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1997/06/18 毎日新聞朝刊
[徹底解説ガイドライン]/5 補給・輸送 「武器・弾薬」巡り論議必至
 
 昨年6月14日の衆院安保委員会。
 西村真悟氏(新進)「朝鮮半島有事の際、我が国内において米軍の弾薬、兵員を輸送できるのか」
 秋山昌広防衛庁防衛局長「その行為が武力行使と一体化とみなされるかどうかの点を十分検討のうえ、今後、判断してまいりたい」
 「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」見直しでは、日本周辺有事の協力検討項目として米軍向けの補給・輸送が焦点の一つになっている。物資に武器・弾薬が含まれれば、活動内容などによっては「米軍との武力行使の一体化」を禁じる憲法に抵触する恐れがあるからだ。
 中間報告は、補給については武器・弾薬を除外することを明記したが、輸送では「物資の中に武器・弾薬も含まれる」との見解を示している。補給とは日本の物資提供であり、輸送とは米軍物資を取り扱うこと。防衛庁は武器・弾薬を補給物資から除外した理由を「米軍のニーズがないから」と説明している。
 昨年4月に日米物品役務相互提供協定(ACSA)が締結された。米軍と自衛隊の物品の融通は、日米共同訓練と国連平和維持活動(PKO)、国際的な緊急援助活動に限っている。
 指針が想定する周辺有事の場合、戦闘行動中の米軍に物資補給することは集団的自衛権の行使に当たる可能性が出てくる。さらに公海上の補給・輸送の場合は、米軍と一体の活動とみなされ、攻撃対象となる恐れもある。
 政府関係者は指針見直しの後に「実効性の確保」から「有事版ACSA」が必要になるとしており、自民党安全保障調査会は既に検討に入っている。
 防衛庁筋は「米軍が具体的に自衛隊に求めているのはミサイルの輸送だ」とみる。自衛隊によるミサイル輸送が米軍と一体化した武力行為にあたるかどうか――。社民党内には「やはりグレーゾーンではないか」との疑問の声も出ており、国会で論議になるのは必至だ。=つづく
 
 
 
 
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