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2003/10/24 産経新聞朝刊
【主張】国家・国旗 当たり前の教育を自然に
 
 東京都教育委員会は、卒業式や入学式における国旗掲揚と国歌斉唱などの具体的な実施方法を決め、都立高校などに通達した。当たり前のことが明確に示されており、他の道府県にも参考になる内容である。
 通達は国旗について「式典会場の舞台壇上正面に掲揚する」としている。簡単なようだが、大事なことだ。これまでは、会場の片隅に三脚を立て、そこに小さな日の丸を掲げる光景も見られたが、これからは、そうした姑息(こそく)なやり方は認められなくなる。
 国歌斉唱については、「司会者が起立を促す」「教職員は指定された席で国旗に向かって起立する」「ピアノ伴奏などにより行う」などとした。ここまで指示しなければならないのも、情けないことだが、いまだに抵抗を続ける一部教職員の自覚を促すためには、やむを得ない行政指導である。
 都教委は、通達に基づく校長の職務命令に従わない教職員は、懲戒処分の対象になるとしている。これも極めて当然の措置だ。
 通達はさらに、「舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する」「教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする」ことを求めた。いずれも重要な提言を含んでいる。
 都内では多摩地区の学校を中心に、演台を壇上から床に移し、校長が児童生徒と同じ目線で証書を手渡す「フロア形式」の卒業式が盛んに行われるようになってきている。“進歩的”なように見えるが、教育現場において、校長と児童生徒は対等ではあり得ない。壇上から証書を渡す本来のやり方に戻すべきだろう。
 一部の学校では、先生の服装が乱れ、それが学級崩壊や校内暴力に拍車をかけているという指摘もある。式典に限らず、ふだんから教育者にふさわしい服装を心掛けるべきである。
 広島県で四年前、国旗・国歌に反対する教職員組合の抵抗に悩む校長が自殺した。今年も、同じような悲劇が繰り返された。国旗・国歌をめぐり、不毛な対立が続いている国は、世界中で日本だけだ。子供たちが国旗を仰ぎ、国歌を歌うことは、「国を愛する心」にもつながる。それは、どの国でも行われている普通の公教育である。


 
 
 
 
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