、快適な活動を支える施設が上位に挙がり、次いで「専用の桟橋・係留施設」(5)、「駐車場」(4)が挙げられたほか、「機材点検や研修のための施設」(3)、「気象・海象情報などがすぐとれる施設」(3)など、海域での活動を支援する施設に対するニーズが多くみられる。「乗船名簿を書くような場所もなく不便」(取材)との声もあり、港湾の観光レクリエーション利用に向けては、基盤的な施設の確保が必要な環境にある様子がうかがわれる。
《観光周遊船》
・ 観光用の船舶での周遊を基本に、イルカウオッチング、グラスボートでの海中海底観察、花火や夕景の鑑賞など豊富なメニューがみられる。単なる景勝ではなく、体験型のプログラムが重視される傾向にあるが、「接岸のための施設が不十分との理由で、長年続けてきた無人島体験プログラムが中断を余儀なくされた」など、魅力的なプログラム提供がしにくい状況にある様子もみられる(アンケート+取材より)。
・ 港湾のほか、入り江を利用した係留地などを利用して周遊ルートを形成している例もみられる。
・ 駐車場は、無料スペースを利用しているケースが多い。
《旅行代理店・広告代理店》
・ 旅行商品では、例えば観光バスと観光周遊船によるツアーに港湾が組み込まれているような例もあるが、クーポン型の個人旅行のメニューの一つに、シーカヤック体験などを組み込む例もみられる。
・ 港湾施設のあり方については、利用している施設によって評価がわかれるようである。例えば、確保しにくいとの評価が多い駐車場も、ハウステンボスやパールシーを利用する場合、確保しやすいとの回答になる。個人旅行が増えているとはいえ、旅行業者からみると、宿泊・飲食施設の収容力と観光レクリエーション施設の集積がネックとなっている(特に離島)。
・ 広告代理店が介入するイベントとしては、地元が主催する大規模な祭(みなとまつり等)、コンサートなど会場などの港湾を活用するなどのケースがみられるが、採算面を考えると今後は「体験交流型のプログラムを開発したい」との意向もみられる。
《主要団体》
・ 活動者・事象者団体は、団体として開催・参加する競技会や教習・研修、活動の集合場所として港湾を利用するほか、会員がそれぞれに港湾を利用しているとの回答が多く、商工会等はイベント会場のほか、ペーロンの練習といった回答もみられた。
・ 活動者・事業者団体及び商工会等の港湾及び周辺での施設確保状況については、既存の桟橋や係留施設を活用し、駐車場は周辺の無料スペースを利用していることが多く、多くの団体が駐車場不足を感じていることがわかった。
・ 「港湾及び周辺にできれば確保したい施設」として、「トイレ」(12)、「駐車場」(12)といった基礎的施設のほか、「専用の桟橋・係留施設」(7)、「シャワー」(6)、「機材保管場所・施設」(5)、「クラブハウス・休憩施設」(5)、「機材点検や研修のための施設」(4)、「気象・海象情報などがすぐとれる施設」(3)といった活動支援に関わる施設へのニーズもみられる。また、家族での活動やイベント・大会開催時等を念頭に、「誰でも利用できる公園的な場」(7)、「宿泊施設」(4)、「飲食・買い物の場」(2)といった施設の確保に対する期待も少なくない。
 
■現地事業者・団体が港湾に確保したい施設【マリンレジャー事業者+主要団体】
選択肢 〜上位項目〜 (複数回答) 内訳
トイレ 21 マリンレジャー事業者9、団体8、商工会等4
駐車場 16 マリンレジャー事業者4、団体7、商工会等5
クラブハウス・休憩施設 14 マリンレジャー事業者9、団体4、商工会等1
専用の桟橋・係留施設 12 マリンレジャー事業者5、団体7
シャワー 11 マリンレジャー事業者5、団体5、商工会等1
誰でも利用できる公園的な場 8 マリンレジャー事業者1、団体2、商工会等5
機材点検や研修のための施設 7 マリンレジャー事業者3、団体3、商工会等1
機材保管場所・施設 6 マリンレジャー事業者1、団体4、商工会等1
気象・海象情報等がすぐとれる施設 6 マリンンレジャー事業者3、団体3
宿泊施設 4 団体4
飲食・買い物の場 2 団体2
集計対象票数(N=39)   マリンレジャー事業者19、団体13、商工会等7
 
■駐車場の確保状況と充足感【マリンレジャー事業者+観光周遊船+主要団体】
<確保状況>
選択肢 〜上位項目〜 (複数回答) 内訳
無料の駐車スペースを利用 16 マリンレジャー事業者1、観光船4、団体7、商工会等4
専用の駐車場を所有 7 マリンレジャー事業者5、観光船1、団体1、
公共の駐車場を利用してもらっている 3 マルンレジャー事業者1、観光船1、団体1
集計対象票数(N=47) マリンレジャー事業者19、観光船8、団体13、商工会等7
 
<充足感>
選択肢 内訳
01 まあまあ十分 19 マリンレジャー事業者10、観光船3、団体5、商工会等1
02 やや不足感がある 7 マリンレジャー事業者2、観光船1、団体3、商工会等1
03 とても不足感がある 12 マリンレジャー事業者3、観光船2、団体3、商工会等4
無回答 10 マリンレジャー事業者4、観光船2、団体3、商工会等1
集計対象票数(N=47) 47 マリンレジャー事業者19、観光船8、団体13、商工会等7
 
■長崎県の港湾を組み込んだ旅行商品(例)【旅行代理店】
・ 長崎港町クーポン(関西・九州〜長崎港+近郊)
・ ロマンあふれる歴史の町「平戸と九十九島」(羽田空港〜福岡空港〜唐津〜平戸〜西海パールシー遊覧〜嬉野〜島原〜熊本空港〜羽田空港)
・ ジパング壱岐・対馬商品(中国地方から長崎港〜厳原港)
・ のびのびハイランド九州「別府・湯布院・雲仙」(三大都市圏〜空路又はバス〜島原港〜遊覧〜雲仙等)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION