学力低下の不安を抱えながら、完全学校五日制がスタートした。休日が増えたからといって、児童・生徒の本分が勉強であることに変わりはない。これまで以上に、たゆまず、怠らず、学びの道にいそしみ励んでほしい。
新学期から実施される新学習指導要領では、国語や算数など主要教科の学習量が三割減らされる。例えば、これまでの小学生は小数点二位までの計算を学んでいたが、これからは小数点一位まででよく、計算上の円周率は3・14から「3または3・1」になる。台形の面積の公式は小学校で覚えなくてもよくなる。
なぜ、ここまで水準を落とす必要があったのかと疑問視されてきたが、かすかな救いは、新指導要領をつくった文部科学省自身が最近、これを最低基準と位置付けたことだ。国民から沸々(ふつふつ)とわいてきた学力低下への批判に抗しきれなくなったからであろう。もはや、学校は指導要領の学習量三割減にこだわる必要はないのではないか。
日本は昔から、次世代を担う教育を重視する国柄であった。江戸時代には武士だけでなく庶民にも教育を施す寺子屋が普及し、その数は幕末、一万に達した。明治五年の学制公布により、子供たちは分けへだてなく義務教育を受けることになったが、その多くは寺子屋を改装して行われた。それが、アジアでいち早く近代国家を築き、戦後の経済復興や高度経済成長の原動力にもなったことを忘れてはならない。
米国では一九八三年、レーガン政権が「危機に立つ国家」と題する報告書を発表して以降、基礎学力の向上を目指した教育改革が進められている。英国のブレア政権も「教育、教育、そして教育」と強調し、英国病を脱しつつある。日本だけがこうした動きに逆行し、ゆとり教育を推し進めようとしているのは、どうにも理解できない。
日本の未来は、それを担う子供たちへの教育にかかっている−といって過言ではない。遅きに失した感もあるが、本来の日本人がもっていた勤勉・実直な国民性を取り戻すべきである。
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