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1997/09/24 毎日新聞朝刊
[特集]日米防衛新指針<ガイドライン見直し>全文(その2)
◇4 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
 日本に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は、引き続き日米防衛協力の中核的要素である。
 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本の防衛のために必要な準備を行う。日本に対する武力攻撃がなされた場合には、日米両国政府は、適切に共同して対処し、極力早期にこれを排除する。
1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合
 日米両国政府は、情報交換及び政策協議を強化するとともに、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始する。日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。日本は、米軍の来援基盤を構築し、維持する。また、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、日本に対する武力攻撃に発展し得る行為に対応するための準備を行う。
 日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。
 なお、日米両国政府は、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本の防衛のための準備と周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な相互関係に留意する。
2 日本に対する武力攻撃がなされた場合
(1)整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方
(イ)日本は、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。その際、米国は、日本に対して適切に協力する。このような日米協力の在り方は、武力攻撃の規模、態様、事態の推移その他の要素により異なるが、これには、整合のとれた共同の作戦の実施及びそのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情報交換についての協力が含まれ得る。
(ロ)自衛隊及び米軍が作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力を運用する。その際、双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ハ)米国は、兵力を適時に来援させ、日本は、これを促進するための基盤を構築し、維持する。
(2)作戦構想
(イ)日本に対する航空侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、防空のための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ロ)日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の保護のための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における船舶の保護並びにその他の作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ハ)日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本に対する着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、主として自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。その際、米国は、侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力を来援させ、自衛隊の行う作戦を支援する。
(ニ)その他の脅威への対応
(i)自衛隊は、ゲリラ・コマンド攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事態に応じて米軍の適切な支援を得る。
(ii)自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。
(3)作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項
(イ)指揮及び調整
 自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動する。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、役割分担の決定、作戦行動の整合性の確保等についての手続きをあらかじめ定めておく。
(ロ)日米間の調整メカニズム
 日米両国の関係機関の間における必要な調整は、日米間の調整メカニズムを通じて行われる。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、作戦、情報活動及び後方支援について、日米共同調整所の活用を含め、この調整メカニズムを通じて相互に緊密に調整する。
(ハ)通信電子活動
 日米両国政府は、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互に支援する。
(ニ)情報活動
 日米両国政府は、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動について協力する。これには、情報の要求、収集、処理及び配布についての調整が含まれる。その際、日米両国政府は、共有した情報の保全に関し各々責任を負う。
(ホ)後方支援活動
 自衛隊及び米軍は、日米間の適切な取り決めに従い、効率的かつ適切に後方支援活動を実施する。
 日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。その際、特に次の事項に配慮する。
(i)補給
 米国は、米国製の装備品等の補給品の取得を支援し、日本は、日本国内における補給品の取得を支援する。
(ii)輸送
 日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動について、緊密に協力する。
(iii)整備
 日本は、日本国内において米軍の装備品の整備を支援し、米国は、米国製の品目の整備であって日本の整備能力が及ばないものについて支援を行う。整備の支援には、必要に応じ、整備要員の技術指導を含む。また、日本は、サルベージ及び回収に関する米軍の需要についても支援を行う。
(iv)施設
 日本は、必要に応じ、日米安全保障条約及びその関連取り決めに従って新たな施設・区域を提供する。また、作戦を効果的かつ効率的に実施するために必要な場合には、自衛隊及び米軍は、同条約及びその関連取り決めに従って、自衛隊の施設及び米軍の施設・区域の共同使用を実施する。
(v)衛生
 日米両国政府は、衛生の分野において、傷病者の治療及び後送等の相互支援を行う。
 
 
 
 
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