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1992/11/01 産経新聞朝刊
カンボジアPKO ある三佐の手記から・滞在1カ月、充実の日々
 
 慣れない異国の地で、国道の改修工事に取り掛かった国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)日本施設大隊。工事用資材調達に不安を残し、疲れた心身を休める宿営地の設営も遅れるなど万全とはいえない環境の中で、作業を進めている。次に抜粋するのは、先遣隊の一員として九月下旬に現地入りした三佐(三六)が、滞在一カ月間の心境をつづった手記だ。他国の隊員や住民たちと触れ合いながら活動を続ける自衛隊員の息づかいを感じてもらえたら、と思う。
(プノンペン 渡辺浩生)
 十月二十三日。パリ和平協定一周年で、午前八時からUNTAC参加国による軍事パレードがあった。十五分前に目覚め、あわてて身支度を整え会場に向かう途中、小牧基地を飛び立ってちょうど一カ月か、と思う。長いようで短かった。あと、六カ月くらいか。すぐたってしまうのだろうなあ。
 会場に着くと、すでに集まっていた各国の兵士たちが、黄色を基調とした王宮をバックに、肩を組んで写真におさまっていた。どこの国も国旗手は人気者だ。人種も、言葉も、服装も異なる隊員同士が一つの目的「ピース・イン・カンボジア」のために集い、語り、肩を組み合う。だれもがフレンド、フレンド。こんな光景は史上初だろうなあ、と思い胸が熱くなる。
 UNTAC本部内を歩いていると、中国の大尉がどうしても日の丸の肩章がほしい、と手持ちの中国土産を両手いっぱいに広げてきた。
 われら初めての外地に日々を送る。道ゆけば子供たちが駆け寄り、また茶色の水路で遊ぶ水の中から目いっぱい手を振る。市場に行けば、日の丸を見て、「ヤー、ジャポン、ジャポン」と満面の笑みを浮かべ、時には好奇のまなざしで人だかりとなる。
 南国、カンボジア。土地風景はひと昔前の日本の農村を思わせる。冬もなくのんびりと暮らす彼らが望むものはひとつ。戦乱なき平和だ。
 われらが第一次カンボジア派遣施設大隊。この良き国の礎(いしずえ)の一助とならん。そして、一助となれる喜びを日々かみしめて、この熱き国にて汗を流そう。
 
 
 
 
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