情報は戦局を左右する重要な要素だ。ハイテク近代戦ではとりわけウエートが高い。それだけに日本周辺有事での自衛隊の情報収集・分析に対する米軍の期待は大きい。問題は、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の挙げる「情報の交換」が米軍への攻撃目標の「提供」となった場合、戦闘行為との一体化につながりかねない点だ。
自衛隊の警戒監視活動は、海自の対潜哨戒機P3Cや空自の早期警戒機E2Cが日常的に行っている。今年はハイテク機器を積み込んだ空中警戒管制機(AWACS)も導入され、敵機などの判別や位置確認の能力が一段と向上する。また周辺の通信情報(コミント)を傍受、分析しており、「米国も日本のコミントを評価している」(防衛庁幹部)という。
こうした収集情報について政府は従来「警戒監視活動での収集情報を一般的な情報交換で相互融通するのは実力行使にはあたらない」との立場だ。一方で内閣法制局は「特定国の武力行使を直接支援するための情報提供は、武力行使と一体と判断される可能性がある」との見解を示している。
今月11日の衆院外務委員会で、共産党の松本善明氏が「周辺有事では、米軍からみれば攻撃目標の提供だ」と追及した。久間章生防衛庁長官は「結果として米軍を利するケースがあるかもしれないが、それで武力行使と一体だとはいえない」と反論。米軍が戦闘状態に入った場合も「そのまま情報は提供する」と答弁した。
現実には、海自の収集情報はコンピューターによって自動的に米海軍に転送され、直接支援の情報かそうでないかを事前に選別するのは不可能。「敵機を確認しながら情報提供しなければ、逆に同盟国の米軍を不利な状況に追い込むこともある」(防衛庁幹部)との指摘もある。
政府は、提供情報を基に攻撃命令するかしないかの判断はあくまで米軍にあるとの見解をとり、情報と指揮命令を明確に分けることで、違法性はないとしている。ただ久間長官は「情報提供によって(攻撃対象として)狙われる可能性はある」ことも認める。撃墜されれば防衛出動にも発展しかねない「グレー」部分をはらんでいるのも事実だ。=おわり
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